10月25日(金) 12:37
せっかく購入したクラブがどうも合っていない、最近スライスばかり出るようになったので何とかしたい、などと思っている人もいるのではないでしょうか。そんなときはクラブを買い替えたり、スイングを変えたりすることで解決はできますが、当然、お金や時間がかかることになります。そこでオススメしたい解決策が「鉛貼り」です。クラブやシャフトに鉛を貼ることで、お金や時間をそれほどかけずに、自分仕様のクラブが作れます。(本記事は【Dr.カタオカのゴルフメンテナンス】鉛の貼り方編を再構成)
鉛(鉛シール)をクラブの一部に貼って重量のバランスを変える。これだけでクラブの仕様はがらりと変わります。問題はどこに貼るか。自分のクラブをどうしたいのかによって、貼る位置が変わってきます。
ちょっと難しそうに思えるかもしれませんが、自分に合っていない仕様や直したい症状によって、鉛を貼る位置には法則があります。しかし法則さえ分かれば、あとはその位置に鉛を貼るだけ。それほど難しい作業ではありません。
鉛を貼って特定部分を重くするとクラブバランスが変わりクラブの特性が変化します。したがってバランスがどう変われば、クラブの特性はどう変わるか知ることが重要です。
クラブバランスとは、クラブを振ったときに感じるヘッドの重さです。クラブ全体の重さに対するヘッドの重さの割合のようなもので、「振りやすさの指標」と言われています。ヘッド側が重くなればバランスは大きく、グリップ側が重くなればバランスは小さくなります。
決められた測定方法と数式によって基準値が「D0」、それよりもヘッドが軽くなるとC9、C8・・・A0まで、ヘッドが重くなればD1、D2・・・E9まで表示されます。
市販の男性用ドライバーはD2前後、女性用ドライバーはC3前後の設定が多いようです。力がある人やゆっくり振る人にはバランスが重めなクラブ、力がない人やスイングテンポが速い人には軽いバランスのクラブが合っています。
クラブ全体のバランスに限らず、クラブの一部に鉛を貼ると、クラブの動き方やボールの飛び方に変化が現れます。それを利用して自分の悪いクセの対策も可能となるのです。
ここでは、それぞれの症状に対して鉛を貼る位置と理由を説明します。
スライス防止にはヘッドのヒール側に鉛を貼ります。ヒール側が重くなることで、相対的にトゥ側が軽くなり操作性が良くなります。言い換えると、トゥ側が返りやすいクラブになり、ボールは左に出やすくなる(=右に出にくくなる)のです。
フック防止にはヘッドのトゥ側に鉛を貼ります。トゥ側が重くなると操作性は穏やかになり、ボールは右方向に出やすくなります。
ソール後方に鉛を貼って重心を後ろに下げることで、インパクトでのロフトが増えてボールが上がりやすくなります。また、一般的に重心が後ろに下がる(深重心になる)とスイートエリアが広くなる傾向にあります。
ボールが上がりすぎて飛距離をロスする場合、ソール前方に鉛を貼ることでインパクト時のロフトが上を向きにくくなり、飛び出し角が低いボールが出やすくなります。ただし、重心が前に出る(浅重心になる)とスイートエリアが狭くなり、ミスショットも出やすくなるので注意が必要。
シャフトが軽すぎるとタイミングが取りにくく、切り返しが早くなったり手打ちの原因になったりでミート率に影響を与えます。
対策として鉛を貼る場所は基本2か所。1つはシャフト線上クラブヘッドのヒール側と、もう1つはシャフトのグリップエンドすぐ下です。
この2か所に鉛を貼るとクラブの特性を変えずにシャフトの重さを感じるようになります。
パターに貼る場合は、フェース面の裏側に貼って重心を後ろに移す(深重心)か、ソール面に貼って重心を下げる(低重心)かが一般的です。
どちらもヘッドが重くなり、深重心や低重心でまっすぐに振りやすく直進性の高いボールが打てるようになります。
また、こねる癖がある人はトゥ側に鉛を貼ることで、パター先端の動きが穏やかになり癖が緩和される可能性があります。
手軽にクラブを自分仕様に変更出来て便利な鉛ですが、貼ってはいけない場所があります。
ルール上クラブのフェース面に貼ることは許されていません。また、ラウンド中に貼った鉛を移動させたりはがしたり、追加で貼ったりすることはできません。たまたまはがれた場合は、同じ場所であれば貼りなおすことはできます。
平らな場所が良くつきます。アイアンなど凹凸のある場所に貼る場合は強く押して、面に密着させるようにすると良いでしょう。
ここからはドライバーを使って実際の鉛の貼り方を説明します。
鉛シール:テープ状のものや板状のものがあります。ゴルフショップやネット販売で購入できます。
鋏:鉛を切るのに使用。家庭用でも大丈夫です。
鉛を貼る具体的な場所とおおよその重さを説明しています。これでは重すぎる、軽すぎると感じたら適度に調整してください。
ヘッドが軽いと感じる場合は、ヘッド後方のとがった部分に「2g」程度を貼ってください。ただし、後述するように、この場所に貼るとボールが上がりやすくなります。
クラブの性能を変えずに、ヘッドの重さだけを変えたいのであれば、ソール面重心の近くに貼ればいいでしょう。
なお、クラブヘッドの重心は、フェース面にあるスイートスポット(芯)の後方、ヘッドの真ん中付近にあります。
前述した通り、スライス対策は「ヘッドのヒール側に貼る」でしたが、ドライバーの場合はフェース角を確認しながら鉛を貼ります。ドライバーのシャフト部分を平らな机に置くと、ヘッドの重心が真下に来るためフェースは斜めを向きます。
このフェースの傾きが、垂直方向と作る角度がフェース角。フェースが上を向くほど、フェース角は大きくなり、つかまりが良くなります。
したがって、鉛を貼る場所は、クラブヘッド後方の重心から遠い部分の少し上です。鉛の重さは「2.5g」が適量ですが、重いと感じるなら「2g」程度にしておきましょう。
フック対策はスライスとは逆、フェース角を小さくする場所に鉛を「2g」程度貼ります。具体的にはトゥ側クラブヘッドの重心よりフェース寄りです。
トゥ側フェース寄りを重くすると、重量以上に重く感じる人もいます。そう感じるなら「1~1.5g」程度の軽めにしてください。
ヘッドが軽いと感じる場合と同じく、クラブヘッド後方に貼ってください。重心が後ろに下がってボールが上がりやすくなります。
上げやすくしたいときとは逆の、クラブヘッド前方に貼れば良いのですが、具体的にはシャフトの延長線上より少し前方フェース寄りに貼ります。
前方が重くなることでフェースが上を向きにくく、スピン量は少なくなってボールは上がりにくくなります。
シャフトが軽い場合は、ヘッドに貼る方法とシャフトに貼る方法があります。
・ヘッドに貼る場合は、ヘッドのヒール側シャフト線上付け根の近くに貼ることで、シャフトが少し重く感じるようになります。
・シャフトに貼る場合は、グリップすぐ下の裏側に貼ると、手元が安定してきます。シャフトがあまりに軽すぎると感じるならこちらの方が効果的です。
クラブに鉛を貼って調整する方法は、プロや上級者では当たり前のように行われています。しかしアベレージゴルファーのうちは、クラブとの相性の悪さを自分の技術のせいにしがちなのか、クラブの仕様を変えるといった発想がなかなか湧かないのかもしれません。
この記事で紹介したように、簡単にクラブの仕様が変わるのが「鉛貼り」です。ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか。