まだまだ、右へならえ的な精神や同調圧力も強い日本。とはいえ、奇抜な姿に挑戦する人もいなくはない。Instagramには「坊主女子」なるハッシュタグもあり、検索すれば頭を丸めた女性たちの写真がずらっと並ぶ。なかでも、とりわけ気合の入った短さのChiharuさん(@Chiharu_yp)に、坊主にしたきっかけや、日常生活について聞いた。
ICONIQやデミ・ムーアに憧れて
小学生の頃は肩より長い髪型で、その後はショートカットで過ごしていたChiharuさんが坊主女子になったのが3年前。坊主への憧れを持ったきっかけには、何人かの先人がいた。
「話題にもなっていましたが、私も2009年の資生堂のCMでのICONIQ(アイコニック)さんの坊主姿に衝撃を受けた一人です。そこではっきりと坊主に憧れて、その後、『西遊記』をモチーフにした日産自動車『NOTE』のCMで、三蔵法師役として坊主の女性が出ていて『かっこいい!私もいつかは!』と決心しました」
その後、映画『G.I.ジェーン』のデミ・ムーアなどを見て、坊主にしたい欲求はどんどん高まっていったという。それでも、大きく印象も変わる上に一般の世間では極めて少ない女性の坊主頭にするには、まだまだ勇気が出なかった。
頭皮に直接空気が当たる感覚が新鮮だった
しかし、約3年前に「このままではオバさんになっちゃう!今しかない!」と一念発起。さらに、当時の彼女の状況が坊主への一歩を後押しした。
「その頃は、地元の滋賀から大阪に引っ越したタイミングでした。新しい仕事をはじめたんですが、失敗や納得のできないことが多くて気持ちが落ち込んでいました、つられて体も重くなっていたような時期でしたね。心機一転するべく、勇気を出して坊主にしました」
ビジュアルの大きな変化は、Chiharuさんの身体的感覚だけでなく、精神的な部分にまで変化をもたらした。
「『頭が軽い!』と思って、最初は頭をぶんぶん振り回してました(笑)。頭皮に直接空気が当たる感覚が新鮮でしたね。ずっとショートカットでしたが、それでも頭が重かったんだなと、坊主になってみてからわかりましたね。自分が変わっていく感覚と、新しい自分の個性を持てた実感が湧いて気持ちも明るくなっていきました」
気になる周囲の反応は?
子供の頃から暗い性格だったというが、自分を変えたいという秘めたる思いを実現した結果、坊主になったChiharuさん。本人には好転的な変化があったが、周囲の反応はどうだったのだろう。
「家族は微妙だったというか、正直引いてましたね。特に父には反対されました。3年経った今も、どう思っているかわかならいですね」
さらに、接客の機会もある仕事に従事するChiharuさんだが、同僚やお客さんからの反応は?
「周囲には前から、坊主にしたいと言っていたので『ついになったね!』という、いい反応ばかりでした。お客さんからも『気合入ってるね!』と好意的に見ていただいています」
他の髪型にしたければウィッグを使えばいい
ここからは坊主女子の生活にリアルに迫ってみよう。まず気になるのは、坊主であることのメリットだ。
「私は坊主というよりいわばスキンヘッドですね。だから、お風呂ではシェービングクリームをつけて剃っています。そこに、ボディークリームを塗って保湿もしています。それでも、髪が長いときよりもかなり楽ですよ」
長い髪であれば、湯上りのドライヤーやヘアケアも大変だが、それも必要ないヘアスタイル。極度の面倒臭がりだというChiharuさんには、これがピッタリなのだとか。
「寝癖もないので、朝起きて外出するまでが早いですし、他の髪型にしたければウィッグを使えばいいですからね」
しかし、女性で坊主となると服装にも制限が生まれそうに思えるが、以前と変わらず自由なファッションを楽しんでいるという。
「似合う服装が限定されそうとよく言われます。でも意外にそんなことはなくて、カジュアル中心ではありますが色んなジャンルの服装ができますよ。ミニスカートも履きます!」
トイレで「男性と勘違いされることが多い」
では逆に、坊主にしたことによるデメリットについて。徐々に増えてきたと言われる坊主女子に憧れる女性にとっても、この点が気になるところ。
「髪の毛がなくてすぐに頭皮なので、紫外線や外的刺激が怖いですね。外出時は、帽子を年中かぶっていますし、冬の寒い時には絶対にニット帽が外せません。冬で言えば、乾燥すると頭皮のダメージでフケみたいな皮が取れてしまうので保湿は大事です」
また、坊主になる前は気にしなかった日常の行動でも、周囲に気を使う場面があるという。
「公衆トイレに入るとき、男性と勘違いされることが多いので行きづらいですね。おばあちゃんにギョッと二度見されることもあります。女性だとわかるように、胸を強調したりして、女性だとわかるように気を使いながら入ったりします(笑)」
坊主にしたらDMが大量にくるように…
さらに、気になるのは「モテ」に変化があったという点。SNS上では顕著な変わりようが見られたそう。
「インスタでは異常なくらいのDMが来るようになりましたね。特に外国の男性からが多くて、『素敵だよ』みたいな内容のDMが大量にきます」
一方、リアルな実生活ではどうだろう。以前から引きこもりで、モテるとは無縁に生きてきたという彼女だが。
「声をかけられる機会は増えましたが、ナンパされているわけではないので、モテているとは言えないと思いますよ」
では、坊主女子は街中でどのように声をかけられているのだろうか。
「おじいちゃんおばあちゃんが多いんですが、『思い切ったね』と言われることが多いですね。声をかけてくる高齢の方はズケズケ言う方が多いみたいで、いきなり『あなた、病気なの?』と言われたり、ある時は『中国に帰れ』と急に言われてビックリしたこともあります。それから、子供には刺激的みたいで、小学生のグループに遭遇した時、その中の一人が走ってきて、『こんにちは!』と言ってグループに戻っていったり。近所の小学生の間では、名物になっているっぽいです(笑)」
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他の女性にも坊主を勧めるか聞いてみると「勇気もいるので勧めはしませんが、楽しくもなりますし、いい経験になると思うので、人生に一度くらいならチャレンジしてもいいと思いますよ」とのことだ。
ハッシュタグによって「坊主女子」が世の中において一定数存在すると筆者は知った。自らの個性を貫き、堂々と生きている彼女たちを心から応援したいと思った。
<取材・文/Mr.tsubaking>
【Mr.tsubaking】
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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