NHK『団地のふたり』59歳女優の“相棒”とのやりとりの魅力。大ヒット民放ドラマでも見せていた

ラジオ番組『サステバ』のパーソナリティーもつとめる(TBSラジオのリリースより)

NHK『団地のふたり』59歳女優の“相棒”とのやりとりの魅力。大ヒット民放ドラマでも見せていた

10月24日(木) 8:45

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小泉今日子とは、相手俳優とのベストなコンビネーションで際立つ存在感の人だなと常々思う。

毎週日曜日よる10時から放送されている『団地のふたり』(NHK BS)では、小林聡美を相手にそれはそれは面白おかしい相棒ドラマを繰り広げている。

イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、本作と中井貴一との共演作『最後から二番目の恋』(フジテレビ、2012年)との共通項を探りながら、“相棒俳優”小泉今日子を解説する。

とびきりの“相棒俳優”



\あす夜10時🌿[BSP4K/BS]/
プレミアムドラマ【#団地のふたり】

団地の建替え計画が浮上。住人たちの間に動揺が走る。
そんな中、高齢の東山(#ベンガル)が熱中症で倒れるなど事件が続く。東山を介抱した野枝(#小泉今日子)と奈津子(#小林聡美)は、本人からある物を託され、意外な話を聞く。 pic.twitter.com/z2t20bLNzx— NHKドラマ (@nhk_dramas) October 19, 2024

このコンビ愛、ちょっとやそっとじゃあゆるぎそうもないなぁ。『団地のふたり』で小林聡美と共演する小泉今日子は、阿吽の呼吸の相手を得て、そこらの刑事ドラマのバディなんてそんなのぬるいぬるい、という感じ。

小泉今日子は、とびきりの“相棒俳優”なのだ。相手俳優があって自分がある。自分がいるから相手がある。そういう抜き差しならない関係性を瞬時に組んでしまえる才能の持ち主。

例えば第1回、団地育ち団地暮らしの大学講師・太田野枝(小泉今日子)とイラストレーターの桜井奈津子(小林聡美)が、いつものように奈津子(なっちゃん)の家で食後にケーキを食べる場面。

ノエチ(野枝)が「なっちゃ~ん、なっちゃ~ん」と両腕を伸ばしてじゃれてまとまりつく。小林に直にふれることで相手を自分の身体の延長、あるいは自分の一部にしているかのように見える。それが相棒への最たる愛の示し方なのだといわんばかり。

小林聡美だけでなく杉本哲太とも



あるいは奈津子が「おばちゃん」と親しげに呼ぶ佐久間絢子(由紀さおり)の自宅の網戸を修繕した帰り道。横に並んで仲良くぷらぷら歩くふたりが、もう半世紀の付き合いだねといまさら確認し合って、「なっちゃんは105歳」、「ノエちゃんも105歳」とふざける場面がある。

105歳になった自分たちにつかの間なりきる姿が、この先、さらに半世紀続くかもしれない相棒関係を端的に再現してくれている。しみったれず、どこまでも清々しくからっとしている。でも情感はあるツーショットの名場面だ。

そしてどうやら相棒は小林だけではないらしい。野枝がしきりに「アニキ」と呼ぶ兄・太田厚志役の杉本哲太とも固有の相棒関係にある。第2回で団地の敷地で密かに住民たちが猫にエサやりをしていたことが問題になり、駅近くで塗装会社を営む厚志が猫を引き取ることになる。

猫を迎えにきた厚志を野枝と奈津子が見送る場面。カメラは、厚志が運転席に乗る車体を正面から写し、助手席側の外から野枝が「ちゃんと可愛がってよ」とうるさく言う。

運転席に厚志役の杉本がいて、空席の助手席を挟んでそのすぐ外から窓枠に腕をかける小泉が、この車内空間に相棒同士の空気感をいきわたらせている。運転席側のすぐ近くにいる小林は、ここは一度相棒関係を譲るよという感じで微笑んでいるように見える。

小泉今日子の相棒関係とは、専売特許みたいなもの



そりゃあさ、商業作品で活躍するプロの俳優なんだから、プロの相手俳優とは共闘する意味での相棒関係を結ぶでしょという指摘があるかもしれない。それも当然そうではあるのだけれど、でも小泉今日子の相棒関係とはいわば、専売特許みたいなものなのだ。

ここで、テレビドラマ史上のベストオブベストコンビが登場する小泉の主演作『最後から二番目の恋』についてふれておきたい。同作で小泉の相棒となるのは、中井貴一。中井扮する鎌倉市役所職員・長倉和平と都内から鎌倉の古民家に引っ越してきたテレビ局のドラマプロデューサーである吉野千明(小泉今日子)が、愛すべきコンビ愛をにじませる。

和平が兄弟たちと一人娘と暮らす長倉宅と千明が引っ越してきた古民家は隣近所。お互い毎日のように住まいを行き来して、空間をシェアする様子は『団地のふたり』とよく似ている。小泉今日子的、相棒関係が成立するには、最適な立地環境である。

小泉&中井による小競り合い



『団地のふたり』の野枝が団地から勤務先の大学まで往復4時間かけて通勤しているように、千明も最寄りの極楽寺駅から鎌倉駅を経由して都内のテレビ局まで長距離通勤している(往復でほとんど同じくらい!)。そしてどちらも特に帰宅後に重要なドラマが展開する。

帰宅時、極楽寺駅に先に到着するのはだいたい千明。和平はそのすぐあとに到着して、改札前で通勤定期を探してカバンをごそごそする千明をお先にと追い抜いていく。自分も改札を通り、待て待てと千明が追い付くという帰宅動作の小競り合いが恒例。

隣近所の自宅まで今度は会話による小競り合いが続く。毎回どうでもいいような話題で、ああでもないこうでもないと延々やり取りするうちに、あっという間に自宅前の踏切に到着する。

その途中、自分たちが大人げないやり取りをしていたなと気づく瞬間が愛くるしいのだが、そのとき必ず千明が「ヘヘッ」と短く笑い、和平もまた「ヘッ」とさらに短く笑い返す。この短い笑い声の連動が同作全体の通奏低音となる。小泉&中井による小競り合いは、彼らにしか醸し出せない唯一無二の相棒関係を端的に示している。

ご飯を食べ続ける現場



和平の弟である長倉真平(坂口憲二)が毎朝千明の分まで朝食をつくり、千明が長倉家に食べにくる。その食卓場面でも小競り合いが始まる。どうやら、小泉今日子的な相棒関係には、食事場面というのも重要なようだ。

『団地のふたり』でも奈津子がつくる食事を毎晩のように野枝が食べにくる。とはいえ、この団地では和平と千明のような騒がしい小競り合いは演じられない。そのかわり、奈津子と野枝は新鮮な野菜焼きやたけのこご飯、ちらし寿司など、色とりどりな食べ物をもりもり食べることに徹する。

本作放送に合わせた紹介番組のインタビュー映像で小林聡美が、カットがかかったあともご飯を食べ続ける現場だったと証言しているくらいである。(食事系ドラマは例外として)テレビでも映画でもこうして俳優がもりもり食べる場面が少ない。家族ドラマなんかで特に若い俳優がごく少量の白米を箸にのせているのを見ると、ほんとに変だなと思う。

普通もっと食べるよなと。これは要するに、撮影用語的に消え物である食べ物を俳優が遠慮して食べないようにしているだけなのだが、やっぱりご飯を食べる場面なら、おかわりをするくらいの勢いでもりもり食べてほしい。

『団地のふたり』第2回で、たけのこご飯をおかわりしていた小泉は、最良の相棒を得て心底安心してもりもり食べられたのかなと思う。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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