ウナギ・サヤカは「東京ドーム自主興行」を目指して人生賭けて応援してくれるファンのためなら「私はなんだってやる」

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ウナギ・サヤカは「東京ドーム自主興行」を目指して人生賭けて応援してくれるファンのためなら「私はなんだってやる」

10月24日(木) 9:55

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■『今こそ女子プロレス!』vol.22

ウナギ・サヤカインタビュー 後編

2022年10月にスターダムを解雇され、フリーになったウナギ・サヤカ。多団体に乗り込みまくり、2023年の夏にはZERO1真夏のリーグ戦「火祭り」に、女子として初出場を果たした。

「スターダムに戻るために活躍したい」という思いはなくなり、彼女のプロレス人生は、自身の想像を遥かに超える壮大なものになったのである。その集大成として、今年1月7日、後楽園ホールで初の自主興行「ウナギ・サヤカ興行 supported by AJPW 『殿はご乱心〜1番金星〜』」を開催した。

東京ドームでの自主興行を目指すウナギ・サヤカphoto by 安井信介

東京ドームでの自主興行を目指すウナギ・サヤカphoto by 安井信介





【後楽園ホールは超満員札止め。次の狙いは東京ドーム】第1試合は、彩羽匠とのシングルマッチ。彩羽のハイキックを受けて意識が飛んだ。しかしメインイベントにも出場を控えている。半ば無意識の状態で、ウナギは試合を続けた。結果は負けてしまったが、試合を続けたことだけでも見事と言わざるを得ない。

この大会に、ウナギは全財産407万7000円をつぎ込んだ。しかし超豪華なカードが並んだのは、ギャランティだけの問題ではない。「ウナギ・サヤカのためなら」と、尾崎魔弓、諏訪魔、葛西純、ディック東郷......大物レスラーたちが集結したのだ。

メインイベントは、ウナギ・サヤカ&小波vs.鈴木みのる&田中将斗。男女が組む通常のミックスドマッチとは違い、"女vs.男"という異例のカードである。

「小波さんが『出たい』と直訴してきてくれて、だったらこれしかないなと。みのるとたこ焼きマン(ウナギは田中のことをそう呼ぶ)は、女とか男とか関係なくボッコボコにしてくるんですよ。レスラーに対してちゃんと愛のある2人なので、バラけさせるよりも2人と試合をしたいなと思いました」

鈴木と田中は、ウナギと小波を容赦なくボコボコにした。手加減しなかったのは、2人へのリスペクトがあるからだ。男が女を殴っても悲壮感がないのは、そこに愛があるからだ。相手への愛とリスペクトがあるから、プロレスは成立するし、面白い。

最後は鈴木がゴッチ式パイルドライバーでウナギを破った。試合後、マイクを取ったウナギはこう言った。「ちょうど横にさ、偶然にも、もっともっと大きいハコがあるんだよね。東京ドーム、目指してやろうじゃん!」――。

「完全に思いつきです。後楽園は超満員札止め。本当にすごく幸せな空間で、どうせやるなら絶対もっとデカい場所でやりたいので、だったら東京ドームしかないなと思いました。セコンドで行ったことはあるけど、私にとって縁のなかった場所。一番になるんだったらあそこで自主興行をやらないと、一番になったとは言えないと思う」

東京ドームで自主興行......。東京ドームというメジャーな響きと、自主興行というインディーな響きのギャップが、摩訶不思議な魅力を放つ。言わずもがな、これまでに東京ドームで自主興行を開催したレスラーはいない。もしも実現すれば、前代未聞。世間を騒がせることになるだろう。

【起きてから寝るまで、すべてをプロレスに注いでいる】4月26日のDDT墨田区大会にて、保持していたアイアンマンヘビーメタル級王座を賭けて、髙木三四郎と対決。髙木はウナギのコスチュームを着用した"ウナギ・サンシロウ"として登場し、ウナギを大いに翻弄した。最後は髙木のスタナーをもろに受け、ウナギは屈辱の3カウントを聞いた。試合後、髙木は「こうやって(キャラクターを)パクられるのも、おまえが一流のレスラーになった証だよ」と、ウナギの活躍を絶賛した。

7月5日、DDT上野大会で、ウナギと髙木はタッグチーム"ウナギ・ウォリアーズ"を結成。"劇薬"バラモン兄弟を相手にカオスな試合を繰り広げ、バラモン兄弟は蒲焼のたれや山椒をレフェリーの顔に噴射するなど、収拾がつかない事態に発展。無効試合の裁定が下った。

ウナギはギャン期(ウナギが呼ぶ、他団体参戦をメインに活動した時期)を振り返るなかで、「髙木三四郎の存在はものすごく大きい」と言う。

「DDTって、天才じゃないですか。『くだらなすぎて観に行きたい』っていうのは、DDTだけだと思う。本当にドラマティック・ドリーム・チームですよね。髙木三四郎はDDTという団体をあそこまで大きくした偉大な人。DDTを馬鹿にする人もいるし、その意味ももちろん理解しているけど、結局は『客席を満員にするのが正解なんじゃないの?』と思う」

ウナギはプロレスが好きでプロレスラーになったわけではない。だからいい意味で、プロレスに対してこだわりというものがない。「すごいものはすごい」という見方をする。

「もちろんプロレスラーって、ゴングが鳴ってからゴングが鳴り終わるまでしか見せられない生き物なんですけど、私は朝起きてから夜寝るまで、すべてをプロレスに注いでいる。TikTokで下着を見せると見せかけて、『週刊プロレス』を出して『買う?』みないなこと(TikTokで中野たむがあげた動画)もプロレスなんですよ。

伊藤麻希の嘘泣き(8月12日・DDT後楽園ホール大会の動画がバズった)もプロレスだし、葛西純が人の頭に竹串を突き刺すのもプロレスじゃないですか。こんなに自由にやれる世界なのに、なんでおまえが(プロレスの定義を)勝手に決めてんだっていう話なんですよ。私は私の思うプロレスで確実にトップを取りにいくから、『マジおまえら見とけよ』ってずっと思ってます」

【全身血まみれで、鈴木みのるから「ちょっとは美人になったな」】9月2日、後楽園ホールで自主興行第2弾「殿はご乱心 夏~祭りと聞けば血が騒ぐ~」を開催。メインイベントは、ウナギ&鈴木みのるvs. 葛西純&藤田ミノル。決死のハードコアマッチだ。

1月の自主興行のセミファイナルのカード「ディック東郷&葛西純vs. 黒潮TOKYOジャパン&阿部史典」が、ウナギは大好きだったという。すばらしい試合だったからこそ、「この4人はもう呼ばない」と決めていた。イメージがついてしまうのが嫌だったからだ。

しかし8月4日、Evolution新木場大会で葛西純と6人タッグで組み、葛西の圧倒的な強さ、カリスマ性を思い知らされ、「絶対に闘いたい!」と思った。試合後、そのまま控室に行き、「9月2日、空いてませんか?」とオファーした。

当初は通常ルールの試合にしようと思っていたが、「このカードでハードコアにしない意味もわからない」と思い、ハードコアルールに決めた。ハードコアは以前、DASH・チサコとシングルで行ない、体中がボロボロになった苦い思い出がある。それでも葛西と闘えるなら、と覚悟を決めた。

実際の試合は、ハードコアというよりもデスマッチに近かった。全員が血まみれになり、まるで地獄絵図を見ているかのようだった。葛西純、藤田ミノル、鈴木みのる......超一流のレスラーが一堂に会すると、こんなにも凄絶で美しい試合になるのかと驚かされた。そこにウナギも含まれていた。この景色は紛れもなく、彼女が2年間のギャン期を通して自らの手で作り上げたものだ。

試合後、マイクを持った鈴木みのるはウナギにこう言った。「おまえ、血だらけになって、ちょっとは美人になったな」――。プロレスラーとして、女として、最上級の賛辞だろう。

「みのるは"マブ"なんですよ。男か女かどうかだけ違って、ほかは似てるんでしょうね。お互いを仲間だと思っている気がします。お互いに仲間がいないなかで、考えていることとか、辿りつきたいところとか、一緒なんだろうなとすごく感じました」

葛西と対戦して、「いつかシングルをやりたい」と思ったという。葛西とシングルをやるとなれば、試合形式はデスマッチになる可能性が高い。生半可な気持ちではできないが、それでもやりたい気持ちは変わらない。

「葛西純は、プロレスラーとして全部を持っているんですよ。カリスマ性も温かさもあるけど、凶器もある。マジで潰したいですね」

大会終了後、2025年4月26日に両国国技館で自主興行を開催することを発表した。両国国技館のキャパは最大1万1000人。美術次第でキャパは変わるが、スターダムや新日本プロレスを超えるためには、「4000人が目安となる」とウナギは語る。後楽園ホールのおよそ3倍だ。

「後楽園で興行を打ち続けることもできるし、横浜武道館とか大田区総合体育館とか大きい会場はいくらでもあるけど......自分もワクワクできる場所かつ、東京ドームに進むために、次は両国しかない。自分のなかではマストでしたね」

【今年38歳、キャリア5年「なにも諦めてません」】6月28日、ルチャリブレのイベント『ルチャフェス』第2回大会でダーク・シルエタを撃破し、CMLL日本女子王座を獲得した。そして10月25日には、ルチャの聖地・アレナメヒコで行なわれる「Grandprix de Amazonas2024」に参戦が決定している。

CMLL世界女子王座の初代王者はブル中野だが、グランプリで優勝した日本人はまだいない。ウナギはグランプリで優勝して、"ブル中野超え"を狙っている。「優勝したら、ブル中野より偉そうにできる!」と目を輝かせる。

「結局、自分の人生って、自分で責任を持って最後までやるしかない。周囲が敵になり得ることもあるし、味方になり得ることもあって、それって自分だけの選択の連続というか。私は今年38歳になったけど、キャリアはたったの5年。なにも諦めてません。みんなも、なにかをやるのも諦めるのもどっちも選択できるけど、どうせだったらやってほしいと思う。でも無責任に『やれば?』とは言わずに、私自身が証明していけたら、みんなの生きる勇気になれるんじゃないかな」

38歳で、両国国技館で自主興行をやる。相当にぶっ飛んだ女だなと思う。「もし両国でコケたら、さすがに東京ドームはできない」と言うが、コケることはないだろう。彼女には熱狂的なファンたち、通称"ひつま武士"がいるからだ。

ウナギが試合をするとなれば、どんな地方の会場にも赴く。自主興行の前には、ウナギの代わりに都内の飲食店にポスターを貼りに行った。世界中を探しても、こんなにも熱く、行動力のあるファンたちはいないのではないかと思う。

「人生賭けて応援してほしいと思うし、そのためなら私はなんだってやる。その信頼関係じゃないですかね。これを最大のお祭りにできるかどうかは、ウナギ・サヤカとひつま武士次第です。『どうせやるなら楽しいことをやりたい』という人たちの集まりだと思っています」

ここで原稿を書き終えたちょうど1時間後、ウナギはYouTubeを更新。2025年2月16日、後楽園ホールで自主興行を開催すると発表した。4月26日に両国国技館で自主興行を開催するというのに、いったいどういうことなのか......。ウナギの物語は現在進行形で目まぐるしく変化していく。私の物語もまた、変化していくことになるだろう。ウナギ・サヤカに惚れるというのは、きっとそういうことなのだ。

【プロフィール】

■ウナギ・サヤカ

1986年9月2日、大阪府生まれ。2019年1月4日、東京女子プロレス後楽園ホール大会にて「うなぎひまわり」としてデビュー。2020年11月、スターダムに初参戦。コズミック・エンジェルズを結成し、12月、アーティスト・オブ・スターダム王座を戴冠。2021年7月、フューチャー・オブ・スターダム王座を戴冠。2022年10月よりフリーになり、"ギャン期"と称して多団体に参戦。2023年10月、KITSUNE世界王座の初代王者、2024年1月6日、JTO GIRLS王者、1月7日、アイアンマンヘビーメタル級王者となり、三冠王となる。2024年1月、9月、後楽園ホールにて2度の自主興行を開催。168cm、54kg。X:@unapi0902

【大会情報】

■自主興行・第3弾

・日時:2025年2月16日(日)

・場所:東京・後楽園ホール

■自主興行・第4弾

・日時:2025年4月26日(土)

・場所:東京・両国国技館

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