前回からの続き。日本人2人目のNBA選手として活躍し、現在は男子プロバスケットボールリーグ(Bリーグ)千葉ジェッツふなばしに所属する渡邊雄太選手(以下、渡邊選手)。渡邊選手といえば、パリオリンピックでの活躍が記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれません。
今回ママスタセレクトでは、小学生3名のキッズ記者が渡邊選手にインタビュー。前回は、夢や目標を追いかける子どもをサポートするママのお悩みに対し、渡邊選手から具体的なアドバイスをいただきました。
最終回となる今回は、渡邊選手とご両親の関係について。もう少し深くお話を伺っていけたらと思います。
とにかく親と過ごす時間が楽しかった
――子どもの頃のご両親との思い出は?
渡邊選手:
週末になると一緒に出かけたりキャンプをしたり。親と出かけた思い出は、大人になった今でも自分の中にしっかりと残っています。この先、自分に子どもができたら、両親と同じことをやってあげたい。うちは両親がアクティブなのでよく外に出かけていましたが、外出するのがいいというわけではなく、親と過ごせる時間がただただ楽しかったのだと思います。
――渡邊選手は、ご両親ともにバスケットボール選手という経歴の持ち主でいらっしゃいます。同じスポーツをしているがゆえの葛藤などはありましたか?
渡邊選手:
それはけっこうありましたね。両親ともそれなりにすごい選手だったので、僕が小学生の頃いくら頑張っても、周囲からは「あの2人の子どもだから当たり前」という目でしか見てもらえないと感じていました。逆に、試合で活躍できなかったときは「渡邊さんのところの子どもなのに、こんなものか」という雰囲気を感じることもあったと思います。子ども心に悔しさや、やりづらさを感じる場面は多かったです。
悔しい気持ちを自分が頑張るためのエネルギー源に
――それらの葛藤をどうやって乗り越えてこられたのでしょうか?
渡邊選手:
そのときの
悔しさを「もっとうまくなろう」というモチベーションに変えていた
かもしれません。そんな僕の気持ちをわかってくれていたのが高校時代の恩師です。「今は“渡邊さんの息子”という目でしか見られていないかもしれないけれど、この先はご両親のほうが“渡邊雄太の親”として見られるようにしていこう」と。
恩師の言葉が支えとなり、今は僕「渡邊雄太」がいて、両親は「渡邊雄太の親」と認識をしてもらえるようになったと思います。たとえ悔しい思いをしても、自分の置かれた環境を否定したり嫌がったりするのではなく、それを自分の目標を叶えるための燃料として使えるかどうかが大事じゃないかと思っています。
厳しい叱責や指導の裏で感じていた、両親の愛
――ご両親が同じスポーツをされていたからこそ、熱の入った指導や叱責などもあったのではないかと思いますが……。
渡邊選手:
僕はすごい泣き虫な子だったんです。両親から怒られては泣いて、泣いたことをまた怒られる(笑)。でも良いところは良いところとして褒めてくれる親だったので、怒られた瞬間は嫌な気持ちになることもありましたが、親のことを嫌いになったことはなかったですね。
両親がバスケに関して僕を怒るとき、僕にできないことを指摘することはなかったんです。本当はできるのに僕が逃げ腰になってやらずにいることや、練習でやってきたことなのに試合でビビってやらずに済ませたことなどを指摘されていた。もちろん当時はそんなふうに捉える余裕が自分になかったので、理不尽だなあと感じたこともありました。でも今となっては、ちゃんと理由があっての叱責であり指導だったんだなと理解しています。
――「どこまで親が口を出していいんだろうか」と、子どもを叱ることについて葛藤を抱くママたちも多い気がします。
渡邊選手:
僕が親になったらいろいろ考え方は変わると思いますが、ちゃんと良い親子関係が築けていれば、子どもを多少怒ったくらいで、親子関係に亀裂は入らないと思います。本当にダメなことはダメだと教えるのも親の役割だとは思うので。そのためにも
普段から親子の会話を大切にしながら、頑張っていることを見つけて褒めてあげる
などのやりとりは必要だと思います。
――大人になられて、ご両親との関係性に変化はありましたか?
渡邊選手:
パリオリンピックの際もフランスまで来てくれましたし、アメリカ滞在中も何回も足を運んでくれました。自分も照れくさいところがあって面と向かってなかなか本人たちに言うことはありませんが、両親には本当に感謝しています。アメリカ滞在中は帰国したら、まず香川に帰り両親に会いに行くようにしていました。大人になった今でも、いい親子関係を築けていると思っています。
ママやパパからの応援は、子どもにとって何よりの力になる
――最後に、子どもの夢や目標を応援するママたちにメッセージをお願いします!
渡邊選手:
親からの応援は、子どもにとって何よりも力になります。繰り返しになりますが、
子どもたちの成長に目を向けて、褒めるところは褒めてあげてほしいです。同時に、ダメなこともダメだと教えてあげてほしい
。
親の言うことやアドバイスを聞くかどうかは、それまでの親子の関係次第だと思います。普段から会話がたくさんあってコミュニケーションがとれているかどうか。日々、忙しいなかで大変なこともあると思いますが、良い親子関係を築いていってもらえたらと思います。
6回にわたるインタビュー、いかがでしたでしょうか?
褒めて伸ばしたほうがいいのか、厳しく叱ったほうがいいのかなど、子育てはとかく「方法論」に話が向かいがちです。しかし、どういうやり方が合っているのかは、お子さんのタイプによっても違うでしょうし、ご家庭の環境によっても変わるはず。子どもの夢を応援する方法も、きっと家庭によってさまざまでしょう。しかし方法は違っても、親子間の良質なコミュニケーションが、頑張る子どもたちの力になることだけは間違いなさそうです。そんなことを改めて感じたインタビューでした。
渡邊選手、貴重なお話をありがとうございました!
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取材、文・一ノ瀬奈津編集・北川麻耶撮影・中林香
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