2019年に公開され世界中で社会現象を巻き起こした映画『ジョーカー』。その2年後を舞台にした続編にして完結編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(通称『ジョーカー2』)が絶賛公開中!今回は前作に引き続き日本語吹替版のジョーカー/アーサー・フレック役を担当した平田広明と、『ジョーカー』の大ファンであり、劇中で繰り広げられる世紀の裁判でジョーカーを追い詰めるハービー検事役を演じる山田裕貴にそれぞれの役を演じてみての感想や、収録の模様などについて語ってもらった。
――平田さんは山田さんの収録前に「責任重大だぞ」とDMを送られたそうですが?
平田送ってないです。
山田音響監督さんから伝言を受け取りました(笑)
――経験者として激励をしようとされたわけでしょうか?
平田いや、ただプレッシャーを掛けたかっただけです。
山田そうだろうなと思ったんですけど(笑)
――平田さんご自身は二作目ということもありますし、プレッシャーなど感じることなく収録をされたと?
平田そんなことないですよ。大変な役なので本音を言えばやるのは大変だなと思いました。いつもセリフの少ない役がいいと思っていますし。でも実はアーサーもそんなにセリフの多い人ではないんですよ。ただあの笑いがどうにも面倒くさい。
山田(笑)
平田笑い以外でも「ブレスからブレスまでの間にこの文言を入れなきゃいけない」と尺を計算しながら収録をしていくわけですが、ジョーカーの場合は単にスピード調整をしてもダメなんです。会話中に急に怒りのスイッチが入ったときにどうしても早口になるので、短い尺の中にセリフを詰め込まなくちゃいけなくなる。その際にブツ切りにならないように、流れるようなセリフ運びを常に考えておく必要があるわけです。収録はそんな作業の繰り返しでしたし、ジョーカーに関してはお芝居が繊細な分、そうした作業をキチッと演じなければならないので苦心しました。
山田アフレコですが、何日ぐらいかけて録ったんですか?
平田リーとの絡みを村中(知)さんと一日かけて録って、それ以外は一人での収録だったから、全部で二日かな。心の叫びを口にするシーンなんかは合わせるのが本当に大変でしたし、特に笑いのシーンはもう諦めの境地で、「さぁーて、やるか」みたいな気分で収録に臨んでいました。でもそれらがハマったときは凄く嬉しいんですけどね。
――演じるにあたって、劇中での2年という時間の経過を考慮されたりしたんです?
平田いや、前作と全く変わっていないです。言い方は悪いですが、あんまりホアキンのこと以外については考えてないんですよ。お客さんたちは役に関しての僕の解釈を見たいわけじゃなくて、ホアキンがどういう芝居をしているのかを見たいと思っているはずですし。僕としては先入観や自己主張を一切持たないまま、ホアキンのお芝居に寄り添うことだけを考えました。
【関連写真】平田広明さんと山田裕貴さんのカッコイイ!取材写真を見る(5枚)――獄中で生活しているジョーカーですが、壮絶な姿になっていました。
平田普通の人の2年じゃなくて、獄中での2年ですからね。前作よりずいぶんくたびれているということもあってホアキンもそれに合わせた減量をされたそうですし。「大変だな、映像に映るプロの俳優の仕事って」なんてパリパリとポテチ食いながら思っていました。
山田(笑)
平田ホアキンも多分「2年後だからジョーカーはこうだ」なんて考えて役作りを演じているわけじゃないと思うんです。その間に彼に何があったのかが大事だと思ったので、僕もジョーカーを演じるホアキンを何度も見直しながら、彼の出す音をそのまま出すということだけを考えて演じさせてもらいました。
――山田さんはそんな平田さんのジョーカーをご覧になってどんな感想を持たれました?
山田ホアキンならではの細かい仕草にもしっかりと音を入れられているんですよ。「鼻で息を吸った音まで入っている」ところは本当に「スゲェ」の一言でした。他にもリーとふたりでいるシーンでは「この人に惚れている」ということがアーサーの声の音圧だけで分かるんです。温度感だけでなく声の成分までもがジョーカーのときと全く違うように演じ分けているところもさすがだなと思いました。
――ハービー検事についてはどう演じられていったんでしょうか?
山田台本を渡されたものの、演技について「こういう意図があって」みたいな説明はなかったんです。なので、演じているハリー・ローティーさんのお芝居を見ることで役作りをしていきました。ハービー検事は初め、民衆の前で「ジョーカーは犯罪者だ」みたいなことを語るのですが、その後の法廷ではすごく冷静にジョーカーを追い詰めていくんです。その淡々とした感じが逆に気持ち悪くていいのかなと思いつつも、ハリー・ローティーさんがどんな音圧、どんな音で声を出しているのかを聞いて、それに合わせながら演じさせてもらいました。
――平田さんは山田さんの演技についてはどのような印象をもたれましたか?
平田やりづらかっただろうなと思って。彼に限らずだけどみんな収録で「余計な芝居をしないで」って言われていたんです。音響監督から「もっと抑えて」「もっと芝居しないで」って常に要求されていて、一緒に録ってた村中さんも「え?もっとですか?」と戸惑っていました。村中さんもお芝居に長けた声優ですし、リーを演じたレディー・ガガの演技に合わせた役作りの準備をしてきていたはずなんです。でも「もっとやらなくていい」ですからね。そりゃ演じている方も不安になりますよ、「じゃあ何すればいいの?」って。
山田(笑)
平田だからといってボソボソ台本読めばいいのかっていうとそうじゃないわけで。そんな風にセリフを謳う気持ちよさを一切許さないのがこの『ジョーカー2』の現場ではありました。あのハービー検事という役なんてまさにそうだよね?
山田そうですね。もうずっと不安でした。でも僕はその抑えたところをちゃんと守りたいなと思ったんです。音圧を上げるわけじゃなく、淡々とただそこにいるだけみたいな、そんな声になったらいいなというのがあって。音が出過ぎてしまわないように、細かな声色みたいなのを自分の中で探っていきながら、「これだったらニュアンスが伝わるかな?」という音の感覚を信じてセリフをはめ込んでいった感じです。
――実際にクライマックスまで映像をご覧になっての作品の印象はいかがでしたか?
山田本当に色々な答えを持っている作品だと思います。僕も字幕版と吹替版を一回ずつ見させてもらったんですけど、字幕版より吹替版の方が「あ、こういうことなのかも」というのがスッと入ってきた気がしていて。それは見たのが字幕版に続いて二回目だったからっていう可能性もあるんですけど(笑)
平田一回見て「わかった。面白かった」で終わる映画じゃないんですよ。見る人によって感じることは違うと思うんですが、鑑賞後に必ず「これってどういう解釈なんだろう?」っていう疑問が浮かんできて、そのことを考えていくうちにまた新たな疑問が湧いてきて、そのたびに印象が変わっていくみたいな、そんな作品になっているような気がしています。明るく楽しいお話しじゃないんで何度も見るのは人によっては辛いかも知れませんが、それでも何回も見ないとわからない映画なんじゃないかなっていうのはありますね。わかったところで暗い気持ちになるだけかもしれないけど。
山田(笑)
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