映画『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』『空の青さを知る人よ』を手掛けた長井龍雪監督と脚本家の岡田麿里、キャラクターデザインの田中将賀の三人がタッグを組んだオリジナル長編アニメーション映画『ふれる。』が現在公開中。本作は、幼い頃に出会った不思議な生き物「ふれる」の力によって互いの心の声が聞こえるようになった小野田秋、祖父江諒、井ノ原優太の三人が、成長して島から上京し、東京・高田馬場で「ふれる」とともに共同生活を送るという物語。しかし新たな出会いや環境の変化により三人と一匹は少しずつ変化していく。そんな本作にオーディションを経て出演が決まった、秋役の永瀬廉と諒役の坂東龍汰、優太役の前田拳太郎に今回クランクイン!がインタビュー。和気あいあいとした雰囲気の三人に声の仕事について思うことなどを語ってもらった。
【写真】永瀬廉×坂東龍汰×前田拳太郎 撮り下ろしソロカット
■“自分の声”ってどう思う?
――オーディションで役を得た皆さん。その際の準備や、役作りはどのようにされましたか?
前田拳太郎(以下、前田):優太役でオーディションを受けたのですが、自分の見た目と違うキャラクターなので、どういう声でお芝居するべきなのかを想像するようにしました。自分で声を録音して聞いてみながら、イメージを膨らませて、どういうふうにアプローチしていったらいいかを考えました。
永瀬廉(以下、永瀬):オーディションに関しては、特別に何かを用意したわけではありませんでした。本を読んで、キャラクター設定やデザインを見てキャラクター像を膨らませて挑むくらいの最低限のことしかしていませんでした。
坂東龍汰(以下、坂東):僕はオーディションの日と帰省する日がドンピシャでかぶっていて「うげー!」と思ったのを覚えています(笑)。でも『ふれる。』の大まかなストーリーと役柄のプロットをいただいた時に「絶対にやりたい!」と思い受けさせていただきました。準備に関しては、諒に近そうなキャラクターの映像を見てみたり、普段の自分の声よりちょっとドスの利いた声を意識しようと考えていたんですけど、実際マイクの前に立ったら、全部真っ白になっちゃいました(笑)。ただ、体育会系で明るいというキャラクターではなくて、そうでありつつも2人を客観的に見て包み込むような諒なりの優しい声で表現することは意識しました!
――俳優業と声優業で違いを感じたことはありますか?
前田:基本的にはそこまで変わらないですが、僕の見た目でできる役以外の役も演じられるのが楽しいなと思いました。普段の役作りも難しいんですけど、自分と違うからこその難しさはありましたね。
永瀬:どちらにもそれぞれ難しさはあるんですけど、僕は今回気楽にやれました。声だけが僕の要素として出るわけなので、そういう意味ではどういう表情をして、セリフを言ってもいいし、動きや見え方を気にしなくていいのは、すごく楽チンだなと。声だけに集中するのも好きだなと改めて思いましたね。
坂東:普段全身を使って表現している一方で、今回はマイクを通した声だけが聞かれている状況だったので、すごく新鮮でした。僕が身振り手振りをしながらがむしゃらにやっているのを見て、爆笑する声も聞こえましたけど(笑)。それも含めて楽しかったです。普段、映像を回して自分の芝居を撮って確認することがあるのですが、今回はボイスレコーダーで自分の声を録ってみて、「これ違うな」とか「これなのかな」って探ってみたりもしました。自分の声と向き合う時間も楽しかったです。
――今回のお仕事を通して、自分の声に対して気付いたことを教えてください。
坂東:僕が演じた諒は感情表現が豊かで声色も変わる役だったので、場面ごとに全然違う諒を自分の声に乗せられたらなと考えていました。完成した作品を見た時は「あのアプローチは間違ってなかったのかな」と思えて。自分の声がちゃんと生きていたので、そこは褒めてあげたいなと思います。
永瀬:自分の声か…。何も思わないですね。
坂東:そうなんだ!
永瀬:ずっとこの声ですし、歌とかバラエティー番組でも、自分の声を聞くことが多いので、何も思わなくなっちゃいました。
坂東:最初から?それとも、どこかのタイミングで慣れた?
永瀬 :最初は全然慣れなかった!中学生くらいの時に、初めて自分の声を聞いた時はちょっとイヤというか、聞きたくなかったです。
前田:でもイケボって言われるんじゃないですか?
永瀬 :多い。自分では声に対して良いとも悪いとも感じないんですけどね。
坂東:それがいいんだろうな。それが多分イケボの源だ(笑)。
永瀬 :自分の声に対しても、他の人の声に対してもそんなに。声は声だなって。もちろん褒めてもらえることはうれしいですけど。
――イケボと言われることで「ちょっとかっこよく声を出してみようかな」と意識することは?
永瀬:いやあ…ないです!
坂東:狙っちゃってたら、ちょっとイヤだもんな(笑)。
永瀬 :俺、イケボで頑張ってるって…?頑張ってないよ(笑)。
――(笑)。それでは共演した方々のそれぞれの印象もお伺いしたいです。
坂東:廉と俺はね、もともと共演してたから。
前田:僕だけが「はじめまして」でした。
坂東:そうそう。ただ、俳優の綱啓永っていう共通の知り合いがいて…(笑)。
前田:探りを入れてくるんですよ。
坂東:「どれぐらい台本読んでる?」とか「前田くん、覚えていくの?」ってね。僕は声優初というのもあって不安で…。そうやって人づてにやりとりをしていたので、収録の日は「やっと会えた!」って思わず言っちゃいました。
前田:確かに「はじめまして」の感じはあんまりしなかった。永瀬くんは「テレビで見ていた、King & Princeの永瀬廉だ」って思いました。「僕なんかとしゃべってくれるのかなあ」とも思っていたんですけど、すごくフランクな感じで話してくれたので「あ、優しい人だ、良かった」って安心しました。
永瀬:俺、そんなふうに思われてるの?(笑)。
――永瀬さんから見た前田さんの印象は?
■もしも三人で共同生活をするなら
永瀬:クール系なイメージでした。劇団EXILEの別の方とお会いしたことがあったので、その方のイメージに引っ張られてて、同じような印象を持っていたんですけど、思った以上に奥ゆかしい系の謙虚な人だなと思いましたね。
――それからどうやって距離を縮めていったのでしょうか?
前田:もう身を委ねていました。ずっと三人でアフレコをしていたので、作中の僕らと同じく共同生活してたぐらいの気分になりながら。自然と打ち解けていきましたね。裏でも和気あいあいとしていて、作中の三人の友達感、ワチャワチャ感が出ていたなと思います。
坂東:アフレコの裏でいろんな話をしたり、かんだらみんなで「頑張れ〜!」とか言って。それでも、なかなかOKが出ない時は、ちょっと静かに見守って…。あの空気感は伝えたいです!本編にもにじみ出ていると思います。
永瀬:あのおかげで三人でしゃべっている時の雰囲気も簡単に想像できたし、思った以上に二人が諒と優太を演じてくれていたので、やりやすかった部分がありました。
――皆さんには、作中での三人のように言葉がなくても通じ合える親友はいますか?
永瀬・坂東・前田:います!
前田:それこそ、今回龍汰くんとの間を取り持ってくれた綱啓永とか。『仮面ライダー』に出演していた頃の友だちは、今でもずっと仲良いですね。毎日のように一緒にいます。
坂東:すごいよな。毎日一緒にいれるって。若いっていいな。
永瀬:俺、この歳でもないよ。毎日はキツいなってタイプやし。
前田:僕のスケジュール、全部把握されてますもん。誰かしらからは「今何してるの?」って毎日連絡がきます。
坂東:すごいな、それは!(笑)
永瀬:Aぇ!groupの正門(良規)が最近デビューしてうれしかったのと、俺はなにわ男子の(西畑)大吾かな?大吾は週1〜2で会う時もあるし。この前なんて、二人でベロベロになりながら、ダーツしてましたね。負けたら飲むみたいな。
坂東:それ、二人でやるんだ!(笑)。僕は、初舞台で一緒になったシンガーソングライターの山岸健太ですかね。僕、いろんな業界の知り合いが増えて、自分の知らない世界に足を踏み入れて冒険してみたいなっていう時期もあったんですけど、その時に山岸が「お前はそういう世界を一回経験するけど、必ずこっちの世界に戻ってくる」って言ってて。「いやいや、戻ってこないから」って言ったけど、まんまと戻ってきてずっと一緒にいますね。気兼ねなくちゃんと言葉にして相談とかもできる友達は、唯一、彼かな。東京に出てきてからは。
――それでは作中と同じく、もしも三人で共同生活をするなら何を担当しますか?
永瀬:インテリア担当で!
坂東:じゃあ僕、フードデリバリー担当!
前田:僕は…防犯をやります。もう絶対に侵入者を入れません!
坂東:食べ物は俺が調達してくるから、まかせろ!みんなのためにバイトもするし。
前田:え?俳優っていう設定は捨てるんですね(笑)。
坂東:廉がインテリア担当で稼ぎがないからね、今のところ。
永瀬:俺、お金めちゃ使うやつじゃん。
坂東:いい家具が買えるように頑張るわ!
(取材・文:於ありさ写真:高野広美)
アニメ映画『ふれる。』は全国公開中。
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