10月21日(月) 15:15
毎年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、住民の実感調査による「住み続けたい街」(自治体/駅)ランキング2024年版を発表した。2022年に続き2回目のランキングとなるが、「住みたい街」とは顔ぶれが異なる「住み続けたい街」。2024年版は、どの街が上位になったのだろう。
【今週の住活トピック】
「SUUMO住み続けたい街ランキング 2024首都圏版」発表/リクルート
「住み続けたい街ランキング」は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県の街(自治体・駅)について、1次調査で「住んでいる街に住み続けたいか」を聞き、一定数の回答を得た街について、2次調査で「住んでいる街の魅力」と「住んでいる街との関わり」※についての回答を集計したもの。
※「住んでいる街の魅力」は、交通アクセスや商業施設、自治体サービス、子育て・教育環境、防犯・防災、街並み、街の将来性などの40項目について、「住んでいる街との関わり」は、地縁性や街の知人の数、参加している活動などの24項目について、5万1211人(2次調査人数)に調査。
「住みたい街」は多くの人が憧れる街なので、ターミナル駅や利用者の多いJRの駅などが上位にくる傾向がある。一方、「住み続けたい街」は住民の実感値によるものなので、居住性(住みやすさ)が重要になる。気になる駅のランキングでは、興味深いことに、郊外や都心でもややマイナーな駅が上位になった。どんな顔ぶれになったのだろう。
住み続けたい駅ランキングのTOP3は、みなとみらい、馬車道、北参道
■住み続けたい街(駅)ランキング2024上位10位
出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング 2024首都圏版」発表資料より
TOP10を見ると、神奈川県の海沿い(横浜周辺と湘南海岸)の街と東京23区の少しマイナーな駅が多い印象を受ける。みなとみらいや馬車道、鵠沼などは、2022年もTOP10に入る住み続けたい街の常連といえるだろう。だが、北参道、浜町、三越前などは東京に地縁がないと、どこだかよくわからない人もいるかもしれない。戸越公園も含めて、急上昇しているのも気になるところだ。
ちなみに、11位以下を見ても、江ノ島電鉄線や小田急江ノ島線の湘南海岸の駅が多く、23区も赤羽橋や新富町、戸越、茗荷谷など、全国的に知名度が高くはない駅が多い。住んでいる人なら実感できる、住み心地の良さがあるのだろうが、どんな良さなのか興味が沸く。
そんななか、『SUUMOリサーチセンター』が注目したのが、次の3エリアだ。
1.みなとみらい・馬車道
2.浜町・三越前
3.戸越公園・戸越・戸越銀座
以下、同センターのエリア分析に基づいて、それぞれの注目ポイントを見ていこう。
■みなとみらい・馬車道エリア
みなとみらいは「住みたい街ランキング2024」でも、24位に入る人気駅だ。その隣駅の馬車道はランク外なのだが、実は今回の調査では「街の魅力」の40項目中13項目で、首都圏1位になるほどの駅なのだ。
2つの駅で1位2位を占めた項目は、「メディアによく取り上げられている」「街に賑わいがある」「今後、街が発展しそう」で、Kアリ-ナ横浜や横浜BUNTAI(ブンタイ)などの大型施設が続々オープンする横浜ベイエリアの活気が後押ししているようだ。馬車道はそれに加えて、歴史を残した街並みがあり、新旧の文化が共存する魅力も感じられる強みがある。
■浜町・三越前エリア
「浜町」と「三越前」は、前回調査から急上昇した。隅田川に近い「浜町」は、今回の住み続けたい街で29位の「東日本橋」や42位の「人形町」にも近い江戸情緒の風情が残る街で、「三越前」はいくつかある三越の中でも日本橋三越の前だ。日本橋から首都高速を超えた人形町にも近いエリアにある。
「浜町」で「街の魅力」の評価偏差値が高かったのは、「魅力的な運動施設が充実している」、「『街らしさ』を感じる食・街並み・自然があって愛着がもてる」、「防犯対策がしっかりしており治安が良い」、「魅力的な文化施設が充実している」などだ。
浜町には、中央区最大の浜町公園や緑道があり、もともと老舗の商店の多いエリアだったが、新築マンションの供給で子育て世帯が流入したことで、若い世帯向けの店舗も増えている。新旧どちらの住民にも暮らしやすい街という点が評価されたようだ。
■戸越エリア
住み続けたい街10位に「戸越公園」が、20位に「戸越」、33位に「戸越銀座」が入った戸越エリア。「戸越エリア」の「街の魅力」の評価偏差値が高かったのは、ダントツで「魅力的な商店街がある」。次いで、「魅力的な子育てに関する自治体サービスが充実している」、「魅力的な介護・高齢者向け施設やサービスなどが充実している」だ。
東京で最も長いという商店街が、エリアの魅力になっていることに間違いはないだろう。それほど長い商店街なら、ショッピングも楽しそうだ。この商店街は、従来のお祭りを防災訓練のイベントに衣替えするなど、主体的に企画や情報発信をしていることも特徴だ。
五反田や大井町、品川にも近い交通面に加え、子育てにも、介護・高齢者にも魅力的な施設やサービスがあるというのも強みといえる。
住み続けたい街の上位には、東京23区と神奈川県の海沿いの街が多かったが、そうはいっても最近は住宅価格や家賃も上がっている。リーズナブルで住み続けたい街はないのか? という観点から、同センターでは「家賃が手ごろなのに満足度が高い駅」を抽出した。その結果の上位を発表しよう。
■東京都市部でファミリーに手ごろな住み続けたい街(家賃相場12万円以下※)
※SUUMOに掲載のある駅徒歩15分以内、築年数35年以内の50平米~80平米の家賃相場を算出(以下同)
1位:谷保
2位:砂川七番
3位:南大沢
■埼玉県でファミリーに手ごろな住み続けたい街(家賃相場11万円以下)
1位:北大宮
2位:加茂宮
3位:大宮公園
■千葉県でファミリーに手ごろな住み続けたい街(家賃相場11万円以下)
1位:舞浜
2位:鬼越
3位:京成中山
仕事柄、首都圏のさまざまな地域を回っているが、知らない駅名があったので驚いた。「砂川七番」(すながわななばん)は多摩都市モノレールの駅、「加茂宮」(かものみや)は埼玉新都市交通伊奈線の駅、「鬼越」(おにごえ)は京成本線の駅だ。
気づいていないだけで、リーズナブルで満足度が高いエリアというものがある、ということだ。
「砂川七番」「加茂宮」「鬼越」…共通点は手ごろなのに生活圏の便利さと良好なアクセスで満足度が高いそれぞれの駅には共通する特徴がある。
たとえば「砂川七番」はJR立川駅で乗り換えてモノレールで7分、「加茂宮」は大宮駅から2駅など、ターミナル駅に近い。自転車で行ける距離感でもある。その結果、手ごろでありながら、ターミナル駅の商圏としてのメリットを得られたり、大型施設が開発されて利便性が高まったりと満足度が高くなる。
東京都市部や埼玉県ではその傾向が顕著だ。しかし、千葉県は少し違う。「舞浜」駅自体に駅力があるし、「鬼越」「京成中山」はターミナル駅に近いわけではない。
京成線の「鬼越」の奥が「京成中山」で手前は「京成八幡」だが、「京成八幡」は都営新宿線の「本八幡」と総武線の「本八幡」と隣接している。「京成中山」も総武線の「下総中山」に近く、ターミナル駅ではないが、複数路線にアクセスできるという特徴がある。
また、「鬼越」の「街の魅力」や「住民の参加」を見ると、“図書館”がキーワードに挙がる。同センターの分析によると、ほど近い場所に「ニッケコルトンプラザ」があることが要因の一つだという。大規模な商業施設であるだけでなく、映画館やゴルフ・テニスなどのスポーツ施設もある。中央図書館や中央こども館、文学ミュージアムなどがある生涯学習センター(メディアパーク市川)にも隣接していて、ここに来れば、なんでもそろうわけだ。
10月21日に行われた調査結果の記者発表会でも、“家賃が手ごろ”で満足度が高い「住み続けたい街」に関する質問も多かった。筆者のように、知らなかった街が上位に挙がることへの関心が高かったということだろう。
さて、今回のランキングの結果を見て、あなたはどう思っただろう? 人それぞれで“住みやすさ”を感じる点は異なるので、納得のいく結果も意外な結果もあったかもしれない。知名度の高い大きな街だけでなく、手ごろで自分好みの暮らしができる街があるはずだ。ぜひ探してみてはいかがだろう。
●関連サイト
リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング 2024首都圏版」
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