『リボルバー・リリー』(23)で日本アカデミー賞主演女優賞に輝いた綾瀬はるかが主演を務めた森井勇佑監督最新作『ルート29』(11月8日公開)。本作の公開を記念して、森井監督の前作であり、本作にも出演する大沢一菜が主演を務めた『こちらあみ子』(22)の特別上映会を実施された。
【写真を見る】大沢の魅力を「ハンパないと思います。撮っていてすごく面白い」と語る森井監督
『こちらあみ子』で第27回新藤兼人賞金賞はじめ数多くの賞を受賞し、デビュー作にして多くの映画ファンを魅了した森井監督。詩人、中尾太一の「ルート29、解放」からインスピレーションを受け、映画の舞台ともなった姫路から鳥取を結ぶ一本道の国道29号線を約一か月間旅をし、脚本を完成。その独創的なストーリーは、他者とコミュニケーションを取ることをあまりしない主人公トンボ(綾瀬)が、風変わりな女の子ハルを連れて旅に出た先での様々な出会い、そこで次第に深まるハルとの絆によって、からっぽだった心に喜びや悲しみの感情が満ちていく時間を綴ったロードムービーだ。ハル役には『こちらあみ子』で強烈なデビューを飾り第36回高崎映画祭最優秀新人俳優賞を受賞した大沢。幅広く活躍を続ける彼女はドラマ「姪のメイ」「季節のない街」と立て続けに出演。森井監督作品には2作品続けての登場となる。そのほか、市川実日子、高良健吾、原田琥之佑、河井青葉、渡辺美佐子など、演技と存在感に定評のある実力派キャストたちが集結した。
第37回東京国際映画祭のガラ・セレクション部門への正式招待が発表され、ますます期待が高まるなか、今回実施された『こちらあみ子』特別上映会。公開から1年経ったあとも多くのファンの心を惹きつける『こちらあみ子』が、新作『ルート29』にもたらしたものとは?また、『こちらあみ子』から引き続き出演する大沢が話す森井監督の現場とは?様々なテーマでトークが展開した。
観客の前に登壇した大沢と森井監督。キャスティングの決め手を聞くと森井監督は「最初にオーディション会場に現れた時に、一番僕の話を聞く感じがなかったんですよね(笑)。オーディション始まる前の部屋にいたところに話しかけた時に、そっぽを向いて『うん』、『はい』って感じだったんですよね」と振り返ると、大沢はあまり意識していなかったようで、「ものすごく緊張していたのを覚えている!」と明かす。そこから、撮影を振り返ると、「スタッフもすごい優しくて、すぐ溶け込める雰囲気を監督が作ってくれたし、ほぼ遊んでました!」と無邪気な大沢に、「ほぼ遊んでたね」と監督も答え、仲良さげな様子。「一菜だけではなくて、子どもたちは無茶苦茶になっているんですが、その時にしか撮れないものがあるということも分かっていたので、尾野(真千子)さんも(井浦)新さんもそれに参加してくれて。“ちゃんとしない”、をやるっていう。先生はいない、大人はなにも怒らない、という感じでしたね」と撮影の裏話を振り返った。さらに大沢の「生きていていちばん自由だったと思う」という堂々とした話しぶりに、会場は笑いに包まれた。
初めての撮影現場での共演者の印象を尋ねられると、「テレビとかでは見たことあるけど、実際に見ると、すごいなと思いましたね。新さんもあみ子を無視している感じがすごかったです」と大先輩、尾野真千子と井浦新の印象を話す大沢。そこから尾野の泣くシーンの話になると、「なにもテストやリハーサルとかはしないで、尾野さんからもあのお墓を本当に初めて見たいとのことで、本当に初めての感覚でやりましたね」と裏話が監督から飛び出す。また、“あみ子”の役作りの話になると、「長いセリフがたくさんあったので、事前に10日間前に(大沢に)広島に入ってもらって、毎日リハーサルをやったんですね。歩き回ったり、ぶら下がったり、遊びながらセリフを反復してもらうというのをやって。感情を作ってセリフを言ってもらうのではなくて、その場で、どんな状況でもセリフが言えるように、という特訓をしましたね」と明かす監督。大沢も「『こちらあみ子』のときは何も言われていないですね。『一菜のままでいてくれ』としか言われてない」と振り返る。
そして話題は『ルート29』の話に。『ルート29』では、ハルを大沢にあてがきしたという監督。「『こちらあみ子』を撮った後も会っていて、その時に(大沢が)『どこかかっこいいところがあるな』と思っていて、それをちゃんと映画で表現できるような役をみてみたいなというところがありました」と、大沢にあてがきをしたいと思った経緯を話すも、大沢は「自分は『こちらあみ子』の時から変わっているのかわからないですね」とクールな返し。
『こちらあみ子』の撮影後、森井監督が寂しさのあまりホテルで泣き暮らしていたというエピソードが紹介されると、「撮影後がすごいエモーショナルなお別れで、”あみ子”のパンフレットに詳細を書いているんですが、一菜がその当時『東京リベンジャーズ』がすごい好きで、最終日に突然、挨拶し出して、“総長”をやり始めて(笑)。『〇〇部の〇〇はよくやった!』と皆に言って、皆で号泣していたんですね。そこで、最後長い階段を降りていって去っていたので、とても劇的だったんです」と印象的なエピソードを細かに語る森井監督だったが、大沢は覚えていない様子で、驚く森井監督。「ホテルに帰って泣いたのは覚えている。『一番楽しかったけど、終わっちゃったな』という感情でした」と大沢自身の思い出も振り返った。
『ルート29』での綾瀬との共演についての話になると、「その時だけ、監督、“神” だと思ったし、現場で(綾瀬に)会ってみて、笑顔で優しい人なのかと思ったら本当にそのままで、もっと好きになって、好きになりすぎて話しかけられなかったし、見れなかったから、近寄れなくて恥ずかしかったです。でも、だんだん打ち解けてきて、虫を一緒に捕まえたり、監督が来た時に、爆弾投げて監督を倒すというアクションごっこしたりしましたね」という、ユーモアあふれるエピソードに会場も笑いに包まれる。
『こちらあみ子』と『ルート29』では2人の現場でのやり取りも異なったようで、「ちゃんと芝居をする1人の人間になっているな、意識が芽生えているなと思いました。演技をするということを意識しているなという感覚ですね」と大沢の印象を語る森井監督。「綾瀬はるかさんと大沢一菜さんの2人の話なので、2人を対等にしたいと思っていたので、綾瀬さんと接するように、一菜にも接したいと思っていました」と意識した点を森井監督が話すと、「一番大切なシーンの時、『ひとりぼっちで宇宙にいるような感覚でいて』と言われて、 『こちらあみ子』の時とは、ちょっと違うなと思いましたね。最初はなに言っているんだろうなと思ったけど、よくよく一人の部屋で考えていたら、『ハルはこういう気持ちなんだな』というのを実感して、そのままハルの気持ちを出せばいいのかなと思いました」と大沢。「一菜のそういう感じなのが面白かったですね。芝居が奥深いなと思いましたね」と大沢を絶賛する森井監督。仲の良さをMCが指摘すると、「親友?」と森井監督を見る大沢に、「たまに言ってくれるんですよね」と嬉しそうな監督だった。
最後に、大沢に今後の展望を尋ねると「(演技を)続けていきたいし、撮影現場に行くと、学校で嫌なことがあっても忘れられるのがすごく好きだから、これからもやっていきたい!」と今後も楽しみになるような返答が。そんな大沢の魅力を、「もう『ルート29』を観ていただいたらわかると思いますが、言葉では形容し難いですが、ハンパないと思います。撮っていてすごく面白いんですよね。底力がおありなんです」と力強く語る森井監督。和やかな雰囲気のまま、イベントは幕を閉じた。
文/サンクレイオ翼
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