10月21日(月) 14:00
毎年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、「SUUMO住み続けたい街ランキング2024 首都圏版(SUUMO住民実感調査)」を発表した。首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(自治体・駅))について、「今お住まいの街に今後も住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキングしたものだ。有名な街、憧れの街が上位になりやすい「住みたい街」に対し、「住み続けたい街」は実際にその街で暮らす住民の実感が反映されたもの。よりリアルな「住み心地」の良さや、その街への「愛着」や「満足度」の高さなどが結果に影響しやすい調査といえる。
2022年以来の調査となった今回も、総合ランキングのほか、「家賃水準別」のランキングを公開。ここではそのなかから、東京23区シングル向け物件の家賃が8万円以下の「お手頃な街」に絞った、住み続けたい街TOP10を紹介する。
意外な穴場?「東急世田谷線」の駅が4つもランクイン「家賃水準別 住み続けたい街ランキング」は住み続けたい街調査のなかで、一定の評価(平均評価点70点以上)を得た駅の、シングル向け家賃相場を集計。都県(地域)別に駅の家賃相場の平均値(万円単位、千円以下は四捨五入)を算出し、ランキング化したものだ。
ここでピックアップするのは「東京23区シングル物件」の家賃相場が家賃8万円以下の街から、評価が高かったTOP10を抽出したランキング。東京23区シングル物件の家賃相場の平均値は9万円であるため、それよりも1万円以上安い「家賃がお手頃な街」に限定した住み続けたい街ランキングとなっている。
つまり、ここで挙がった駅は、そこで暮らす住民が「今後も住み続けたい」と感じていて、なおかつ「賃貸物件も手が届きやすい価格」ということになる。それでは、上位の街を見ていこう。
前回調査と同様、今回も「東急世田谷線」の駅が数多くランクイン。前回2位だった「山下」が1位に、以下5位「宮の坂」、6位「松原」、7位「上町」と4つの駅がTOP10に入った。その名の通り、全ての駅が世田谷区内にある東急世田谷線は、下高井戸駅から三軒茶屋駅間の約5kmを結ぶ軌道線。下高井戸駅で京王線、山下駅で小田急小田原線(豪徳寺駅)、三軒茶屋駅で東急田園都市線に乗り換えられ、近隣住民の貴重な通勤・生活路線になっている。
都内では比較的マイナーな路線といえるが、沿線には世田谷の静かでおっとりした雰囲気の住環境が広がり、地域密着の特徴的なお店も多い。また、各駅がコンパクトで駅周辺に大きな建物がないこと、それゆえあまりガヤガヤしていないこと、新宿や渋谷などのターミナル駅に直結していないことから、東京の都心部近郊にありながらどこか「田舎感」「地元感」を漂わせる点も、住民に愛され、「住み続けたい」と感じさせるポイントかもしれない。
住民が「住み続けたい」と感じる理由は?
ここからは上位の街の特徴や、調査の詳細分析から見えてきた「住民から特に評価されているポイント」を詳しく見ていこう。
まず1位の「山下」は、小田急小田原線の「豪徳寺駅」に至近で、新宿などにもアクセスしやすい利便性が高く評価されている。また「地域に顔見知りや知り合いができやすい」「街の住民がその街のことを好きそう」「自然災害が少ない/防災対策がしっかりしている」の項目も評価が高かった。居心地の良いコミュニティの存在と、安心して暮らせることは長く住み続けるうえで重要なポイントといえそうだ。なお、山下駅から徒歩10分の場所には世田谷区立羽根木公園があり、周辺の北沢川緑道も含めた豊かな自然環境も大きな魅力となっている。
2位の「南阿佐ヶ谷」で特に評価されているのは「魅力的な商店街がある」「住宅街が整然として美しい」「子育て環境が充実している」の項目。「すずらん通り商店街」「阿佐ヶ谷パールセンター商店街」という2つの名物商店街があり、ともに50年以上の歴史を持つ。すずらんの花を模したかわいらしい街路灯や、商店街発足当初から営業されているお店のレトロな看板など、昭和を知らない世代でもどこか懐かしいと感じてしまうような雰囲気。惣菜店や飲食店も多く、シングルにとってもありがたい存在だ。
また、ともに東急世田谷線沿線の5位「宮の坂」と6位「松原」。宮の坂は「雰囲気やセンスのいい、飲食店や個人商店(書店、美容院、雑貨屋など)がある」や「コストパフォーマンスがよい飲食店や個人商店(書店、美容院、雑貨屋など)がある」の項目、松原は「子育て環境が充実している」「教育環境が充実している」の項目の評価が高かった。
SUUMOリサーチセンターの笠松美香氏によれば「東急世田谷線はターミナル駅への接続という意味では若干の不便さはありますが、そのぶん家賃相場が低くなっています。家賃相場が低いと、同じように店舗の賃料も低くなるので飲食店や商店においても、若いオーナーや実験的な店舗もチャレンジしやすく、個性あるラインナップになります。日常使いできる範囲に飲食やくつろぎを得る選択肢が多くコスパがいい、そんな魅力が世田谷線にはあるといえるでしょう。一方で、沿線には世田谷区内に数多く出店する食品スーパーの『オオゼキ』や公園、図書館などの公共施設も充実しているため、生活環境としても申し分ありません。世田谷ボロ市など伝統的なイベントも多く、地域への愛着が生まれやすい環境といえるのではないでしょうか」とのこと。
繰り返しになるが、ランキングに挙がった街はいずれも東京23区シングル物件の家賃相場より1万円以上安く、東京で暮らしをスタートさせる人にとっても比較的ハードルが低いエリアといえる。そこで居心地の良さを感じ、地域のコミュニティに馴染み、街への愛着が深まっていく。結果、ライフステージが変わっても住み続けるという人も多そうだ。
転居を繰り返しいろんな街で暮らすのもいいが、一つの場所に長く根を下ろせば街を深く知り、地域の人々とじっくり関係を築いていくこともできる。今回のランキングを参考に、ぜひ自分にとっての「住み続けたい街」を見つけてほしい。
●プレスリリース
「SUUMO住民実感調査2024 家賃が手ごろで満足度が高い 住み続けたい街ランキング2024」
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