“いろいろ”あったラスベガス素敵な勝者と敗者【舩越園子コラム】

J.T.ポストンが逃げ切り優勝(撮影:GettyImages)

“いろいろ”あったラスベガス素敵な勝者と敗者【舩越園子コラム】

10月21日(月) 12:00

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PGAツアーのフェデックスカップ・フォール第4戦「シュライナーズ・チルドレンズ・オープン」は初日から強風や寒波に襲われ、中断や日没サスペンデッドを繰り返す不規則進行になった。



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荒れる天候と同様、来季のシード権を獲得するため、フェデックスカップ・ランキング125位以内に食い込むことを目指す選手たちの心理状態も荒れていたのかもしれない。

ランク124位というギリギリの位置で今大会を迎えたジョエル・ダーメンは、初日の4番ホールでキャディバッグの中にクラブが15本入っていることに気が付き、真っ青になった。「ふと見たら、4番アイアンが2本入ったままになっていた。こんなこと、今まで一度もなかった。なぜ気が付かなかったのか…」

この日を「72」で回ったダーメンは4罰打が加えられ、提出したスコアは「76」。2日目にばん回するチャンスは残されていたが、「ショックが大きすぎてもう集中できない」と語り、初日終了後に棄権。大会を終えて、彼のランキングは129位へ下がってしまった。

プレッシャーがかかる状況下では、何が起こるか、何をしてしまうか、本当にわからないのがゴルフであり、その現象は今大会の優勝争いでも、はっきりと見て取れた。

2日目に首位タイへ浮上した31歳の米国人、J.T.ポストンは、第3ラウンドを終えて3打をつけて単独首位となり、最終ラウンドも首位を独走していた。2019年「ウインダム選手権」と22年「ジョンディア・クラシック」を制し通算2勝を誇るポストンは、今季はプレーオフ・シリーズにも進出。最終戦「ツアー選手権」出場は逃したものの、「BMW選手権」を終えて、フェデックスカップ・ランキングは41位だった。



来季のシード権はすでに安泰だが、15年のプロ転向以来、今大会には16年から欠かすことなく挑んできたポストンは、9度目の出場となった今年こそ優勝したいと願っていた。「このコースは一目見たときから相性の良さを感じていた。去年は3位タイ。今年こそと思っていた」。

最終日。一時は2位との差を4打へ広げ、ストレスフリーのゴルフを披露している様子だった。しかし、終盤は16番でも17番でも短いパットを外し、2位で追う28歳のダグ・ギムとは、わずか2打差で18番へ。
見事にピンそばを捉えたギムが先にバーディーパットを沈め、1打差まで迫られたポストン。12メートルのファーストパットを1.2メートルもショートさせ、このパーパットを外したらギムとのプレーオフになるというドキドキの状況に陥った。

しかし、これをしっかり沈め、9度目の正直でラスベガスでの初勝利。通算3勝目を挙げた。

「スコアをいくつ伸ばしても、決して安泰ではないことを痛感させられた。ダグ・ギムはグレート・プレーだった」。勝者がその場で敗者を讃えたその言葉には、実感が込められていた。

一方、ギリギリまでポストンを追い詰めた末に惜敗したギムにも、大きな注目が集まった。両親は韓国生まれで米国へ移住。ギム自身は米国で生まれ育ち、テキサス大学時代は世界アマチュアランキング1位に輝いた。PGAツアーは未勝利で、今大会では初優勝にリーチをかけたが、72ホール目でポストンがパーパットを捻じ込んだ瞬間、初優勝の夢は消えた。

その瞬間、目を閉じ、下を向いたギムの表情には大きな落胆が見て取れた。しかし、すぐさまクスっと笑った仕草が、なんとも素敵だった。

「ポストンは今週、いいゴルフをしていた。彼は勝者に値する。ラスベガスに住む僕にとって、このTPCサマリンはホームコース。熟知しているコースでの戦いは快適なはずだったけど、それと戦いに勝つことは、まったくの別モノだった」

勝者を称え、潔く敗北を認め、冷静に敗因を語ったギムのグッドルーザーぶりは、とても清々しく、来たる「ZOZOチャンピオンシップ」での彼の活躍に、是非とも期待したいと思った。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)


<ゴルフ情報ALBA Net>
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