【写真】渡辺謙の実娘で俳優の杏との豪華ツーショット
俳優の渡辺謙が10月21日に65歳の誕生日を迎えた。世界的な知名度を誇り、国内外で途切れなく多彩な作品に出演し、今もなお第一線で輝き続けている。今回は渡辺の出演したハリウッド作品を中心に振り返りつつ、彼の魅力に迫りたい。
■初のハリウッド映画でアカデミー賞ノミネートの快挙
渡辺が本格的にハリウッド進出するきっかけとなったのは、トム・クルーズが製作・主演を務めた「ラスト サムライ」(2003年)。ハリウッド作品ながら舞台は明治維新後の日本で、渡辺はトム演じるアメリカ人大尉ネイサン・オールグレンと絆を深める、誇り高き“サムライ”勝元盛次を演じた。ネイサンが感銘を受けることも納得の武士道精神、サムライ魂を全身からにじませた演技は国内外の観客を魅了し、第61回ゴールデングローブ賞と第76回アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされるに至った。
渡辺といえば、役者として注目されるきっかけとなった主演作の大河ドラマ「独眼竜政宗」(1987年、NHK総合ほか)や、同じく主演したドラマ「仕掛人 藤枝梅安」(1991年ほか、フジテレビ系)など時代劇にも多数の出演経験があり、所作はお手のもので古き日本の精神も十分になじみがある。
それを携えた上で、ハリウッドスターであるトムの隣で放った圧倒的存在感、重厚感のある演技は、目を見張るものがあった。
■話題になったハリウッド版ゴジラ
そこから日本の作品にも出演しつつ、海外作品の出演も重ねていく。「バットマン ビギンズ」(2005年)、「SAYURI」(2005年)、俳優でもある巨匠クリント・イーストウッドが監督した「硫黄島からの手紙」(2006年)、レオナルド・ディカプリオと共演した「インセプション」(2010年)など、ハリウッドでの地位を確かなものに。主演や物語において重要な役ばかり任されるようになった。
その中には、日本発の映画キャラクターでもある架空の怪獣・ゴジラのハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」(2014年)も。「ラスト サムライ」への出演を機に英語が堪能になっていた渡辺は、「GODZILLA~」での生物科学者の芹沢猪四郎博士役も流ちょうにこなしているが、ゴジラを英語発音の“ガッジーラ”ではなく、渡辺のこだわりで日本語のまま“ゴジラ”と言ったことは、日本を大切にしていることが感じられて日本ファンも喜んだところだ。
■“世界の渡辺謙”であり続ける高い演技力
その「GODZILLA ゴジラ」でメガホンをとったギャレス・エドワーズ監督は、再び自身の手掛けた映画「ザ・クリエイター/創造者」(2023年)に渡辺をキャスティング。人類とAIの戦争が激化する近未来を舞台にしたSF作品で、渡辺はAI軍の指揮官的存在となるAIシミュラント(模造人間)のハルンに扮(ふん)している。正面からみれば人間そのものに見えるが、後頭部は機械があらわとなっているキャラクター。鋭いまなざしや肌質までもがまさに人間そのもので、渡辺扮(ふん)するハルンと瓜二つに見えるスタチューは“謙ドロイド”と呼ばれて公開当時話題になり、ジャパンプレミアにも“登壇”した。
劇場公開されるにあたって制作された特別映像で、エドワーズ監督は渡辺について「渡辺謙は素晴らしい俳優だ。彼を撮影すると“これが撮りたかった映画だ”と感じる」と絶賛。ゴジラの大ファンで日本に親しみを持っているエドワーズ監督ではあるが、自身の大切な結晶である映画作品を託せる信頼感をその言葉から読み取れる。
「GODZILLA ゴジラ」で見せた、せりふがなくともうなずくだけで醸し出される重み。「ザ・クリエイター/創造者」での画面を引き締める存在感と、英語でも分かる説得力ある言い回し。またこの2作だけでなく、日本作品も含めて感じられるのは、目の演技のすごさだ。喜怒哀楽をすべて表現しうる眼光。相手役に投げ掛ける視線で表す心情、見つめる先を想像させる力。渡辺がスクリーンで発揮する存在感は、せりふだけに感情をのせるのではなく、そんな一瞬でも読み取れる“目”に宿った感情にもよるのかもしれない。それは母国語ではない言語で演技ができるということとは別に、演じている役、物語について世界に発信できるという俳優として大きな武器であり、魅力だ。ハルンという模造人間でも趣あるキャラクターに仕上げてしまう。
■2025年の大河ドラマへの出演も決定
2015年にはアメリカのブロードウェーで開幕したミュージカル「王様と私」で本場キャストばかりの中で主演の1人になって世界の舞台ファンも魅了した。海外作品ばかりでなく、2025年1月スタートの大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK総合ほか)と、東京・天草・イタリアを舞台に大人のヒューマンラブストーリーを展開するドラマ「TRUE COLORS」(NHK BSP4K、NHK BS)、そして李相日監督、吉沢亮主演の映画「国宝」(2025年予定)の公開も控える。年齢など関係なく、俳優としてますますの活躍を続ける渡辺が、これからも日本と世界のエンターテインメントをけん引してくれるに違いない。
映画「ザ・クリエイター/創造者」は、ディズニープラスのスターで配信中。ちなみに、日本語吹替えバージョンでは渡辺の役も日本の声優・森川智之による吹替えになるので、音声言語を英語に設定すると渡辺の英語の表現も堪能できる。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
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