腕時計投資家の斉藤由貴生です。
私は、昔からモノを買うときに、必ず残価率を考えているのですが、そうすることによって「高いモノ」を買っても「実は大丈夫」ということに気づきます。現在世の中で当たり前になっているとはいえ、クルマなどはその最たる例。残価設定ローンという買い方はメジャーだといえます。
残価設定ローンは、将来の価値を算出して、月々の支払額を減らすといった内容。「購入額-将来の価値=実際の支払額」とすれば、月々の支払いを減らせるわけで、より高級なクルマに乗ることが可能なわけです。
そして私は、「購入額-将来の価値=実際の支払額」という考え方をありとあらゆることに実施。特に腕時計の場合、実際の支払額がプラス、つまり儲けになるということを狙ったりしています。
そんな私でありますが、この5年、「残価」ということ以外の買い方を実験してきました。というのも、腕時計とは違い、クルマを買う場合に「残価を気にする」ということを重視していると、買える車種が限られてしまうからです。私は、もっと自由に自分が好きなクルマを買って楽しみたいため、どうすればいいか、と考えた次第であります。
残価と同様に検討したい維持費
クルマに安く乗るためには、どういったことをする必要があるかというと、「残価」に加えて「整備代」の安さが需要であります。残価についてですが、既に価値が0円に近い状態となっている車種であれば、残価率をあまり気にする必要はありません。また、維持費については国産高級車であれば壊れる可能性が低いため、整備代はあまりかからない可能性があります。
これまで私は、ロールスロイスから日産マーチまで、様々な中古車を売り買いしてきましたが、「安い本体価格」「かからない整備代」という買い方の最終形態が、2017年に購入した「38万円のセルシオ」でした。
そして、今回発表するのは、その「38万円のセルシオ」の次のステージであります。
W140を惜しげもなく整備してみた結果
私は、2019年にW140型メルセデス・ベンツS500Lを購入し、現在に至るまで、惜しげもなくありとあらゆるところを「良く」してきたのですが、現在のW140の状態は、世界的に見ても稀なレベルでの超極上車になったといえます。
W140という車種は、1991年にデビューしてから1998年に生産終了になったわけですが、こういった世代は現在「ヤングクラシック」と呼ばれています。現在のクルマとは違った雰囲気が、今では逆に新鮮に感じられるわけですが、多くの人は「魅力的」と思ったとしても、実際に買おうとは思わないはずです。というのも、こういった古いベンツを買ったら「いかにもお金がかかりそう」となるからでしょう。
さらにその「お金がかかる」という部分は、まさに整備代。クルマは、いくら整備代をかけたとしても、その価値は“ほぼ上がらない”といえるため、多くの人は「整備代」をかけたがりません。さらに、整備代は万円単位と高額である場合が多いため、愛車に不具合が生じると、それをきっかけとして「乗り換える」という人が多いのだと思います。
実際、私も2005年から2018年に至るまで「整備代がかからない」ということを最も重要視していました。その間、購入した中古車としては、日産レパードJフェリーが購入額プラス10万円で売れたという成功事例がありますが、もしも整備代がかかったならば、その10万円はパーだったと思います。
そんな私は、2019年に購入したW140から「整備代をかける」という方針に転換。なぜそうしたかというと、先程も述べたように残価を気にすると好きなクルマに乗れないからです。また、もう1つ重要な点として、結局クルマはそれなりに維持費がかかるという結論になったからです。つまり、どんな乗り方をしたとしても、月額換算で2万円、3万円といった金額がかかるのは仕方がないのであります。
また、多くの人はクルマに対して3万円以上かけていることだと思います。推測ではありますが、メジャーな買い方は、『新車もしくは新しい年式の中古車を買って、ローンで乗る』ということでしょう。おそらく、軽自動車であれば2万円~3万円程度、普通車ミドルクラスで6万円程度、高級車で10万円~15万円程度といった月々の支払額となっているかと思います。
そうすると、W140のようなヤングクラシックを買った場合、一体月々の支払額がいくらになるのか。もちろん、整備をしないでケチって乗ることもできるでしょうが、惜しみなく整備をして「大満足な状態」で乗った場合、どのような月々の支払額になるのか、私は興味を持ってしまったのです。
そして今、ほぼ完成形に近づいているW140。それに、かかった金額が算出できたため、今回、それを公開したいと思います。
ちなみに、W140に限らず、ヤングクラシック世代は、マイナス方向への価値変化が少ない車種が多いため、残価率という観点では新しい年式のクルマよりも有利。ただ、古いクルマであるため「整備代」が未知数だから多くの人は手を出したくないのでしょう。それを今回可視化した次第であります。
W140 2019年⇒2024年の整備代合計
2019年:62万5241円
2020年:23万9500円
2021年:115万2763円
2022年:36万7580円
2023年:61万3730円
2024年(現在まで):30万7151円
合計:330万5965円(自動車税、車検法定費用、保険代等は入れず)
⇒月額換算 4万9343円
ということで、結論は「月額4万9343円」でした!
ちなみに、私が買ったときよりもW140相場は値上がりしていることと、これだけ整備したため、本体価値に若干のプラス作用が発生しているため、残価についてはプラス状態。月額費用はイコール整備代として構わないといえます。
この「4万9343円」という月換算の支払額は、国産車の売れ筋車種を新車ないしは、新車に近い年式の中古車をローンで買った場合にかなり近い数値だといえます。
ミニバンの新車と“ほぼ同額”の月の支払い
先ほど、国産の売れ筋ミニバンを残価設定ローンでWEB見積もりしたところ、月額は4万7200円という結果になりました。
W140は惜しげもなく整備したとしてもそれと国産ミニバン(5ナンバーサイズ)とほぼ同じ月々の支払い費用で済んでいることになります。多くの人にとって恐れられる「高い整備代」ですが、蓋を開けてみると整備代をかけたとしても、売れ筋の新車と同じ額で乗れる、ということが分かったのです。
私は、約5年をかけてこのような実験をしてみたわけですが、「惜しげもなく整備してみる」という実験結果はあまりないため、これは貴重なデータだと思っています。
ということで、残価を見極めて買うプロが、あえて整備代を費やしてみたら、その先には幸せが待っていたという結論になりました。
最後に、これまでのW140の整備内容を以下に記します。
【2019年】62万5241円
アキュームレーター交換(CORTECO)
オイル交換(10W40モービル)
オイルフィルター
2年点検費用
ロアアームブッシュ交換
リアボールジョイント
ステアリングギアボックスオイル漏れ修理
プラグ交換
ブレーキフルード
リア左右窓レギュレーター交換
ブロアファン注油
ラジエターキャップ
ウォーターポンプ(純正)
サーモスタット(純正)
冷却水
コンパニオンプレート交換(純正)
エンジンマウント交換(lemforder)
ミッションマウント交換(純正)
アライメント調整(前輪のみ)
オイル交換(10W40モービル)
タイヤフォースマッチング(HUNTER GSP9700使用)
ワイパーゴム交換(純正)
ミラー割れ(ぶつけられて相手方保険で修理)
ライトスイッチ交換(純正)
デフオイル交換
【2020年】23万9500円
スタビライザーブッシュ交換(社外)
オイル交換(10W40モービル)
オイルフィルター
メーター電球交換4個
ATF交換(カプラー同時交換)
デフ中古部品購入
中古デフ オーバーホール⇒載せ替え
ヘッドライトバルブ右交換
エンジンマウント交換(純正)
【2021年】115万2763円
オイル交換(10W40モービル)
ヘッドライトバルブ左交換
サブフレームブッシュ交換(純正新品デットストック)
2年点検費用
リアブレーキパッド交換(純正)
ブレーキフルード
アイドラアームブッシュ交換
ステアリングダンパー(社外品)
リアサスペンション右側交換(SACHS)
ワイパーゴム交換(純正)
エアコンフィルター(純正 3万円!)
運転席シート座面交換(純正新品デットストック)
アライメント四輪調整
内装クリーニング(社外ナビ跡 完全除去)
ヘッドライト内側洗浄
ランバーサポート交換
センターコンソールミラースイッチ修理
ドアミラースイッチ交換
オイル交換(10W40モービル)
オイルフィルター
ブロアモーター交換(中古品)
ブロアレギュレーター交換(中古品)
エアコンREST固定 配線修理
ドラレコ本体購入&取り付け(ヤナセ 前後タイプ)
外装コーティング(GT-C)
ホイールコーティング
ウィンドウコーティング
エアマスセンサー交換(BOSCH本物 偽物に注意)
【2022年】36万7580円
前後ブレーキキャリバー オーバーホール
前後ブレーキローター交換(純正)
前後ブレーキパッド交換(Akebono EURO)
前左右ショックアブソーバー交換(ビルシュタイン)
オイル交換(10W40モービル)
オイルフィルター
バッテリー交換(HELLA)
ドアロックバキュームポンプ配線修理
エアコンガス入れ替え(ACS751使用)
【2023年】61万3730円
リアサスペンション左側交換(SACHS)
サーモスタッド交換(純正)
2年点検費用
ミッション脱着
ATトルコンリビルト
722.6 ATフル オーバーホール(純正OHキット使用)
プロペラシャフトセンターマウント(純正)
プロペラシャフトセンターブーツ(純正)
センターベアリング(純正)
プラグ交換
ヘッドカバーガスケット左側交換(純正)
アライメント リア調整
ラジエターキャップ交換
右前ドア内張り交換(中古)
オイル交換(10W40モービル)
オイルフィルター
ウィンドウウォッシャータンク洗浄
ヘッドカバーガスケット右側交換(純正)
【2024年】30万7151円
ハブベアリングフロント交換
シフト周りブッシュ内装側交換
エアクリーナー交換
オイル交換(10W40モービル)
タイヤ交換(PremiumContact6 ユニフォミティ調整あり)
アキュームレーター交換(純正)
右前輪アライメント微調整
スペア用中古ホイール購入
スペア用タイヤ1本購入(リンロンCOMFORT MASTER)
スペア用タイヤ装着
<文/斉藤由貴生>
【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある
【関連記事】
・
ディーラー元営業マンがこっそり明かす「不人気新車を買わせるセールストーク」5選・
ディーラー元営業マンが「自分の車には絶対につけないオプション」5選・
800万円のポルシェをローンで購入した車好き女子。「意外と買えちゃう」月々の支払いは・
「高速道路の渋滞」を引き起こすメカニズム。“迷惑な先頭車両”を観察し続けた結果…・
ディーラー車検は本当に割高?「無知な客はカモになる」元担当者が明かす本音とメリット