ホアキン・フェニックス&トッド・フィリップス監督が『ジョーカー2』を振り返る「僕たちがやり遂げたと感じてもらえたらうれしい」

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックスとトッド・フィリップス監督にインタビュー!/[c] & TM DC [c] 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

ホアキン・フェニックス&トッド・フィリップス監督が『ジョーカー2』を振り返る「僕たちがやり遂げたと感じてもらえたらうれしい」

10月20日(日) 14:30

全世界に衝撃を与えた『ジョーカー』(19)の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(通称『ジョーカー2』)が公開中だ。シビアな人間描写や容赦ない暴力で話題を呼んだ前作に続く本作は、ジョーカーことアーサーとミステリアスな女性リー(レディー・ガガ)のロマンスを軸に展開。前作同様、観る者の予想を覆す問題作に仕上がった。前作に続き徹底した役作りでアーサー役に臨んだホアキン・フェニックスと監督・共同脚本を務めたトッド・フィリップスが作品やキャラクターに込めた思い、映画の舞台裏を明かした。
【写真を見る】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックスとトッド・フィリップス監督が語る「いま世界に必要なのは愛」
世界を巻き込んだ、ジョーカーの新たな事件の幕が開く


■「温もりやロマンスを感じたアーサーは、自分自身と自らの行動を振り返るようになる」(フェニックス)

前作を撮り終えたあと、このキャラクターで伝えられること、探求できることがまだあると語ったフェニックス。それはアーサーに対する疑問だという。「アーサーは、これから彼の身になにが起こるのか、物語はどこに行くのか知りたくなるキャラクターなんです。そして最終的に、1作目の出来事のあとで彼は何者になるのか、その疑問に答える必要があるという考えに落ち着きました。1作目のキャラクターの旅路を尊重しつつ、新しいなにかを見つけることが重要でした」と振り返る。「彼はアーサーなのか、それともジョーカーなのか?もっとも彼らしいのはどちらか、それを受け入れることができるのか?」それこそが本作で探求したことだと語った。
社会への反逆者、民衆の代弁者として祭り上げられたジョーカーの暴走がさらに加速していく


音楽が重要な役割を果たしている本作。気持ちを歌にしたアーサーを演じたフェニックスにとって音楽はどんな役割を果たしたのだろうか?「前作を終えた時にふと、もしジョーカーに乗っ取られたら、アーサーはどうなるんだろうかと思いを巡らせたことがありました。ジョーカーを生みだしたことで、猫背で自分の殻に閉じこもり、誰からも耳を傾けてもらえなかったアーサーは、世間の注目を集める存在になりました。その名声や悪名が、いったい彼にどのような影響を与えるのだろうか、と。今回は出会いが生まれ、温もりやロマンスを感じたアーサーは、自分自身と自らの行動を振り返るようになるんです。ステファニー(ガガ)のおかげで、彼は新しい声を見つけることができたんです」といい、歌を通してキャラクターの変化を表現したという。

「ジョーカー」シリーズを通し、アーサーは女性たちから大きな影響を受けてきた。母親、同じアパートに住むシングルマザーのソフィー・デュモン、そして今作のリー。アーサーにとって彼女たちはどんな存在なのかを聞いてみた。「アーサーは母親から暖かさや安らぎ、愛情を一度も受けたことがありません。控えめに言ってもかなり問題がある関係でした。ソフィーは単なるファンタジーです。彼女はアーサーに対し、エレベーターで微笑むという親切なジェスチャーを示しました。ところが彼はそのサインを完全に誤解してしまうんです。 しかしリーとアーサーはほとんど対等でした。最終的に、リーが最も影響力を持っていたと思います。彼女はアーサーを最もコントロールした女性ですから」とその存在感を語った。
リーと出会ったジョーカーはもう1人じゃない?


■「ジョーカーは多くの人にとって大きな意味を持ち、エンタテインメント全体に大きな影響を与えてきたキャラクター」(フェニックス)

続編の製作にあたってトッド・フィリップス監督は「ホアキンには前作と同じような怖さが必要だった」と語った。フェニックスが前作で抱いた恐怖とは、DCを代表するキャラクターを演じることだった。「ジョーカーは多くの人にとって大きな意味を持ち、映画というメディアに限らずエンタテインメント全体に大きな影響を与えてきたキャラクターです。僕が演じるずっと前から、すばらしい役者たちがそれぞれの解釈で演じてきました。そのことが僕にとって神経をすり減らす原因でした。僕が演じてきたキャラクターは、ほとんどがオリジナルのキャラクターで、僕がそれをどう演じるか誰も知りません。この役はこうあるべき、という先入観がないんです。しかしジョーカーでは、僕の演技は彼らと比較されるんです。それは僕にとって初めての経験で、とても不安を感じました」とフェニックス。ただしプレッシャーを受けるのは嫌いではないという。「恐怖ではありますが、同時に深く掘り下げて、なにかユニークなものを見つけなければならない、という気持ちになれるんです。今回は前作でトッドたちと発見し確立したものを尊重しながら新たな要素を創造し、キャラクターをさらに掘り下げ新しいなにかを発見できるのか、その旅だったといえるでしょう。観てくれた人たちが、僕たちがやり遂げたと感じてもらえたらうれしいのですが」と振り返る。
ジョーカー役を演じることに相当なプレッシャーがあったというフェニックス


テイストの異なる2本の作品でジョーカーを演じたフェニックス。『ジョーカー3』については未知数だが、このキャラクターを演じられたことについては特別な経験だと振り返る。「トッドとの仕事でこれまでにないユニークな経験ができました。これまで僕は『グラディエーター』を除けば、小規模な作品ばかりに出演してきました。陳腐な言い方になりますが、トッドと協力することで大きなキャンバスに、僕なりにアプローチする方法を見つけることができたんです。まるで気の置ける仲間たちと仕事をしているようでもあり、どんなことでも可能になるとすら思うことができたんです。それは本当にユニークな経験であり、そのような演技の経験ができる場に立てたことをとてもラッキーだと思っています。なぜならそれは、この世界で本当に稀なことだからです」。

■「彼の人生に愛が芽生えるなら、彼のなかにある音楽が外に出るのではないか」(フィリップス監督)
ホアキン・フェニックスとレディー・ガガによる生歌唱も見どころの一つ


前作の大成功により、その動向に世界中が注目した本作。トッド・フィリップス監督にとって、すべてのプロセスの核になったのが「どうすればまたホアキン・フェニックスと仕事ができるか?」だった。「前作で彼と話したことですが、アーサーは足が左利きで世間とずれているが、彼のなかには音楽があるということです。前作で彼がトイレで踊ったり、階段を降りてくる姿にそれを目にしたでしょう。2作目は、彼の人生に愛が芽生えるなら、彼のなかにある音楽が外に出るのではないか。そこからすべてが始まりました」と振り返り、音楽ありきの作品だったと明かす。

パンクロッカー、GGアリンのドキュメンタリー『全身ハードコア GGアリン』(94)で長編デビューを飾ったフィリップス監督。本作はそれ以来の音楽映画となるが、監督は音楽を最高のツールと呼ぶ。「衣装、セットデザイン、撮影などさまざまなパートが必要ですが、僕にとって最高のツールが音楽なんです。今回また音楽に傾倒したことは、本当にエキサイティングな体験だった」と満足そうに語った。そして注目を浴びた「これはミュージカル映画ではない」という発言にも言及。「僕はミュージカルを、ハッピーな気分で家路に着く映画と考えています。この映画は気分のいい映画ではないので、僕にとってこれはミュージカル映画ではないという意味なんです」と本音を語った。
ジョーカーメイクを施す謎の女性、リー


ヒロインとしてジョーカーの前に登場するリー。彼女を演じたレディー・ガガとは撮影にあたってどんな話を交わしたのだろうか?「僕たちはアーサーについてたくさん話し合いました。精神疾患について、不健全な人間関係についてです。彼女はテレビで目にしたアーサーに恋をするんです。まるでロックバンドに恋するような感覚で。リーは、アーサーはジョーカーだと思い込んでしまいます。そんなことをたくさん話し合いました」と役作りについて語ってくれた。

■「人間の二面性を語った本作では、横顔が役に立ってくれました」(フィリップス)

2019年公開の前作から5年、その間にパンデミックや米連邦議会議事堂への襲撃事件、戦争や侵攻もはじまった。それらの出来事は本作にも影響を与えたという。「物事がクレイジーになりすぎて、最初の予告編で伝えた“いま世界に必要なのは愛なのかもしれない”と本当に感じられたんです」とフィリップス監督。そして、あらゆる映画がなんらかの形で世相を映しだしていると前置きし、本作ではそれが腐敗だと明かす。「刑務所や看守、司法制度、そしてエンタテインメントの世界も同じ。プロレスの試合のように商売になった大統領選の討論会に意味があるのでしょうか?」と疑問を投げかける。映画の中で、法廷にやってきたリーの『エンターテイメントよ』というセリフはこのことを表しています」。
【写真を見る】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』ホアキン・フェニックスとトッド・フィリップス監督が語る「いま世界に必要なのは愛」


ハードな暴力描写が物議を醸した『ジョーカー』。精神病院や裁判所がおもな舞台となる本作にもバイオレンスの見せ場が盛り込まれている。映画における暴力描写についてフィリップス監督は責任を持って描いたという。「美化することなく、暴力とはこういうものだと責任を持って描いたからです。裁判のシーンで、アーサーが前作における殺人を目撃した男性を証人席で尋問した時、彼は恐ろしくて夜も眠れないと語ります。フィルムメーカーは、暴力がそれを目にした人に対する責任を理解する必要があり、僕たちはそれを理解して制作しています」とセンシティブな問題に答えてくれた。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は公開中


ヘビーな描写を満載した本作だが、同時にアーサーやリーたちキャラクターの顔立ちを美しく捉えた映像も強烈な印象を残す。特に横顔のカットへの執着が感じられたが、フィリップス監督のこだわりだった。「ストレートに平坦な顔を見せるより、横顔のほうが表情が豊かに感じられ好きなんです。僕の好みなんですね。ホアキンやステファニーはどの角度から見ても美しいのですが、特に横顔にはなにかがあると感じるんです」と明かすが、そこには別の意図も隠されていた。「この映画はアーサーとジョーカー、人間の二面性について語っています。素の自分と影の自分の物語には、印象的に使う横顔が役に立ってくれるのですよ」。

取材・文/神武団四郎


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