【写真】東京と富山を舞台にした美しい映像に魅了される
福原遥主演で、“居場所がない”と感じてしまう20代の若者の“今”を描いた社会派群像サスペンス「透明なわたしたち」(毎週月夜11:00-11:52、ABEMAで配信中)が10月21日(月)に最終回を迎える。希望にあふれた高校時代から10年が経ち、“なりたかった自分”とは違う今を生きる週刊誌ライター・中川碧(福原)がとある事件をきっかけに自分自身の今を見つめなおしていく本作。最終回を前に、当メディアが松本優作監督に取材した演出のこだわりや出演者への思いを交え、これまでの展開を振り返る。
■閉塞感漂う1話:「グレーゾーンがもっと大切」
本作は、映画『Winny』『ぜんぶ、ボクのせい』の松本優作が脚本と監督、映画『ヤクザと家族 The Family』『正体』を手掛ける藤井道人がプロデュースする、ABEMAオリジナル連続ドラマ。夢だった新聞記者ではなく週刊誌ライターとして働く中川碧(福原)は、日々ゴシップを追いかける毎日にやるせなさを感じていた。そんなある日、渋谷で身元不明の青年による凶悪事件が発生。碧は事件の犯人が高校の同級生ではないかと気づく。
そんな第1話は、どこかどんよりした閉塞感とともに幕を開ける。作品制作の経緯について、「プロデューサーさんから最初にいただいたのは、『富山と東京を舞台に青春群像劇を作りたい』、それから『今の時代に届ける作品を作りたい』ということでした。そこから、今の時代って何だろう、今の時代は白か黒かって決めつけてしまう時代なんじゃないか、グレーゾーンがもっと大切なんじゃないのか…という風にテーマが見つかっていきました」と松本監督。
さらに「『透明なわたしたち』という作品のタイトルとは真逆ですが、不透明なモヤっとした部分を作品にしたいなと思いながら作りました」とも。画面からも、その不透明なモヤっとした空気がそのまま漂ってくるようだ。だが、凶悪事件の発生によって碧のいる世界は大きく揺らいでいく。
■混沌の2話:碧は高校時代のある事件を思い出す
渋谷で起こった事件の犯人の特徴的なメイクを見て、高校最後の文化祭を思い出した碧。続く2話では、碧が「事件の犯人が同級生かもしれなくて…」と上司に掛け合い、事件を追い始める。かつての友人である梨沙(武田玲奈)と再会した碧は、高校時代のある事件を思い出す。
松本監督は、碧たちの世代ならではの感覚や感情を脚本に込めるため、脚本制作にあたり、ある工夫をした。「“チームライティングという形で、登場人物と同世代の若い脚本家に入っていただいて、実際に今感じていることを話し合ってもらって、すり合わせながら脚本をみんなで作っていきました」(松本監督)。こうしてできあがった脚本をもとに、キャスト陣との対話も重ね、よりリアルな20代の感情を作品に落とし込んでいった。
込めたいテーマに対してストイックにも思える制作過程。その座長として松本監督がタッグを熱望したのが、 連続テレビ小説のヒロインも務めた国民的女優・福原だ。
「少し重いテーマをたくさんの人に届けたいと思ったときに、最初に名前が挙がったのが福原遥さんでした。碧という役は、福原さんなら演じていただけるんじゃないかと確信がありました。ご一緒して、福原さんはすごく主演の器がある方だなと思いました。みんなを引っ張ってくれながら、気にかけてくれる。出番が一番多くて大変なはずなのに、そこを見せないところが素晴らしい」(松本監督)。
■真実が見え始めた3話:「それでも書くの?」
地元の仲良しグループのメンバーが犯人である可能性が高まる中、3話では、梨沙から「碧はそれでも書くの?」と問われた碧が高校時代のある事件を思い出す。仲良しグループの絆が壊れてしまった、あの事件…。碧が「私だからこそ書けることがあるんじゃないかな」と答えを出そうとした矢先、渋谷の事件の犯人が特定される。
1話から東京をメインにした現在パートと富山の回想パートで交互にストーリーが語られ、碧は3話で高校時代の“部室放火事件”にたどり着く。
そんな東京の現在パートと富山の過去パートは、演出面でも意識して違いを出していたそう。「過去のパートは暖色系のぬくもりある色合い、現在のパートは少し冷たいブルーの色合いで構成しました。音響も、東京は小さな場所にノイズがたくさんあるような、世界が広がらないイメージ、富山はもっと抜け感がある広がりを感じる音作りを意識しました」(松本監督)
さらに松本監督は、富山という土地にも作品とリンクするところがあったという。「富山って、曇りの日と晴れの日で全く表情が違うんです。どんよりとした曇り空は感情とリンクする部分があるというか。そういう風に景色を活かせる土地柄ってなかなかないと思います。それに、曇りだと立山連峰が全く見えなくて晴れだと見えるとか、そういった多面性が“物事をいろいろな角度から見ることで本質がわかってくる”という作品のテーマ性ともリンクした場所だなという思いで映像を作っていました」
■過去と向き合う4話:「伊藤健太郎さんは存在感が本当にすごい」
渋谷の事件の犯人を知った碧は、続く第4話で“犯人の同級生”の立場で記事を書き、評価を受ける。碧はさらなる記事を書くため、同級生たちに会い、その中で自暴自棄になった友人の一人から、部室放火の犯人は自分だと告白される。碧は当時、別の同級生を犯人だとする学校新聞を制作していた――。
群像劇である本作では、碧だけでなく彼女の5人の同級生たちがそれぞれの“居場所のなさ”に悩む過程も描かれている。
小野花梨は、東京で夢破れ地元に戻って結婚した一児の母・齋藤風花を演じる。松本監督は「小野さんは芝居が本当に素晴らしい。彼女とは5年前ぐらいにもご一緒したんですが、またレベルアップした小野さんを見ることができてすごくうれしかったですし、風花という役に自分の感情を近づける作業ってそうとう苦しかったと思うんですが、すごく頑張ってくださった」と絶大な信頼を寄せる。
女優志望だが恵比寿のクラブで働くホステス・桜井梨沙を演じるのは、武田玲奈。碧は梨沙との対話の中で、自分の中にある意思に気づいていく。松本監督は「武田さんは淡々と粛々と自分のやるべきお芝居に集中するというプロフェッショナルさを感じましたね」と語る。
順風満帆な渋谷のスタートアップ企業のCEO・高木洋介(倉悠貴)と、渋谷の片隅で闇バイトに手を染める男・喜多野雄太(伊藤健太郎)は、一見真逆の境遇。だが、それぞれ割り切れない思いを抱えて生きてきた。「伊藤健太郎さんは存在感が本当にすごい。そして、こちらのやりたいことを察知して具現化してくださる方。倉さんには、ほかの俳優にない唯一無二さがあると感じました」(松本監督)
そして、影の薄い同級生・尾関健(林裕太)がドラマのキーパーソンとして徐々に存在感を増していく。「実は尾関という役が裏の主人公ぐらい大切な役だったんですが、オーディションで林さんにお会いした時に、僕たちスタッフ満場一致で決まりました。撮影終わりの新幹線の中で、役をどうやったら掘り下げられるかをすごく話し合ったり…。難しい役どころを本当にしっかりやってくださったなと思いますね」。23歳で同級生役のキャスト陣の中では最年少の林が、重要なキャラクターを演じきった。
■5話、そして最終回へ――「本当の意味で大人になっていく」
5話では、渋谷の事件の犯人について記事を書こうとする碧は調べれば調べるほど犯人の輪郭がぼやけていく感覚に襲われ、頭を抱える。そして同じ頃、喜多野や高木も自身の境遇にどんどん追い詰められていて…。
主題歌は、幾田りらが書き下ろした「Sign」。“透明なわたし”を歌う歌詞がドラマの世界観と重なり合って、胸に突き刺さる。「幾田さんに脚本と撮影済みの映像をお渡しして、等身大の生田さんご自身が感じたことを曲にしていただきたい、とだけお願いをしました。いただいた楽曲は、本当に素晴らしくて。主題歌がこの作品をより豊かなものに曲がしてくれた、とまず感じました。幾田さんご自身がこの10年で感じたことを楽曲に落とし込んでくださったという話もお聞きして、僕が思っていた以上に作品に向き合って作ってくださったことが本当に伝わりました」と松本監督。
10月21日(月)放送の最終話(第6話)では、碧が犯人と面会室で向かい合う。そこで初めて過去の真相を目の当たりにし、立ち尽くす碧。「いまの私たちに何ができるのだろうか」。悩んだ碧が出した答えとは――。
最終話の見どころについて、松本監督は「渋谷事件の本当の犯人を知って、碧がどういう記事を書いていくのかがメインストーリーになっていきます。それは碧自身が自分と向き合っていく作業、自分の醜いところに気づいていく作業にもなっていく。彼女自身がそれを受け入れた先に 自分の言葉として何を出すのか。受け入れて、どうやってこの先進んでいくのか。最終回は、彼らが本当の意味で子供から大人になっていくってどういうことなのかが描かれます。でも、難しく考えず気楽に見ていただきたいです」と語る。
碧と仲間たちは、葛藤を乗り越えてそれぞれどんな“居場所”にたどり着くのだろうか。
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