2024-25 大同生命SVリーグ女子の開幕戦。男女のリーグ戦が並行して行われる点はプロスポーツとしては画期的だ
男子スポーツの勢力図に変化の兆しが現れてきている。今夏のパリ五輪で、48年ぶりのベスト4入りを賭けて挑んだイタリア代表との熱戦が感動を呼んだ男子バレーの注目度が「急上昇している」(スポーツ紙記者)というのだ。
男子スポーツでは、「サムライ・ブルー」の愛称で知られるサッカー日本代表が根強い人気を誇ってきたが、その〝王様〟男子サッカーに男子バレーの注目度が肉薄。インターネットの台頭で視聴率の下落傾向に歯止めがかからないテレビ業界も、「男子サッカーに代わる視聴率回復のための起爆剤」として、過熱するバレー人気に便乗しようとする動きも出ているという。
■民放各社から熱視線
「今後、テレビのドル箱コンテンツになる期待が高まりました」
こう鼻息を荒げるのは、ある民放テレビ局の関係者だ。
10月11日に開幕戦が行われたバレーボール「SVリーグ」は日本バレーボールのトップリーグ「Vリーグ」を前身とし、今年創設されたセミプロバレーボールリーグだ。
「『世界最高峰のリーグを目指す』をコンセプトに、これまでのVリーグを再編成。将来の完全プロ化を視野に立ち上がったのが、SVリーグです。バスケットボールのプロリーグ『Bリーグ』の創設にもかかわった大河正明氏を代表理事に迎え、男子10、女子14チームが優勝を目指して戦う。運営側は、2027年までに野球、サッカー、バスケットに続く完全プロリーグを目指しています」(前出スポーツ紙記者)
国内では、「東洋の魔女」の異名を取る快進撃を見せ、1964年の東京五輪で金メダルを獲得する躍進を遂げて以来、女子バレーの人気が先行してきたのは周知の通り。SVリーグは安定的な人気がある女子と男子、双方でリーグ戦が行われる点で、他のプロスポーツと一線を画している。
「女高男低」の傾向が強かった、れまでのバレー界の歩みがリーグ編成にも関係しているというわけだが、「10・11」のリーグ開幕で注目されていたのは、「むしろ女子バレーよりも男子バレーのほうだった」(同)という。一体、どういうことか。
「SVリーグは、東京体育館で行われた男子開幕戦のサントリーサンバース大阪vs大阪ブルテオン戦を、フジテレビが午後6時50分から午後8時54分の枠で地上波生中継しました。かつてはゴールデン帯の常連だったプロ野球中継もほとんど放映されなくなった中での生放送は異例のこと。これを機に、今後の男子バレーの人気が一気に盛り上がる可能性も出てきています」(前出の民放関係者)
サントリーサンバーズ大阪所属の高橋藍選手。SVリーグ人気を牽引する存在だ
開幕戦で激突した両チームにいる花形選手の存在も大きい。
サンバースにはインスタグラムのフォロワーで登録数300万人が目前になった超人気者の髙橋藍(らん23)が加入。ブルテオンにはパリ五輪まで女子日本代表の主将だった古賀紗理那さんの夫・西田有志(24)というサウスポーエースが所属しており、トップクラスの男子代表コンビが日本のコートで激突するカードだった。
「今夏のパリ五輪では男子代表が48年ぶりのベスト4入りを逃しましたが、イタリアとの準々決勝(8月5日)の生中継では試合開始が午後10時からだったにもかかわらず、平均世帯視聴率が23.1%(ビデオリサーチ調べ。関東地区)を記録し、これが結果的にパリ五輪の日本人出場種目でNO・1の視聴率でした。日本バレーボール界でこの人気にあやかろうと"最後の改革"に乗り出したのがSVリーグなんです」(前出のスポーツ紙記者)
パリ五輪での飛躍もあり、男子バレーボール日本代表は最新の世界ランクで6位につけている。すでにパリでの実績もあることから、開幕戦の放送権を巡り「フジテレビとTBSが地上波放送権の争奪戦が繰りひろげ、長年バレー中継の功績があるフジテレビに軍配が上がった」(夕刊紙記者)という。
さらに、「配信に押され気味の民放地上波にあってCM枠があっと言う間に"完売"した」(同)というから、フジテレビ側は高笑いが止まらないといったところだろう。その額は非公開とされているが、ゴールデンタイムにもかかるとあって、億単位の売り上げであることは間違いない。
■異例の注目度に転売ヤーも跋扈(ばっこ)
さらに、「SVリーグの男子開幕戦の入場チケットに関しては、空前の争奪戦が繰り広げられ、コートサイド1列目が定価1枚・8万円という高額にも関わらず、倍以上の1枚・17万円という破格値で転売されました。チケットを入手できなかった多くのファンが、テレビ観戦になだれこんだと思われます」(前出の民放関係者)とのことだ。
一方、男子バレーの開幕戦の4日後、15日に行われたのが、サッカーW杯アジア最終予選。「目標はW杯優勝!」を掲げる森保ジャパンは、これまで2戦2勝で、森保一監督も「前回の最終予選の総ゴール(12ゴール)と並んだ」と自画自賛する好スタートを切った。
W杯アジア予選の2次予選から9試合にわたり、相手に一度もゴールを許していないことが海外メディアから「偉業」と称えられている森保ジャパン。国内でも今以上の盛り上がりを見せてもよさそうだが...
ところが、である。好成績を挙げているのとは対照的に、視聴率では苦戦続きで、往時のような盛り上がりには至っていないというのが実情なのだ。
「日本代表が強すぎる上に、最終予選では1試合2億円以上と言われる地上波生中継の放映権を『黒字』にできる民放地上波はどこもなく、海外で行われるアウェーでの予選試合については、地上波での放送が一切行われなかったのです。
これは日本代表がW杯出場を決めてから初めてという異常事態で、今年4月には日本サッカー協会(JFA)のトップになった、『ツネさま』こと宮本恒靖会長が『JFAが何もしていない訳ではない。多くの方に見ていただけるように地上波での放映権契約が結べるように努力をしている』と異例のメッセージを発したほどです」(前出の記者)
いわば、10月の男子バレーVS男子サッカーの視聴率合戦は、今後のスポーツコンテンツの人気度を図る上での試金石だったというわけだ。
「SVリーグ男子開幕戦は、放送前から話題になっていたこともあり、注目度の上では森保ジャパンを凌ぐ勢いを見せていた。今後もこの勢いを維持すれば、バレーボール人気に拍車がかかるだけではなく、民放地上波でバレボールの中継が増える可能性も十分あります」と前出の民放関係者は語る。
にわかに勃発した男子スポーツの覇権争い。果たして勝者は...。
文/高倉仁作写真/日本バレーボール協会、サントリーサンバーズ公式X、高倉仁作
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