10月2日より開催されている第29回釜山国際映画祭(以下BIFF)。開幕式に先駆けて行われたレッドカーペットでは、名実ともに韓国映画界を盛り立てるトップスターたちがドレスアップして集結した。
BIFFオープニングセレモニーのMCを務めたアン・ジェホンとパク・ボヨン
■シンプル、ゴージャス、カジュアル…着こなしに感じる俳優の個性に感嘆!
熱烈な拍手で迎え入れられたのは、今年MCを務めたアン・ジェホンとパク・ボヨン。アン・ジェホンはフォーマルに決めたタキシード姿が凜々しい。今年は「アクターズ・ハウス」で観客との深いトークを交わしたパク・ボヨンは、黒のレースを使ったタイトドレス。ところどころ透け感がありつつとても上品。
そして、ひときわ目を引いたのがイ・ジョンジェ。落ち着いたブラックスーツに胸元のビジューがゴージャスでどことなくフェミニンな印象だ。一昨年は『HUNT』(22)で監督デビュー、今年は12月26日に「イカゲーム」シーズン2が配信開始など話題に事欠かない。開幕式の間はキム・ソンス監督の隣に座り、『City Of The Rising Sun』(99)以来の強い絆を証明した。
『Traveller’s needs』からは、ハ・ソングクとキム・スンユンが登場。すっかりホン・サンス作品の住人となった2人。カジュアルなジャケット姿のハ・ソングクと、ナチュラルな質感のホルターネック風ワンピースのキム・スンユン。映画と同じくミニマルなスタイルで統一してきたようだ。
『Method Acting』からはイ・ギヒョク監督、キム・ドンヒョンプロデューサー、イ・ドンフィらが登場した。映画やドラマ、バラエティで見せる表情とは異なり、右分けにしたヘアスタイルがクールさを演出している。
割れんばかり拍手のなか登場したのは、『You Are the Apple of My Eye』のキャスト陣。台湾映画『あの頃、君を追いかけた』(11)の韓国版リメイクで主演を務めるジニョンはタキシード、TWICEとしても活躍中のダヒョンはすっきりとしたまとめ髪にサテン素材のオフホワイトドレスで眩しく登場した。
今年のBIFFでは、昨年急逝した故イ・ソンギュンを追悼し、彼の功績を称えるスペシャルプログラム「In Memory of Lee Sun-kyun」も行われた。『パラサイト 半地下の家族』(19)、「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」第5話、『Land of Happiness』、『最後まで行く』(14)といった4作品のうち、『最後まで行く』でパク刑事を演じたチョ・ジヌンがレッドカーペットへ。観客からの熱いコールに反応するなど、ファンサービスもバッチリ。
Midnight Passion部門『Ghost Train』からは、タク・セウン監督とともにチュ・ヒョニョン、チョン・ベスらが登場。“ウ・ヨンウファミリー”として知られたチュ・ヒョニョンとチョン・ベスが初めて挑戦するホラー映画として期待を集めている。裾の長いエレガントなドレスだが、深いスリットの入ったホワイトドレスで大胆に足を見せるチュ・ヒョニョン。コメディエンヌも今日はすっかりレディの装いに。
話題のOTT新作シリーズをいち早くお披露目するOn Screen部門。「Dongjae, the Good or the Bastard」からはパク・ジョンホ監督、イ・ジュニョクとパク・ソンウンが姿を見せた。クールなブラックコーデのイ・ジュニョクと、フォーマルなタキシードが体格が良さを引き立てているパク・ソンウンは、それぞれの個性で会場を魅了。
「Gangnam B-side」のパン・ヌリ監督、プロデューサーのハン・ジェドク、キャストのハ・ユンギョンとチョ・ウジンとチ・チャンウクが登場すると、会場からは黄色い歓声が上がった。エアリーな質感のドレスがハ・ユンギョンの自然な美しさを際立たせていた。
■坂口健太郎、有村架純、松重豊、黒沢清…日本勢にも歓喜の声!
韓国では近年、日本映画やコンテンツの人気がこれまで以上に高まっている。「さよならのつづき」からは、ダブル主演を務める坂口健太郎と有村架純が揃って登場。ブルーのシャツにジャケットのラフなスタイルながらクリーンなスタイルの坂口健太郎と、胸元に切り返しがあるキャミソールワンピースの有村架純の飾らないスタイルにより好感が沸く。
日本とフランス、そして韓国を舞台にした『劇映画 孤独のグルメ』(2025年1月10日公開)は、BIFFオープンシネマ部門でワールドプレミアとなった。晴れ舞台の直前、busan X the skyでのインタビューに応じた監督と脚本と主演を務める松重豊は、テレビ東京というローカル局でスタートした、小さな座組から始まったこの番組が途方もなく広まったことを感慨深げに明かしていた。初めて釜山を訪れたのは「孤独のグルメ 2019大晦日スペシャル」の回で、その時に食べたのが“ナッコプセ(タコのピリ辛炒め)”だった。
「海を越えるというのは1つのテーマだったんですが、福岡とは全然違うんだよね」と、出身地の福岡との違いにも話しながらも、釜山の印象を「2019年はコロナ前で、『こんな近かったらしょっちゅう来られるよね』なんて思っていました。素朴な漁村かなって思ったら大都会、でも一歩裏路地へ入れば福岡みたいに味わいあるのどかな店が多いんですよね。今朝も、ちょうどロケ地になった海雲台をウォーキングしていたら、おばちゃんが魚を捌いていたりしていました。自分は海から離れられないんだなって思いました」と、不思議な親和性のある釜山に好印象を抱いているようだった。
レッドカーペットでは、自身のカメラを携え、作品にちなみ何かを食べながら入場。タキシードでビシッと決めたスタイルと“モグモグタイム”のギャップに観客は大いに湧いた。
今年のアジア映画産業と文化発展に最も著しい活動を見せた人物に授与する「今年のアジア映画人賞」に選ばれた黒沢清監督もレッドカーペットに姿を見せた。『蛇の道』(24)と『Cloud』(24)と2作品が招待されている巨匠のコーディネートはオールブラックで、ナチュラルながらも風格を感じさせる。観客とはGVのほか、BIFFの人気イベントであるマスタークラス「KUROSAWA Kiyoshi: At the forefront of genre cinema」でも交流した。
■期待の新人、ノ・ユンソからベテラン女優キム・ヒエ、ラストを飾った『戦と乱』チームまで!
短編小説を題材にしたオムニバス『The Killers』のキム・ジョングァン監督とノ・ドク監督、チャン・ヒョンソン、シム・ウンギョン、ジウ、プロデューサーのソン・ヨンシンが姿を見せた。それ素姿のスターが多い中、シム・ウンギョンはグリーンを基調にしたセットアップにブーツと快活な印象だ。
『Hear Me:Our Summer』からはチョ・ソンホ監督とノ・ユンソ、IZ*ONE出身のキム・ミンジュが登場した。過去のドラマでは活発で今どきの高校生というキャラクターだったノ・ユンソだが、この日は美しいロングヘアとオフショルダードレスでひときわ輝いていた。
『A Nomal Family』はホ・ジノ監督に加え、チャン・ドンゴン、キム・ヒエ、スヒョンらが登場。キム・ヒエは、ホワイトドレスで落ち着いた“大人スタイル”。対して軽やかな素材ながら胸元を大きく見せるセンシュアルなスタイルのワンピースを着こなすスヒョン。
『Bogota: City of the Lost』からレッドカーペットに登場したのは、キム・ソンジェ監督とイ・ヒジュン、クォン・ヘヒョ、ソン・ジュンギ、パク・チファン、キム・ジョンス。いつ見ても若々しいソン・ジュンギが、『ロギワン』『このろくでもない世界で』に続き本作でもシビアな世界観の作品に挑む。
ラストを飾ったのは、オープニング作品『戦と乱』のキム・サンマン監督、カン・ドンウォン、パク・ジョンミン、キム・シンロク、チャ・スンウォン。カン・ドンウォンはえりだけ違う質感のベルベットのタキシード、パイピングを施したチャ・スンウォンのジャケットもユニークだった。
取材・文/荒井 南
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