10月18日(金) 20:00
Text:谷岡正浩Photo:吉田圭子
『永井真理子 Special Live 2024 〜君が光を照らす〜』と題してEX THEATER ROPPONGIで開催された永井真理子のワンマンライブは、2部構成でゲストあり、さらには事前にファンから募ったリクエストをセットリストに反映するなど、まさにスペシャルなものとなった。ソールドアウトとなった会場は、開演前から独特の熱気に包まれていた。この日のライブが今年最後に開催するものだということはもちろん、彼女のこれまで培ってきたキャリア――特に2017年の復帰以後の活動において、ひとつの節目となる重要なライブだということをそこにいる誰もが理解していた。それは、冒頭の選曲にもよく表れていた。ノリのいい派手目なナンバーを1曲目に持ってくるのではなく、言葉とアンサンブルに重点を置いた、いわゆるじっくりと聴かせるタイプの楽曲でこの日のライブは幕を開けた。
1曲目が「うた」。〈うたってあげるよ 輝きがギュッとあふれ続けてゆくように〉と確かな決意を滲ませ、続く2曲目は「未来」。この曲が収録されたアルバム『そんな場所へ』(2002年)のリリース後、オーストラリアへ渡ったことを考えると感慨深い。ここから始まった未来が確かにあって、それが現在であり、そしてまた新しい未来へつながっていく――そんな彼女の思いが感じられた。
そこから3曲目「好奇心」(1990年)という流れには、集まったファンも完全に心を掴まれた様子。特筆すべきは、年代問わず、どの楽曲もきちんとアップデートされたものになっており、そのあたりも含めて、“永井真理子の今”を、その長いキャリアを横断しながら感じることができた。「やっとこの日が来ました! 今日はSpecial Liveなので私がやりたいことをたくさん詰め込んだ、お楽しみ袋みたいなライブになると思います」そして、たくさん寄せられたリクエストのコメントを紹介しつつ、リクエストが多かった「さよならの翼」「レインボウ」を披露した。
MCを挟んで、このライブでお披露目の約束をしていた新曲をパフォーマンスした。「Rest in Peace」とタイトルがつけられたこの曲は、永井真理子の音楽活動を支えてきたベーシスト、阿比留淳司さんに捧げたものだ。天国に旅立ってしまったかけがえのない仲間への思いが溢れる楽曲に、彼女のシンガーソングライターとしての使命感のようなものが滲んで、時折涙をこらえながら歌う姿に胸を打たれた。さらに、「Re★Birth」を演奏したのは、この曲が2022年8月7日に実施した『Re★Birth of 1992』(※1992年8月2日に開催された伝説のライブ『mariko nagai 1992 Live in Yokohama Stadium』と同じセットリスト、同じバンドメンバーで行われた)で発表された新曲だったということもあり、ふたつの“新曲”が阿比留さんの存在によってつながり、魂を吹き込まれたような奇跡的な瞬間だった。
メインステージからは花道が伸び、サブステージへとつながっている。そこに移動し、スペシャルゲストの辛島美登里を呼び込んだ。「今年の5月に辛島さんのツアー『辛島美登里 35th Concert Tour 2024 〜Coral 35〜』に呼んでいただいて、本当に楽しかったんです。だから今回、ゲスト返しです!」と永井が言えば、「もちろん即OK! でした」と辛島が返す。
お互いが初めて会った印象を話し、その頃について辛島は「もう音楽をやめようと思って故郷の鹿児島に帰っていたんです。そのときに連絡があって、私の書いた曲が永井真理子さんのシングルに決まったよって言われたんです」という貴重なエピソードを話してくれた。ということで、最初に辛島が手がけた永井の2ndシングル「瞳・元気」をコラボした。曲名を告げると会場が沸いた。それもそのはず、リクエストでも上位にランクインした曲だということだ。そして、辛島も初めて歌うという「50/50」、さらに辛島バラード、通称“カラバラ”の代表曲「Keep On “Keeping On”」でふたりのコラボを締め括った。
左から)辛島美登里、永井真理子15分間の休憩を挟んで開幕した2部は、衣装もガラリと変えて「私を探しにゆこう」から始まった。1部の1曲目「うた」も収録されているアルバム『You’re...』(1998年)からのナンバーというのは偶然の一致だろうか。憶測に過ぎないが、このアルバムから始まった大切な物語があるような気がしてならない。「2部はまたちょっと趣向を変えて、みんなで一緒に作っていくような元気なライブにしたいと思っています!」50’sアメリカンポップス風の「大人になるためサヨナラしたの」では、間奏でオーディエンスと一緒に、その前のMCでレクチャーした振りを決めた。
続いて披露したのはデビューアルバム『上機嫌』(1987年)に収録されている代表曲「One Step Closer」。実は、デビュー前のデモテープにすでに存在していたという、永井真理子のシンガーとしての印象を決定づけた楽曲だ。レーザーが会場を染める中、オーディエンスはクラップで、そして永井はステージを左右に動きながらパフォーマンスしていく。
「私は復帰して7年なんですけど、その間、ファンのみなさんが私の進む方向を照らしていてくれたことへの感謝と、これからも一緒に歩んでいきたいなという気持ちを込めて作りました」と、ここでオーディエンスにこんな呼びかけをした。「みなさんに星になっていただきたいんです。スマホのライトを点灯して私を照らしていただけませんか?」会場の照明はステージを照らす最低限の明かり以外、オーディエンスのスマホライトの光のみ。幻想的な雰囲気の中「君が光を照らす」をパフォーマンス。
そして、「みんなの思いをいっぱいステージに投げてください!」と言って、「キャッチ・ボール」を披露した。サビでのオーディエンスのコーラスが、この瞬間にしかできない音楽を作り上げていた。「ヤバイ! 泣きそう......うれしくて」としばらく鳴り止まない拍手の余韻に身を任せた後、「新曲をもう1曲作ったんですよ」とサプライズの報告をした。自分を上げられる曲がほしいということで、自分への応援歌「Wave The Flag」と題された曲では、グッズのフラッグをオーディエンスと一緒に振って盛り上がった。
ここからラストスパート。「ORANGE」「White Communication-新しい絆-」「TIME」、ドラムソロからのつなぎで「ハートをWASH!」と名曲を畳みかけた。永井もメインとサブのステージを行き交い、オーディエンスのテンションを上げまくっていった。メンバー紹介の後、本編ラストはリクエスト第1位に輝いた楽曲「私の中の勇気」。多くのファンを支え続けてきた曲が、また新たに染み渡っていった。
アンコールは、今年最後のライブということで「ZUTTO」を一足早くクリスマスバージョンにアレンジして、ボーカルとキーボードのシンプルな編成で披露した。「最後はどうしてもみんなと歌いたい曲があって」と、サブステージに用意されたお立ち台の上に。「デビューしてからずっと、私のライブが終わった後に会場でみなさんがこの歌を歌ってくれて、私はそれを楽屋で聴いて、感動で震えて泣いていました。「Mariko」という曲です。自分の名前をタイトルにするなんて小っ恥ずかしいんですけど(笑)、当時の私の等身大の気持ちを歌った曲です」演奏なし、アカペラのみでオーディエンスと共に歌った。重なる歌声は、まるで永井真理子を照らす光そのものだ。それぞれがそれぞれの“あの日”に戻りつつ、きっと一緒の未来を見つめている――そんな気がした。シンガーソングライター永井真理子が描く次の物語が待ち遠しい。
<公演情報>
『永井真理子 Special Live 2024 〜君が光を照らす〜』
10月13日(日) 東京・EX THEATER ROPPONGI
【セットリスト】
■1部
01.うた
02.未来
03.好奇心
04.さよならの翼
05.レインボウ
06.Rest in Peace
07.Re★Birth
08.瞳・元気(with:辛島美登里)
09.50/50(with:辛島美登里)
10.Keep on “Keeping on”(with:辛島美登里)
■2部
11.私を探しにゆこう
12.大人になるためサヨナラしたの
13.One Step Closer
14.君が光を照らす
15.キャッチ・ボール
16.Wave The Flag
17.ORANGE
18.White Communication-新しい絆-
19.TIME
20.ハートをWASH!
21.私の中の勇気
En1.ZUTTO
En2.Mariko
永井真理子 公式サイト:
https://marikonagai.amebaownd.com/
永井真理子 Official Store「M's STORE」:
https://marikoshop23.stores.jp/
永井真理子 公式X:
https://twitter.com/nagai_mariko
永井真理子 YouTube:
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