中嶋常幸のプレーが見られるのは年に3試合だけ? 満身創痍だけど「ときどき中嶋らしいプレーを見せたい」

目尻を垂らして最終日まで完走する(写真提供:日本プロゴルフ協会)

中嶋常幸のプレーが見られるのは年に3試合だけ? 満身創痍だけど「ときどき中嶋らしいプレーを見せたい」

10月18日(金) 12:29

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永久シード選手の中嶋常幸が、9月の「日本シニアオープン」以来となる「ファンケルクラシック」に出場する。レギュラーツアーで通算48勝を挙げたレジェンドは、2010年のオフに交通事故に遭って右ヒザに大ケガを負って以来、ヒザだけでなく股関節、肩、ヒジの痛みに悩まされ、近年はトーナメントでプレーする機会はめっきり少なくなった。昨年は3試合、今季は2試合目の出場となる。



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「本当だったら1試合も出られない。ヒザ、肩だけでなくリウマチ性の病気もあるから常に痛み止めを飲まないといけない。だけど自分の中の思い入れが強い試合には出たい。日本シニアオープンは今年100周年だったし、このファンケルクラシックはシニアの面白さを最初に分からせていただいた試合だしね」

月に一度は病院でMRIなどの検査を行っているが、「打つのも痛いし、歩くのも痛い」と体はギリギリの状態。そのうえで「中嶋のプレーを見られるのは年に3試合が限度だと思う。練習に耐えられる体ではないし、トレーニングができるわけでもない。ストレッチやチューブを使った運動は、トレーニングとは呼べないレベルだから。もう選手としてできる体ではない」と話す。

中嶋がスポンサー契約を結ぶキリンホールディングスは、9月12日にファンケルへのTOB成立を発表。ファンケルがキリンの完全子会社となった。中嶋にはホストプロとしてギャラリーを喜ばせたいという思いがある。それこそが、『シニアの面白さ』につながる。

「最初はレギュラーツアーの延長で、目を三角にしてピリピリとしていた。それがファンケルに出たときにお祭りのような楽しい雰囲気があって、目を三角ではなく、目尻を垂らしてプレーするんだって分かったのがこの試合だったね」

さらに中嶋は、「(ファンケルの名誉相談役の)池森さんがシニアプロたちを大事にしているのがすごく伝わってきた。その試合には出ないとね」と話す。大会には特別な思いを持っているからだ。

というのも、ファンケル クラシックが初開催した2001年のシニアツアーは、年に6試合しかない厳しい状況にあった。今季は13試合あるが、2017、18年には19試合と、当時に比べて試合数は増加している。こうした背景も、長きにわたりシニアツアーを応援してくれた池森さんのおかげだと中嶋は考えている。

それに、年を重ねたことによる考えの変化も大きい。2020年に中嶋は、シニアツアーについてこのように話している。


「僕もみんなも、レギュラー時代にはしなかったようなミスをする。でも、高齢になれば感覚が鈍くなっていくことは避けられない。その事実をシニアプレーヤーはよく分かっているから、自分のミスや他人のミスも理解できるんだよね。逆に大成功したときのうれしさも共感できる。その全体が、シニアツアーの温かさになっているのだと思う」

ミスへの理解と成功への共感、こうした考えもあり、「シニア選手には15本目の道具がある」というのが中嶋の持論だ。

「若くて、貪欲にたくさんの勝利を欲しているときは、ミスを受け入れることはできない。存在する価値は“勝つこと!”だから、コミュニケーション能力なんて気にもしない。僕もそういう選手だったから。でも、年を重ねて失敗を知り、成功の尊さを知って、未熟な自分を見つめてきた時間がシニアプレーヤーにはある。だから、シニア選手は15本目の道具として『コミュニケーション能力』というクラブを武器に戦うことができるんだ」

「シニアの元気が日本の元気‼」というスローガンを掲げているファンケル クラシックだからこそ、プレー以外でもファンを魅了したいという思いがある。

ちなみに、中嶋が他に出場したいと考えているのは太平洋クラブ御殿場コースで行われる「マルハンカップ 太平洋クラブシニア」(※今年は太平洋クラブ軽井沢リゾートで開催)と「日本シニアオープン」の2試合。

「マルハンは2日間競技だし、カートに乗せてくれるからね」と話す。今大会は歩きでのプレーだが、マルハンカップ 太平洋クラブシニアはカートに乗ってプレーすることができる。

日本シニアオープンについては、「予選があるから、シビアさが残っている。スコアは悪いし苦しいんだけど、こういうピリピリした中でいつもやっていたんだなって思い出して楽しかった」と語った。

シニアツアーはほとんどの試合が2日間か3日間競技で予選落ちがないが、日本シニアオープンと「日本プロゴルフシニア選手権」の2試合だけは4日間競技で、2日目に予選落ちがある。シニアの楽しい雰囲気も感じつつ、目を三角にしてプレーしていた昔の感覚も味わいたいのだ。中嶋はこれまでに日本シニアオープン、日本プロシニアを含む日本タイトル7冠を達成している。

今大会は17回目の出場でまだ優勝はない。

「存在感を出すのはとても無理なので、ときどき中嶋らしいなというプレーを見せられればいいなと思っている。とにかく楽しいプレーを見せてあげたい」

昨年は8月開催で熱中症により第2ラウンドスタート前に棄権している中嶋。涼しい10月開催となった今年は、最終日の20日に迎える自身70回目の誕生日まで、笑顔で完走を目指す。

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