2025年の大河ドラマが"べらぼう"に面白くなる!?江戸のメディア王・蔦屋重三郎に注目

『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化: 元祖・敏腕プロデューサーの生涯と江戸のアーティストたちの謎を解き明かす』伊藤 賀一Gakken

2025年の大河ドラマが"べらぼう"に面白くなる!?江戸のメディア王・蔦屋重三郎に注目

10月17日(木) 18:00

2025年1月5日からスタートするNHK大河ドラマ第64作『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』。主人公は江戸のメディア王・蔦屋重三郎ですが、この人物について詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回ご紹介したいのが、その人となりや関わりのあった人物、江戸の文化などについて解説した書籍『これ1冊でわかる!蔦屋重三郎と江戸文化:元祖・敏腕プロデューサーの生涯と江戸のアーティストたちの謎を解き明かす』です。

まず第1章で明かされるのが、蔦屋重三郎(蔦重)の生涯。活躍したのは、田沼意次が権力を握った時代から寛政の改革にかけての、江戸中期から後期に差し掛かる時期です。江戸郊外の吉原で生まれ、男性客を遊女屋へ案内する引手茶屋の養子となり、その一角で小さな書店を営むところから始まり、最終的に今でいうところの総合メディアプロデューサーにまでのぼり詰めたのだから、なんとも大した人物です。

同書の著者である伊藤賀一氏は、蔦屋重三郎について「現代社会では『ガチャ』と呼ばれるような、みずからは選べない偶発的要素を前向きに活かし、たくましくなり上っていった人物だ」(同書より)と評し、彼を成功へ導いた要素として、「『出自』を活かした」「『競合相手の失敗』を活かした」「『流行(ブーム)』を活かした」など7つのキーワードをあげて説明しています。

伊藤氏によると「昨今の国内外における閉塞的な状況は、徳川将軍家の治世が中期から後期に差しかかった18世紀後半の世相に似ている」(同書より)とのことで、閉塞感の満ちた社会でどのように身を立てていくか、今の私たちが蔦屋重三郎から学べるところは多いかもしれません。

また、蔦屋重三郎は才能や運とともに、人との縁に恵まれた人物でもあったようです。版元として彼が見出した人物、ともに仕事した人物は、山東京伝に喜多川歌麿、葛飾北斎、東洲斎写楽など挙げればキリがありません。『東海道中膝栗毛』で知られる十返舎一九はデビュー前に蔦重家で寄宿生活をしていたといいますし、『南総里見八犬伝』の作者・曲亭馬琴/滝沢馬琴は蔦屋重三郎の書店「耕書堂」の手代として勤務していたそうです。当時は軽視されていた大衆文学や絵画を圧倒的熱量で事業化し成功させたという意味で、彼のプロデューサーとしての敏腕ぶりも注目すべきポイントであることは間違いないでしょう。

ほかにも同書では、「もっと知りたい! 江戸と蔦重」として、当時の時代背景やカルチャーについても解説。「江戸の吉原ってどんなところ?」「浮世絵の題材になったものは?」「江戸時代はどんなところで本が売られていたの?」など興味深い知識が満載です。また、浮世絵や大衆文学本の画像も多数載っていて、目で見ても楽しい内容になっています。

江戸のエンターテインメント界を席巻した蔦屋重三郎について詳しく知れる同書。2025年の大河ドラマへの入門書として、歴史への好奇心を深められる書籍として、皆さんにもおすすめしたい一冊です。

[文・鷺ノ宮やよい]



『これ1冊でわかる! 蔦屋重三郎と江戸文化: 元祖・敏腕プロデューサーの生涯と江戸のアーティストたちの謎を解き明かす』
著者:伊藤 賀一
出版社:Gakken
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