幸四郎と松也のダブルキャストで、劇団☆新感線の伝説の舞台が歌舞伎として蘇る

左から)尾上松也、松本幸四郎

幸四郎と松也のダブルキャストで、劇団☆新感線の伝説の舞台が歌舞伎として蘇る

10月17日(木) 12:00

提供:

歌舞伎と劇団☆新感線の作品が融合した歌舞伎NEXT『阿弖流為〈アテルイ〉』から9年。待望の第二弾が立ち上がる。演目は、脚本・中島かずき、演出・いのうえひでのり、主演・松本幸四郎(当時市川染五郎)で17年前に上演され、“いのうえ歌舞伎”の中でも名作と語り継がれてきた『朧の森に棲む鬼』。主演は、初演に引き続いての幸四郎と、歌舞伎NEXT初挑戦となる尾上松也がダブルキャストで勤める。歌舞伎の新たなるステージを目指して命名された歌舞伎NEXT。幸四郎と松也がどんな歌舞伎の未来を見せるか。

こんなに怖いものを観たことがないと興奮してくださる世界を

──歌舞伎NEXTが第一弾の『阿弖流為』でスタートしたのが9年前。幸四郎さんには立ち上がったときの思いを、そのとき出演できなかった松也さんには当時どう感じておられたのかをお聞かせください。

幸四郎これまでに何度か劇団☆新感線さんの作品に出演してきて、その中で次にどんな展開があるだろうと考えたときに、今度は逆に歌舞伎の世界のほうに来ていただけないかと思ったんです。歌舞伎と新感線のあの世界観が混ざり合ったら何が生まれるか。そこをテーマにスタートしました。演出のいのうえひでのりさんも、新感線でのいつもの演出のようにしっかり絵を作られたうえで、「ここは歌舞伎だったらどういう表現法がありますか」と聞いてくださって。我々もそれに応えていって、毎日何か新しいものが生まれていくという稽古でした。

松也そもそも劇団☆新感線さんの作品には、幸四郎さんがご出演される前から歌舞伎へのリスペクトが感じられる場面や演出がたくさんありましたので。まず、幸四郎さんが新感線に出られたときに、歌舞伎俳優が演じたらこうなるぞというお手本みたいな表現が観られるぞと思って拝見していたんです。それが歌舞伎NEXTでいよいよ本当に歌舞伎俳優だけで上演するとなったときには、もちろん参加したいという気持ちがありましたが、別の公演がすでに決まっていて出演できず。とにかく悔しかったというのが一番でした。

──今回の第二弾『朧の森に棲む鬼』で松也さんもようやく参加できることになりましたね。新感線では2007年に上演され、幸四郎さんが主演された作品ですが、改めてその面白さはどこにあると思われていますか。

幸四郎主人公のライというのは悪に染まりまくった男で、嘘をつき、騙して、ほしいものを手に入れていくんです。その姿は怖くもあり、怪しくもあり、刺激的でもあり、快感でもある。だから、その悪の生き様にどっぷり浸って、こんなに怖いものを観たことがないと興奮してくださる世界を目指したいと思っています。

松也ライが駆け上がって堕ちていくそのスピード感とスケールの大きさは、『リチャード三世』が下地にあるとはいえ、他にはなかなかないものだと思います。その成長と堕落のどちらの要素もあるのが面白いところですし、それに加えて悪の面も、実は誰しも共感できる部分があると思うんです。

幸四郎企んだことがすべて上手くいくというのは、やはり興奮しますよね。口先で人を自分の思い通りにしていき、さらに強力な剣も手に入れているのでもう怖いものがない。だから、演じるうえでは改めて、喋ること、強い体を作ること、という基本的な訓練をして臨みたいです。とにかく、17年前に新感線さんで演じたものは忘れて、一から挑戦するつもりです。

松也僕はもう、いつも以上に内面からその世界に陥る感覚にならなければいけないなと思いますね。ライの野性的な狂気に、いかに自分が俳優として人間として興奮できるか。それが幸四郎さんのおっしゃるお客さまの興奮につながっていく気がします。もちろん立廻りなどいろいろな仕掛けからでも迫力や興奮は伝わると思うのですが、そこに至るまでをまず自分で作って、お客様に悪の世界に没入していただけるよう努めたいと思います。

──今回のダブルキャストには趣向があって、おふたりは、ライを演じない回では、ライと敵対するサダミツ役で登場されます。二役を演じることについて、現段階で何か思うところはありますか。

幸四郎サダミツとしてライと対峙することで、ライを演じることに影響がないわけないでしょうね。

松也敵対する役という意味では、二役を演じるのにちょうどいいかもしれないですね。(市川)猿弥さんが演じられるマダレも、遊べる役どころですので挑戦してみたかったですけど。ですが、サダミツも面白いことができそうな気がします。初演で演じていらっしゃった小須田康人さんがすごい表情をしてらっしゃって(と、口を大きく開けて顔を歪める)。

幸四郎(笑)。

松也あの顔が大好きなので、歌舞伎的に正面切ってやりたいなと(笑)。いのうえさんの演出によってどうなるかわかりませんが。

「永遠の演劇少年」いのうえさんと、新感線の面々から学んだこと

──幸四郎さんは市川染五郎時代に、『阿修羅城の瞳』(00年、03年)、『アテルイ』(02年)、『髑髏城の七人~アオドクロ』(04年)、『朧の森に棲む鬼』(07年)で新感線に主演され、松也さんは『メタルマクベス』disc2(18年)の主演で初めて新感線を経験されました。いのうえさんの演出にはどんな刺激がありますか。

幸四郎いのうえさんは具体的に動きを演出してくださるんですけど、「確かにこれカッコいいよね」とか、「ここでキマると気持ちいいよね」とか、すぐに納得させられるというか、乗せられてしまうんです(笑)。

松也新感線の皆さんと一緒にお芝居を作って感じたのは、一見バカみたいなことを(笑)、全員が全力で楽しんでいるということでした。そういう大人たちを見ているだけで僕は楽しかったですし、その一番手にいるのがいのうえさんで永遠の演劇少年みたいな。その情熱や魂が基盤となって作品が作られていくのを目の当たりにしていると、自分もこうありたいと思えて。これから演劇に携わり、もの作りをしていくうえでの勇気をいただけた感覚があります。

幸四郎それこそ、5秒使うだけの小道具も、時間をかけて素晴らしいものを作るんですよね。殺陣にしても、当たり前のことではありますが、全員に意味のある手をつけていく。お芝居も、アドリブを入れる隙がないくらい作り上げられていますし。そこまで徹底しているからあれだけ面白いんだと気づかされるんです。

──第二弾では、第一弾以上に歌舞伎の要素を盛り込みたいといのうえさんがおっしゃっていましたが、歌舞伎俳優として提案してみたいことはありますか。

幸四郎いのうえさんの作品は、音楽にインパクトのあるものが多いんですけど、その意味では、歌舞伎はまさに音楽的なお芝居で、長唄や義太夫などいろいろな音楽がありますので。それと新感線の音の組み合わせで歌舞伎NEXTの音楽というジャンルができたら面白いなと考えたりはしています。

松也僕はまだ具体的な案はないのですが、せっかく歌舞伎の要素を取り入れるのであれば、何をすれば作品にとって効果的なのかをしっかり見極めていきたいと思っています。見得をすればいいというものでもありませんし、何が必要かを考えながら、歌舞伎が持っている力を出したいです。

幸四郎稽古では自分自身のことで手一杯になってしまうと思いますが、でも、出演者がそれぞれ自分を最大限活かせるような稽古を積み重ねていけるといいですよね。

松也たぶん逆に、歌舞伎俳優としての引き出し以外のものも求められると思うんです。僕も『メタルマクベス』のときに、吹っ切ってやらなきゃいけないこと、越えなければいけない壁みたいなことがありましたから。そこでそれぞれのいいものが出てくるだろうなとも思うので、今回出演する歌舞伎俳優たちにぜひ期待していただきたいです。

「憧れるのはやめて」刺激を与え合う関係

──幸四郎さんと松也さんは、ダブルキャストとして、またライとサダミツで対峙する相手として、お互いのどんなところを楽しみにしておられますか。

松也幸四郎さんは前回演じたライを忘れて挑戦するとおっしゃっていますが、もちろん僕が幸四郎さんの立場でもそう考えると思いますが、それでもやはり、17年前の幸四郎さんを観て憧れてきた人間としては正直、「あの幸四郎さんのライをナマで観ることができる」という喜びが大きくて(笑)。僕だけではなく後輩たちみんながそれを楽しみにしているところがあるかと。それだけの印象と影響を幸四郎さんは僕たちに残してくださいました。その方と同じお役を演じるのはプレッシャーですが、大谷翔平さんの言葉をお借りして、「憧れるのはやめて」挑戦するという心を持って臨みたいです。

幸四郎いや、僕のほうこそ頑張らないと。松也くんは本当に情熱的なお芝居をするんですよね。常に自分の心を動かして芝居をしているなと感じる。本来芝居ってそういうものだなと、改めて実感させてくれる刺激になる存在なんです。今回はダブルキャストで同じ役を見比べていただくので、さらに刺激になると思います。なんとか僕も頑張ります!

取材・文:大内弓子撮影:荒川潤

ぴあアプリ先行抽選受付中!

【チケット先行受付中!】歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』新橋演舞場

<公演情報>
歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり

【配役】
ライ/サダミツ(交互出演):松本幸四郎/尾上松也
ツナ:中村時蔵
シキブ:坂東新悟
キンタ:尾上右近
シュテン:市川染五郎
アラドウジ:澤村宗之助
ショウゲン:大谷廣太郎
マダレ:市川猿弥
ウラベ:片岡亀蔵
イチノオオキミ:坂東彌十郎

【東京公演】
2024年11月30日(土)~12月26日(木)
会場:新橋演舞場

【福岡公演】
2025年2月4日(火)~2月25日(火)
会場:博多座

公式サイト:
https://oboro-no-mori24-25.com/

ぴあ

エンタメ 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ