10月14日(月) 12:00
PGAツアーのフェデックスカップ・フォール第3戦「ブラック・デザート選手権」は、今季から新たに創設された新設大会。ユタ州にPGAツアーの大会が戻ってきたのは1963年以来で、開催コースのブラック・デザート・リゾートは今大会のために新規オープンしたゴルフコースだ。
そんな新たな大会、新たなコースで、歴史に残る新たな勝者が誕生した。下部ツアーのコーンフェリーツアーで今年の7月に1勝、8月に2勝を挙げ、年間3勝を達成した26歳の米国人選手、マシュー・マッカーティは即座にPGAツアーの正式メンバー資格を獲得。デビュー戦となったフェデックスカップ・フォールの第2戦、先週の「サンダーソン・ファームズ選手権」は63位タイに終わったが、今週はブラック・デザート選手権を見事に制し、PGAツアー・デビュー2試合目、キャリアでは2022年「全米オープン」を含む3試合目にしてPGAツアー初優勝を挙げた。
コーンフェリーツアーで年間3勝を挙げてPGAツアーに昇格したのは史上13人目の快挙だった。そして、同一年にすぐさまPGAツアーで勝利を挙げたのは、2005年のジェイソン・ゴア以来、史上2人目の歴史的快挙だ。
アリゾナ州で生まれ育ち、カリフォルニア州のサンタクララ大学を経て2021年にプロ転向したマッカーティーは、PGAツアー・カナダ経由で2022年からコーンフェリーツアーに挑み始め、3シーズン目となった今季、7月の「プライス・カッター・チャリティ選手権」、8月の「ピナクル・バンク選手権」と「アルバートソン・ボイズ・オープン」を制し、PGAツアーへの扉を自力で開いた。
そしてデビュー2戦目、キャリア3戦目で初勝利。一見、その歩みはスピード優勝のように感じられる。マッカーティー自身、「今年7月からのこの3カ月間は本当にクレイジーな日々で、今も興奮している」と、自身の環境の目まぐるしい変化を振り返った。
だが、優勝した息子を18番グリーンの奥でかたく抱きしめたまま、なかなか離れることができず、長い長いハグをしたマッカーティーの父親は、「この3カ月は信じられないぐらい早く流れたが、ここまでの道はとても長かった。息子は本当に本当にハードワークを積み重ね、夢にまで見たPGAツアーのチャンピオンに、今ようやくなることができた」と、何度も涙で声を詰まらせた。その通り。下部ツアー3勝からPGAツアー初優勝までの歳月は、わずか3カ月のスピーディーな歩みだったが、若年化に拍車がかかる昨今、26歳でのPGAツアー初優勝は決して早くはない。むしろ遅咲きと言っても過言ではない。
とはいえ、大事なのは、そこまでの歩みが早いか遅いかではなく、そこまでの歩みにおいて何を学んだか、何を携えてPGAツアーにやってきたかである。
「コーンフェリーツアーで3勝を挙げたこのラスト3カ月間は、どうしたら試合で勝つことができるかという、いわゆる勝ち方を学んだ。正直なところ、PGAツアーでキャリア3試合目で優勝できたことには驚いているけど、コーンフェリーで身に付けたことが、今、とても役に立っている。無駄なことは何一つ無かった」
今大会初日を首位から2打差の2位タイで好発進したマッカーティは、2日目も首位から2打差の位置をキープ。3日目は2位に2打差を付けて単独首位へ浮上する。そして最終日は、早い時間にスタートして猛チャージをかけてきたルーカス・グローバーに一時は単独首位の座を奪われた。だが、マッカーティーは動じることなく、前半で2つスコアを伸ばすと、後半は2ボギーを喫したものの、14番ではイーグル、16番ではバーディを獲り、単独首位の座を奪い返した。
そして、2位に2打差で迎えた18番(パー5)では、見事に2オンに成功。イーグルパットはカップの淵で止まったが、タップイン・バーディーで2位との差を3打へ広げて快勝した。そんな26歳のルーキーの勝ちっぷりは、実に見事だった。下部ツアーで覚えた「勝ち方」を実践し、見せつけた努力の末の圧巻の勝利だった。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)