最新作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(公開中)が公開されたレディー・ガガといえば、21世紀を代表するアーティスト。メジャーデビュー前からソングライターとしてファーギーやブリトニー・スピアーズなどへ楽曲提供をし、デビューアルバムの「ザ・フェイム」とシングル曲が大ヒット。グラミー賞を獲得し、一気にスターダムに躍り出た。
【写真を見る】主題歌「シャロウ」が大勢の感動を呼び、アカデミー賞歌曲賞にも輝いた『アリー/ スター誕生』
■アカデミー賞で披露された「シャロウ」の圧巻のパフォーマンス
ダンス・ポップのジャンルにとどまらず、ジャズ、カントリーとボーダレスに活躍しただけでなく、俳優としてもデビュー。ブラッドリー・クーパーが監督・出演した2018年の『アリー/ スター誕生』で主演と音楽制作を務め、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞などの映画賞の候補となる。当然のことながらサントラも大ヒットし、主題歌として発表した先行シングル「シャロウ」は、アカデミー賞歌曲賞ほかを総なめ。音楽家としてだけでなく、「歌って踊れて作詞作曲もできる俳優」というマルチすぎるステイタスを手にした。
グラミー賞授賞式でのパフォーマンスは、ミュージシャンとして最高のステージだが、映画界最高の栄誉とされるアカデミー賞授賞式のステージをもサラッとこなしてしまったことは忘れられない。なにせオスカーのステージは魔物が潜んでいる。特に歌曲賞候補のパフォーマンスは生歌限定のため、どんな大物アーティストや俳優でもちょっとした失敗がつきものだ。そんなプレッシャーはどこへやら、普段の彼女の奇抜なファッションやステージ美術はいっさいなく、グランドピアノ一つのステージの上で、ガガとクーパーは「シャロウ」を淡々と、それでいて完璧なパフォーマンスで魅了した。
■シンガー&ソングライター、俳優として活躍し、唯一無二の存在に
日本でも知名度が高いアメリカのアーティストは少ないが、彼女は別。その理由の一つは、ぶっ飛んだファッションとパフォーマンスがイメージ先行していることもあるだろう。だが、その奇抜さやまるでミュージカルステージのようなパフォーマンスだけでなく、シンガー&ソングライターとしての圧倒的実力があるからこそ、見た目だけでない正統派アーティストとしての認知も高い。そこにプラスして芝居の才能まであるのだから、彼女の存在が唯一無二とされるのだ。
実は俳優としての活躍は『アリー/ スター誕生』に始まったことではない。カメオ出演した『シン・シティ 復讐の女神』(14)や、ライアン・マーフィー制作のドラマ「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」など、多忙な音楽活動と並行して俳優としても精力的に活躍。しかも、そのどれもが彼女の存在なくしては成立しない作品となっている。
彼女自身がリスペクトするアーティストとして、デヴィッド・ボウイやフレディ・マーキュリー、バーブラ・ストライサンド、マドンナなどが挙げられていることは有名な話だが、その共通点としては音楽だけにとどまらない活動と存在。時代を代表するアイコンであると同時に、映像作品へのこだわりが強い人々ばかりだ。そのなかでも特に、マドンナとの共通点を見いだす人は多いだろう。
■マドンナが切り開いた大地に道を作ったガガ
1980~90年代のポップ&ロックを代表するアーティストであるマドンナは、ファッションを重視した先鋭的な映像と音楽を打ちだした先駆者。人気に火をつけたのが性的マイノリティのコミュニティだったこともあり、LGBTQ+の人権活動に積極的な支援を行っているという点も共通している。ガガのヒット分析をする際によく「ガガはマドンナが切り開いた大地に道を作った」と評されているが、まさにその通り。マドンナが作った道筋がなければ、ここまでスピーディに活躍の幅が広がらなかっただろう。
ガガが“グッチ一族を崩壊に導いた”とされるパトリツィアを演じた、2021年の『ハウス・オブ・グッチ』を観て、俳優マドンナの代表作である『エビータ』(96)を思い出した人もいたはず。「毒婦」として有名だった女性の伝記、その一方的なイメージを覆す多面的なストーリーと芝居、彼女らにしかできなかった役柄。それだけに、2人の活動がこれからどうなっていくのか、特に21世紀のエンタメ界を牽引するガガが次になにを選ぶのか、注目されるのは当然のことだろう。
■ガガの起用しか考えられない『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
そんなガガが出演する『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は、今年のヴェネチア国際映画祭でお披露目され絶賛を浴びた。アジテーターの怪物として爆誕したジョーカーを描いた前作は、第92回アカデミー賞においてアメコミ原作の映画としては異例の2部門受賞(主演男優賞と作曲賞)。その続編となる本作は、前作で打ちだされた救いゼロの世界観を皮肉るかのように、多幸感のある音楽がストーリーテリングの重要な鍵となっている。まさにガガの起用しか考えられない作品だ。
文/よしひろまさみち
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