SuU×時速36km『骨-日-』 音楽性の異なる2組が自分たちの音楽をぶつけ合った、念願の初ツーマンをレポート

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SuU×時速36km『骨-日-』 音楽性の異なる2組が自分たちの音楽をぶつけ合った、念願の初ツーマンをレポート

10月11日(金) 18:00

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Text:小川智宏Photo:石﨑祥子

9月28日、下北沢SHELTERにてSuUの自主企画『骨-日-』が開催された。12:30開演というイレギュラーなスケジュールにもかかわらず会場は超満員。それもそのはず、この日はSuUが盟友である東京・江古田の4人組、時速36kmと初めてのツーマンを行う記念すべき1日なのだ。SuUと時速、音楽性はまったく違うが、そこに込められたマインドには明らかに通じ合うものがある2組が自分たちの音楽をぶつけ合ったこの日のライブ。その特別さも相まって、会場には終始熱い空気が流れていた。

時速36km

満員のフロアを前にまず登場したのは時速36km。SEがやみ、仲川慎之介(vo/g)がしっとりと歌い出したのは「化石」。その歌に重なるようにバンドサウンドが鳴り響いた。松本ヒデアキのドラムとオギノテツのベースがどっしりと曲を支え、石井開のギターがメランコリックな気分を連れてくる。そうして始まったライブは、続いて一気にアッパーに振り切る「銀河鉄道の夜明け」と「七月七日通り」で早くも最初のピークを迎えた。オーディエンスは拳を突き上げ、その様子を前に仲川の歌も熱を帯びる。前のめりなサウンドと、のびやかなメロディが鮮やかなコントラストを描き出し、このバンドにしか描き出せない情緒がステージから放たれる。じっくりその音に聞き入る人、頭を振り、腕を上げ、全身でそれを受け止める人……それぞれの受け止め方でライブを楽しむオーディエンスの姿が、時速36kmの音楽がここに集まった人々の中に深く根を下ろしていることを物語るようだ。

オギノテツ(b) 石井開(g)

ドライヴィンなギターリフと心の叫びのような歌が心をざわつかせるポップチューン「助かる時はいつだって」を終え、仲川が挨拶。昼公演ということで「俺も朝辛かったけど、みんなもそうだったと思う。まずは拍手っすね」と集まったオーディエンスを労う。「結構長い付き合いで、知り合って3〜4年くらいになるんですけど、バンドで(対バン)っていうのは初めてだから、すげえうれしいです」とSuUとの初ツーマンを喜び、「すごくいい音楽を奏でるやつらなので、俺らもそうしたいと思います」と宣言。そしてSuUのすずきたくまが「事あるごとに好きだって言ってくれる」という楽曲「ラブソング」を届ける。優しく穏やかなリズムの上でどこか懐かしいようなメロディが弾むこの曲のもつあたたかなムードがじんわりとフロアに広がっていった。

仲川慎之介(vo/g)

バラード「クソッタレ共に愛を」を全身全霊で歌い上げ、「一生懸命歌いましたわ」と仲川。「結構な友達ですから、やっぱり力が入りました。SuUのため、そしてあなたたちのために一生懸命できたのがうれしいです」。そして、SuUがほかのバンドとはいかに違うかっこよさを持っているかを力説すると、「まだまだこの2バンドでがんばっていきたいなと思います」と気持ち新たにライブは最終盤へ。怒涛のアンサンブルが畳み掛けてくるような「ブルー」、さらにギアを上げるように突入していった「ハロー」を経て、ラストは「夢を見ている」。フロアからも大合唱が巻き起こり、シェルターがひとつになる。最高の雰囲気の中、時速の4人はステージをSuUに引き継いだのだった。

一方、SuUはすずきの「こんにちは、SuUでーす」という挨拶からスタート。浮遊感のあるサウンドが別世界へと誘うような「微振動」が、さっそく彼らならではの世界を作り出していく。脱臼しそうな変則リズムと、それに食らいつくようにしてがなるすずきのボーカル。そこにminakoの深みのある歌が絡み、あっという間に場内の空気を塗り替えてみせると、続けて「kaguya」へ。気持ちのいいグルーヴの中に一抹の不穏さを隠し持ったようなそのサウンドは、確かに先ほど仲川が口にしていたように「凡百のバンド」とは明らかに違う。その不穏さを象徴するのは、やはりすずきたくまの歌。ときに気持ちよさそうにリズムに乗ったかと思うと、そこからはみ出すようにシャウトする、不安定だがそれゆえにとても人間臭い彼のボーカルには、彼がいわゆるロックバンドではなくこの表現形態を選び取った理由が凝縮されているように思う。

すずきたくま(vo/g)

「よろしく」と一言、アルペジオを弾き出すすずき。そこにダブのリズムが入ってきて、「あなたの中で死んだようです」が始まっていく。気持ちよさそうに体を揺らすオーディエンスの姿が印象的だ。そして楽曲を終え、ギターのチューニングをすると、すずきが口を開く。「改めまして、SuUです。時速36km、ありがとうございます。念願のツーマン。よく弾き語りとか大きいイベントで一緒になるんですけど、ツーマンは初めてで。真っ昼間からありがとうございます」。そう手短に感謝を伝えると、再びギターを爪弾いて「ennui」へ。〈劣等感に怯えてた〉という歌詞をこの心地よいリズムで歌う人はたぶんこの男だけだ。その心情を象徴するようにサイケデリックなギターが空間を覆っていく。バンドの演奏はどんどん熱く、濃密になり、激情が溢れ出す。minakoのボーカルも叫びのような激しさを帯び、その声によってそれまでグルーヴに身を委ねていたオーディエンスの心を刺激する。まだ昼さがりだが、SuUの音楽が引っ張り出してくる感情は、まるで深夜3時のよう。聴いていると無性に胸がざわつくのだ。

minako(vo/ag)

重たい足取りをそのまま音にしたような「collage」を終えると、すずきが「えっと」とおもむろに物販の紹介を始める。もうすぐライブも終わりみたいな空気を出すが、じつはセットリストはまだ半分を過ぎたあたり。「あれ、今MCじゃないの?」とメンバーに確認する姿にフロアからは笑いが起きる。楽曲とは裏腹のどこか気の抜けた感じも、SuUというかすずきたくまという人の面白さだ。

気を取り直してminakoとのボーカルの掛け合いが印象に残る「透明船」へ。ノスタルジックな切なさを感じさせるこの曲もときに優しく、ときに激しく、振り幅の大きな情緒のうねりを生み出していく。ジャムセッションのようにメンバーと呼吸を合わせながら「rebuild」へ。minakoからすずきへとリードボーカルが移り変わったあたりで突如リズムが乱れ、混乱していくアンサンブル。予定調和とはほど遠い、アンバランスな展開が楽曲に一筋縄ではいかない個性を与えている。ここでも歌は曲が進むほどに感情を昂らせ、それを観ている我々の心もそれにつられてざわざわと震え出す。

その昂った感情をそのまま放出するように、本編最後の曲「思想家」に入っていくSuU。重厚なバンドのアンサンブルにのって、すずきもminakoも声を張り上げる。渾身の力でフィニッシュすると、オーディエンスからは一瞬の静寂ののち拍手が巻き起こった。その拍手がアンコールを求める手拍子となり、一度舞台袖に戻ったメンバーが戻ってくる。すずきは11月から始まるHammer Head Sharkとのスプリットツアーを告知すると、「これで終わります」と告げて「コースト」の演奏を始める。

本編とは違う開放的な雰囲気の中、途中で飛び入りしてきた時速・仲川も加わって繰り広げられるセッション。仲川は途中でminakoのアコースティックギターを借り受けてジャカジャカとコードをかき鳴らす。仲川はもちろん、SuUの面々も笑顔。改めてこの2組の絆と相思相愛ぶりを感じさせる光景に、もちろんフロアからは大きな拍手が送られたのだった。

SuU

<公演情報>
『骨-日-』

9月28日(土) 東京・下北沢SHELTER
出演:SuU、時速36km

セットリスト

■時速36km
01. 化石
02. 銀河鉄道の夜明け
03. 七月七日通り
04. 助かる時はいつだって
05. ラブソング
06. クソッタレ共に愛を
07. ブルー
08. ハロー
09. 夢を見ている

■SuU
01. 微振動
02. kaguya
03. あなたの中で死んだようです
04. ennui
05. collage
06. 透明船
07. rebuild
08. 思想家
En. コースト

関連リンク

SuU 公式X:
https://x.com/suutaguu

時速36km 公式サイト:
https://www.36kmperhour.com/

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