10月11日(金) 7:30
<日本オープン初日◇10日◇東京ゴルフ倶楽部(埼玉県)◇7251ヤード・パー70>
大会開幕前、池村寛世の「心は折れていた」という。火曜日に中島啓太とともにアウトコースから出た練習ラウンドは、「面白くないから帰るね」と言い残し3ホールで切り上げた。
その原因は、500ミリのペットボトルでさえもすっぽり埋もれてしまうほどの剛ラフ。「このラフに入ったら出すだけ。その日は雨が降っていて(晴れ予報の本番対策としては)意味がないと思った。外に出て練習場で200球くらい打って調整しました」。本番も「パープレーでいければ」と肩の力を抜いたが、7アンダーのトップで駆け抜けた。
「200点です」。自己評価を聞かれた時の声も弾む。「63」は自己ベストタイに並ぶ好スコアだ。78.571%だったフェアウェイキープ率が要因のひとつになるが、メジャーを前にシャフトを三菱ケミカルのプロトタイプに替えたことで「振っていて心地いい」という手応えを得ていた。ラフを恐れず、積極的にドライバーを握ったのも、その感覚が背中を押してのこと。さらに前日の夕方にオーダーし、初日の朝に届いたばかりという新パターもグリーンで仕事をした。「良かったら(新しいクラブを)すぐに入れる」という池村らしい采配が当たった。
もちろん初のメジャータイトル獲りへの意欲は強いが、それとは別に池村の士気を上げる報せが届いた。「来週のアジアンツアーの出場権が月曜日に下りてきたんです。シードも可能な位置。アジアンツアーのシードも欲しいし、メジャーも欲しい」。17日からタイで行われる「ブラック・マウンテン選手権」が、そのモチベーションの源だ。現在、同ツアーのポイントランキングは55位。同65位以内に与えられる来季シード圏内にいることもあり、ここでの出場権は大きな意味を持つ。
またそれにともない、ここで結果を残したいさらなる理由もできた。「飛行機代が高かったんです」。今年5月26日に結婚したキャディで妻の琴音さんの分も合わせて、往復40万円ほどした“足代”を稼がないといけない。「今は(座席が)プレミアムエコノミー2人分なんですけど、優勝したらビジネスクラスに替えます!」。快適な空の旅を楽しみ、それを海外での結果にもつなげたい。
開幕前日にはインの9ホールを回ったが、アウトコースは火曜日にプレーした3ホール以外は、歩いてコースを確認したのみ。だが、その“予習不足”だった5番から4連続バーディも決めた。それに加えてボギーなし。開幕前からは想像もつかない結果だ。
「4日間このゴルフができるとは思っていない。落としてもトップ10にいれば、決勝で上位を目指せる。伸ばせたら100点です」。このまま残り54ホールを、しっかりと走り切りたい。(文・間宮輝憲)