10月10日(木) 17:07
<日本オープン初日◇10日◇東京ゴルフ倶楽部(埼玉県)◇7251ヤード・パー70>
フェアウェイを外すと、もはや出すだけしか道が残されていないような“剛ラフ”と戦う今年の日本一決定戦。それは2015年から8シーズン連続でフェアウェイキープ率1位に立ち続けている稲森佑貴ですら、「ティショットには神経を使ってました」というほどだ。しかし、神経をすり減らし続けたかいもあり、3アンダーという“みかえり”を得ることもできた。
ラウンド前の心境はというと「3オーバーならよし」。“入ったら1ペナ”と言ってもいいほどのラフを前にすれば、そう思っても不思議ではない。「こんなスコアで回れる予定ではなかった」という言葉を聞いても、いかに難コースかが伝わってくる。ただ、そのなかでも4カ所あるパー3と、430ヤードの10番パー4以外は果敢にドライバーを振っていった。「(フェアウェイを)外したのはゼロ!…だったみたいです(笑)」。“日本一曲がらない男”と呼ばれてひさしいが、その面目躍如ともいえる一日だった。
「フェアウェイからじゃないと何もできない」コースだが、厄介なのはドライバーを振り切ってもしっかりと距離が残るホールが多い点。パー4ながら、524ヤードに設定された3番と、514ヤードの15番は「捨ててる」とキッパリ断言する。それ以外もパー4の2打目で230ヤード残る…という状況もざら。「パー4もパー5として回っています」。セカンドの距離を残しても、とにかくフェアウェイ。グリーンに乗らなくても落としどころはとにかくフェアウェイ、それを徹底した。「乗せるではなく運んでいるんです」。その意識が見事にハマっている。
稲森といえばツアー初優勝となった2018年、そして20年と2度の大会を制している“日本オープン男”でもある。「誰よりも思い入れは強い」。3つ目のトロフィーを手にすることも強く求めている。そのなかで、まずはいいスタートを切ることができた。
今季は夏場に4試合連続予選落ちを喫する苦しい時期も過ごしたが、ここ3試合はきっちりと決勝ラウンドを戦うことができている。「優勝した過去2回(の日本オープン)と比べても一番難しい」というコースだが、「自分は耐えるゴルフの方が合っている」と好相性ぶりも感じている。
練習ラウンドの段階から「どこを狙えばフェアウェイが広く使えるか、ということばかりを考えていた」と入念に準備も進めてきた。「最初は飛ばせる選手の方が有利かなと思ったけど、(フェアウェイを)突き抜けてしまうと剛ラフが待っている。2打目が遠くてもグリーン周りまで運べられれば。そういった意味では自分向きかもしれないですね」。今季もここまでフェアウェイキープ率は80.407%で堂々の1位。自信がさらに深まる18ホールだった。(文・間宮輝憲)