歴史と伝統に浸る飛騨高山の旅。3回目は町の散策と宿や食について。
この町を訪れた人のほとんどが足を運ぶのが、伝統的建造物群保存地区。「古い町並み」と呼ばれる三筋の通りだ。江戸時代、商人の町として発達したところで、出格子の連なる軒、町家の大戸、酒蔵の象徴ともいわれる「杉玉」が下がった老舗の造り酒屋などが並んでいる。観光客で通りが混雑していても、高い建物がなく空が広いからか、のんびりした気持ちで散策できる。
伝統的な町並みで目の保養をしながら、食べ歩きの天国でもあるこの通りではさまざまな「できたて」を楽しめる。飛騨牛の串焼きや肉まん、食べ歩きを前提に薄いおせんべいの上に乗って提供される飛騨牛のにぎり、そしてみたらし団子やアイスなどのスイーツ、焼きたてのおせんべい。さほど空腹ではなくても、おいしそうに食べている人とすれ違いつつ、店先から漂う香りに打ち勝つのは難しい。歩き疲れたら、ひと休みできるカフェも伝統的家屋だから、入店しても十分に雰囲気に浸れる。
刺し子に興味があるなら、前回紹介した「飛騨さしこ」のほかにも、この町並みの中に「小鳥屋」という刺し子糸の店がある。ここの糸もオリジナルで、単色やグラデーションなどほかでは購入できないたくさんの糸がそろっている。
昼食を楽しめる店もたくさんあるが、お昼時には混んで並ぶ店も少なくない。夕食でたくさん食べる予定があるなら、ランチはさくっとおにぎりという手もある。古い町並みのすぐ近くにある「きよ結び」では、飛騨の食材を使ったさまざまなおにぎりが楽しめる。「飛騨牛しぐれ」や、飛騨のフキやサンショウを使った「キャラブキ」、飛騨のネギやキノコを使った「焼きみそ」など、軽食にはぴったり。朝は8時半から営業しているから、素泊まりなら朝食の選択肢にもなる。
撮影スポットが無数にある高山市。日中の混雑を避けてすっきりした写真を撮るなら、早朝だ。そのまま宮川の朝市を訪ねれば、お土産選びもゆっくりできる。住民向けの生の食材はもちろんだが、お土産向きの飛騨牛を使った加工食品や飛騨春慶の食器、漬物や朴葉みそなどさまざまなものが並んでいる。朝食を買ってそのまま宮川の河原に下り、ピクニック気分で朝を過ごす人もいる。川の水は澄んでいて、泳ぐコイを写真に収める外国人観光客も多い。
最後に宿だが、観光地だから選択肢は多い。今回筆者がお世話になったのは「HOTEL WOOD 高山」。古い町並みのすぐ横の一角にあり、散策拠点としては最高の立地だ。飛騨の家具が備えられ、テレビのないシンプルな客室は静かでリラックスできる。夕刻からはラウンジで地酒の飲み比べや生ビール、ソフトドリンクなどが無料。夕食に出かける前のアペリティフや、大浴場のお風呂上がりに一杯を楽しめる。余談だが、部屋に備えられていたスリッパも刺し子の「麻の葉」模様。刺し子好きの旅なら、予想外のところで図案にお目にかかれる宿でもある。
text by coco.g
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