10月9日(水) 7:00
住宅金融支援機構が民間金融機関と提携する全期間固定型の住宅ローン【フラット35】は、2024年10月からペアローンの取り扱いを開始した。共働き世帯が多いなか、当然の流れといえるだろう。今回はペアローンの仕組みに加えて、そのメリットや注意点についても見ていこう。
【今週の住活トピック】
【フラット35】でペアローンの取り扱いを開始/住宅金融支援機構
まず、ペアローンとは何かを説明しよう。
ペアローンとは、一つの物件を購入する際に、同居する夫婦などが、それぞれに住宅ローンの契約をして融資を受ける方法。それぞれの収入に応じた借り入れができるので、どちらかが単独でローンを組むよりも借入金額を増やすことができる。
銀行などの住宅ローンでは、ペアローンを利用できるケースが多い。しかし、【フラット35】は1物件に1ローンが原則であるため、ペアローンは利用できなかった。例えば夫婦のうち、夫がローンを組んだ場合で、妻も自身の収入で住宅ローンの返済に参加したいときには、ローンを契約する夫の年収に自分の収入を合わせる「収入合算」という方法しかなかった。ただし、【フラット35】の収入合算は「連帯債務」(夫婦ともに返済の義務を負う)となるので、このケースなら妻は住宅ローン控除が利用でき、デュエット(ペア連生団信)に加入すれば団体信用生命保険(以下、団信)の対象にもなるなど、民間の銀行などの収入合算よりも条件はよかった。
そしてこの10月からは、【フラット35】でもペアローンが利用できるようになった。ペアローンは、夫婦だけでなく、パートナーや親子でも可能だ。
ペアローンの取り扱い開始には、近年ペアローン利用者が増加していることにあるだろう。
リクルートのSUUMOリサーチセンターが実施した「2023年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、世帯主と配偶者のペアローンは、全体で33.9%(対前年4ポイント増)で、3世帯に1世帯はペアローンということになる。
さらに、共働きの場合は53.8%がペアローンを利用しているので、2世帯に1世帯がペアローンだ。なかでも、世帯年収が1000万円以上の世帯になると、ペアローン比率は76.5%にまで達する。
では、ペアローンのメリットについて、考えてみよう。
ペアローンのメリットその1は、個別に住宅ローンを契約するので、それぞれが住宅ローン控除や団信の対象になる。例えば、夫の団信にだけ3大疾病の特約を付けるなど、それぞれで団信の内容を変えることも可能だ。
ペアローンとは違い、民間金融機関の収入合算の場合は、「連帯債務」ではなく「連帯保証」(相手側のローンの返済を連帯して保証する)の扱いになることが多く、この場合は住宅ローン控除や団信の対象にならない。
ペアローンのメリットその2は、個別の住宅ローンの契約になるので、借入額や返済期間などをそれぞれで決められる。例えば妻の出産を考慮して、妻の住宅ローンについては借入額を少なくしたり、返済期間を短くして早期に返済を終えたり、といったことも考えられる。
住宅金融支援機構の「ペアローン案内チラシ」では、夫は借入額3000万円、返済期間35年(【フラット35】2024年9月最頻金利1.82%※)、妻は借入額2000万円、返済期間20年(【フラット20】2024年9月最頻金利1.43%※)という事例を紹介している。
※性能の高い住宅では【フラット35】Sなどが利用でき、一定期間最大年1.0%の金利が引き下げられる
ペアローンは、単独で借りるよりも世帯年収で借りることで、借入額を増やせるというメリットがある一方、無理なく返済できる額を超えて借りてしまう、つまり借り過ぎのリスクもある。特に産休や育休中などは収入が減少するので、長期的な返済プランをしっかり立てたい。
また、ペアローンはそれぞれが団信に加入するので、例えば、夫が亡くなったら夫の借りたローンは保険で清算されるが、妻のローンは残る。
さらに、離婚ということになると複雑になる。売却に合意して問題なく関係が終わればよいが、相手側が住み続けて自分が出た場合でも、ペアローンが残っているとローン返済の義務を負うし、相手側に資金的な余力がないとペアローンを解消して1本化することも難しくなる。いつまでも夫婦で仲良くということを心がけたい。
なお、ペアローンは、基本的に2つの契約となるので、ローンに関する事務手数料や登記費用などの諸費用がそれぞれにかかってくる。
ペアローンは、上手に活用すると借入額を増やせたりリスクを減らせたりなどのカシコイ資金計画になる。一方で、住宅ローンは長期間返済し続けるものなので、それぞれのライフプラン、夫婦のマネープランをしっかり確認しておくことが必要だ。
●関連サイト
【フラット35】ペアローン(住宅金融支援機構)
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