【写真】櫻井翔“清家”のブレーンとして動く水川あさみ“道上”
水川あさみが主演を務める金曜ドラマ「笑うマトリョーシカ」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)の最終回となる第11話が9月6日(金)に放送される。このたび、最終回放送に向けて橋本芙美プロデューサーのインタビューコメントが到着。キャストとの撮影エピソードや最終回の注目ポイント、本作に込めた思いを語った。
■人間の欲望と謎が絡み合うヒューマン政治サスペンス
同ドラマは、日本推理作家協会賞や山本周五郎賞など数々の受賞歴を持つ早見和真が2021年に発表した同名小説が原作。抜群の人気を誇る若き政治家と有能な秘書の“得体の知れない不気味さ”に気付いた新聞記者が、彼らを取り巻く黒い闇に迫るヒューマン政治サスペンス。
印象的な笑顔とリベラルな言動で人気を集め、未来の総理候補との呼び声も高い若き政治家・清家(櫻井翔)と、そんな彼を支える有能な秘書・鈴木(玉山鉄二)は、どちらも非の打ち所がなく完璧に見える。「でも、この2人…何かがおかしい」。そんな2人の奇妙な関係を暴こうと、新聞記者である道上(水川)は、彼らの隠された過去を探っていく。
■主要キャラクターを取り巻く個性豊かな面々
また、道上の社会部時代の先輩記者・山中尊志を丸山智己、道上の後輩記者・青山直樹を曽田陵介、道上の元夫・旗手健太郎を和田正人が演じる他、清家の母・浩子役として高岡早紀が出演。
さらに、清家と鈴木の福音学園時代の同級生・佐々木光一を渡辺大、大手新聞社社会部の敏腕記者だった経歴を持つ道上の父・兼高を渡辺いっけい(※兼高の高は正しくは「はしご高」)、清家の実父で、官房長官を務めた経験もある有力代議士・和田島芳孝を加藤雅也、明るく前向きで肝がすわっている道上の母・香織を筒井真理子が演じるなど、個性豊かな面々がストーリーを盛り上げる。
■座長・水川あさみは「常に現場の中心で盛り上げてくださった」
――これまでの撮影を経て、主人公・道上を演じる水川さんの印象を改めて教えてください。
水川さん演じる道上は視聴者と一緒に謎を追っていく立場なので、説明セリフがとても多いのですが、それをいかにナチュラルに伝えるか、その表現の仕方が本当に素晴らしいと感じています。
作劇上、本当はハヌッセンではない人をハヌッセンのように見せたりもしていましたが、演者側はそのミスリードを理解した上で演じなくてはいけないので、疑う側も疑われる側もその点がすごく難しかったのではないかと。
そんな中、水川さんは座長として常に現場の中心で盛り上げてくださいますし、先日はスタッフ&キャストにTシャツを作ってくれたりもして。さらに現場が一丸となりましたね。
最終回の道上は、今まで以上にかっこいいです!いろいろ苦悩する姿も描かれますが、最終的に道上がどんな選択をして、どんな言葉を投げかけていくのか、最後まで見届けていただけたらと思います。
――鈴木役の玉山さんについてはいかがでしょう。
玉山さんは、現場で水川さんやスタッフから“タマッセン”と呼ばれてうれしそうに笑っていたり(笑)、意外とお茶目なんです。
鈴木は、悪者かと思ったら実はハヌッセンに狙われていたり、清家との絆が一番強い人かと思いきや突然切り捨てられたりという、視聴者からの見え方が初回からすごく変化した役。切られた後、鈴木が復活していく7話は特に、玉山さんといろいろな話をしました。
改めて衣裳合わせをしたり、鈴木の気持ちを復活までどう持っていくか、ご本人からもご意見をいただいて作っていきました。
その結果、清家や浩子の呪縛から解放されて、再び前を向いて道上と一緒に事件を探っていく鈴木にも、視聴者の皆さまが感情移入できる形になれたのではないかなと思います。
また最終回では、秘書をやめた鈴木が、今後の人生でどういう選択をするのかという点にもぜひ、注目していただけたらと思います。鈴木のラストシーンは、撮影現場で見ていて思わずうるっときました(笑)。視聴者の皆さまにも見届けていただけたらうれしいです。
――清家役の櫻井さんについてはいかがでしょうか。
清家は政策の説明や会見で話すシーンが多いので、セリフの量もかなり多いんですよね。清家は難しい役どころだったと思いますが、演じる上で佇まいからしゃべり方、表情の一つ一つまで、ものすごく緻密に作り上げてくださったと思います。会見の場に佇む櫻井さんはまさに「清家一郎」だなと。
櫻井さんのレギュラー番組のスタッフさんもドラマを見てくださっているそうで、「政治家役が似合う」とすごく言われているらしいです。
■“思い”が複雑に絡み合う第6話は「難しいシーンでもありました」
――6話のラスト、清家が鈴木を切り捨てるシーンは、櫻井さんが表現する清家の冷徹さ、そして鈴木が絶望する姿が視聴者に大きなインパクトを与えたかと思います。
あのシーンは中盤の見せ場だったので、演じる側も相当プレッシャーを感じていたと思います。清家側からでいうと、何が清家の“本心”の言葉で、何が浩子に“言わされている”言葉なのか分からない不気味さと、鈴木を切ることの辛さがひしひしと伝わる表現が入り混じる、いろんな意味を持つシーンだったので。
鈴木が一生懸命清家に語りかけようとするのに、全く聞く耳を持たずにセリフをかぶせる清家のタイミングなど、監督、玉山さん、櫻井さんでディスカッションして作り上げていきました。
いろいろな感情、要素が絡み合う難しいシーンでもありましたが、玉山さんと櫻井さんが見事に演じきってくださり、このドラマにおける名シーンの一つになりました。何度でも繰り返し見たくなります(笑)。
――ここまでの作品作りで大変だったこと、苦労された部分はどんなところですか。
脚本作りにおいては、原作にある回想シーンをドラマのどのタイミングで入れるかに一番苦労しました。BG株事件などドラマ独自の要素を足した分、原作の本線と辻褄が合っているかを考えながら組み立てるのがすごく難しくて。
あとはハヌッセンが誰なのかをどう見せていくかという点。鈴木から美和子、美和子から浩子へ疑惑が移行していくところは、映像だからこそより怪しく見せられる部分で、そこが面白くもあり苦労した部分です。
早見先生にも毎回原稿をお送りし、気になるところがないかを都度ご確認いただきました。清家が“首相公選制”という国民が直接投票で首相を選べる制度を導入しようとするところも原作にはなく、事前にご相談した上で取り入れさせていただいた要素。あれは政治監修の方のアイデアで。
清家が最終的に権力を握っていく様子をより恐ろしく感じさせるためにどのような政策を打ち出すべきか相談した際、独裁的になる危険性をはらんだ政策として、この制度を教えていただいたんです。
調べたところ、過去に何度か実際に議論されたことがあり、たとえば平成14年の懇親会の資料を読んだりしました。これは、ドラマにおいても説明しやすいかつイメージしやすく、いいのではないかと。それで早見先生に、後半でそういう政策を打ち出してもいいかをご相談し、ご了承いただきました。
――清家たちの地元を愛媛にしたことも、原作をリスペクトしてのことでしょうか。
そうですね、愛媛県、特に外泊(そとどまり)での撮影は映像化の条件でもありました。炎天下での撮影でしたが、早見先生も現場まで来てくださって、みんなでたくさん写真を撮りました(笑)。
地元・愛媛のフィルムコミッションの方が、蛇口からポンジュースが出る重いタンクをわざわざ石垣を登って運んできてくださり、キャストスタッフみんなでおいしく飲みました。
地元の方々がお昼にそうめんを作ってくれたりもして。景色も美しい場所でしたが、地元の方々のあたたかいご協力にも心が癒やされました。感謝です!!
■「人は一面だけでは捉えられないというのが大きなテーマ」
――橋本さんが本作で伝えたかったメッセージはどんなことでしょうか。
この作品の企画者である監督の岩田がこのドラマに込めたテーマは「人の内面は外から見ただけでは分からない」ということ。人は一面だけでは捉えられないというのが大きなテーマであり、描きたかったことです。
母親から特殊な育てられ方をした清家が“理想の人物を演じる”という特殊能力があるゆえに、人に所有欲を掻き立てさせ、最終的に国民の人気を得て権力を手にしてしまう。
でも本当の彼はどんな人間なのか?彼の核にあるのは、はたしてどんな顔なのか?原作にも描かれている重要なテーマですが、ドラマ版ではさらに、清家を見続けてきた道上だからこその終わり方をするので、原作と合わせてぜひお楽しみに。
もう一つ、原作にはいろいろな親子が出てきます。清家と浩子、浩子とその母、鈴木と父、亜里沙と母。原作を読んで、それぞれが親からの「宿命」を背負っていると感じました。それを背負った上で、子たちがどんな生き方をしていくのか。その「親子」という部分をドラマ版ではさらに掘り下げたいと思い、道上の父、母、そして息子がいる設定を、早見先生に確認の上、加えさせていただきました。
道上にはBG株事件をスクープした元新聞記者である・父がいて、そして物語の冒頭で父が衝撃的な事故死を遂げるという宿命を背負わせました。その道上が、父の死、過去の汚職事件、そして清家一郎とどう対峙していくのか?
母の復讐心を背負った浩子と、息子・一郎という全ての始まりである歪な親子の関係性と、道上の父から道上へ、そして息子へと代々伝わっていく思いを対照的に描くことで、道上だからこその浩子や清家との向き合い方、家族との向き合い方をドラマ版では肉付けできたらと思いました。
また、道上に息子がいる設定を加えたことで、私個人的には「仕事を持つ親」という側面も掘り下げたいと思うようになりました。
なかなかドラマの中では描きづらい部分もありますが、使命を持って第一線で働きながら子供を育てる親の葛藤、悩み、家族との向き合い方、両方を完璧にできるわけないし、失敗もあるし正解はないですが、諦めずに全力で日々仕事のために子どものために奮闘している姿、ということも、このドラマのひとつの要素として描けたらと思いました。
この作品の本筋はもちろん政治サスペンスですが、ドラマ版は「ヒューマン」要素も色濃くした上で、さまざまなキャラクターが登場し、視聴者の皆さんにも誰かしらに自分のことを投影し、家族について思うきっかけになれたらいいなと思います。
また、堅いことはあまり言いたくないのですが、裏の裏のテーマとして、見てくださった方々が選挙に行きたくなるといいね、と監督や作家陣と話していました(笑)。
――それでは最後に、視聴者の方にメッセージをお願いします。
10話まで、この怒涛の展開をハラハラドキドキしながら一緒に駆け抜けてくださった視聴者の皆さま、本当にありがとうございます!
そしてついに、「ハヌッセンの正体は?」という答えが最終回で確実に分かりますので、視聴者の皆さんも最終回に向けてさまざまな考察をしてみていただくと楽しいと思います。
そして道上と清家が“疑似遠距離恋愛”のような関係性の末にどんなラストを迎え、お互いにどんな言葉を投げかけあうのか。そこもすごく楽しみにしていただきたいです。
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