『記憶にございません!』(19)以来、三谷幸喜監督が5年ぶりにメガホンを握った『スオミの話をしよう』が9月13日(金)より公開される。大富豪の妻スオミが突然姿を消したことで巻き起こる騒動を描く本作。物語の中心となる主人公スオミを演じているのが、いまや国民的女優となった長澤まさみだ。
【写真を見る】ツインテ、ワンレンボブ…長澤まさみの華麗なる七変化!
人によって異なる印象を持たれている多面性のある女性、スオミをコミカルに演じ分けている長澤といえば、これまでの作品でも多彩な変貌ぶりを見せてきたことはご存知の通り。本作でも観客を翻弄する七色の演技を披露しているので、過去作を振り返りつつ、その姿をチェックしていきたい。
■コメディエンヌとして原点的ドラマ「都市伝説の女」
長澤のコメディエンヌとしてのベースとなった作品が、2012年に放送されると深夜帯ながら高視聴率を記録した「都市伝説の女」。翌年に続編も作られたこのドラマは、都市伝説をこよなく愛する女性刑事が、都市伝説にこじつけた珍妙な捜査で、なぜか難事件を次々と解決してしまうという独特な世界観のコメディミステリーだ。
長澤は演じたのは、筋金入りの都市伝説マニアの主人公、音無月子。マニアックな知識を武器に、周囲を巻き込みながら捜査を進めていくマイペースなキャラクターを、まくし立てるような早口でコミカルに表現。かと思えば、真剣な面持ちを浮かべて事件に向き合ったりと、コロコロと表情を変えながらチャーミングに演じていた。
音無は自他共に認める美貌の持ち主であり、鑑識の勝浦(溝端淳平)を誘惑して情報をもらうなど、捜査のためなら美貌を利用することもしばしば。ゆえに劇中では多彩な姿に変身しており、ウェディングドレス姿から「ガンダム」風ファッション、中世ヨーロッパテイストのドレスに、白バイ警官制服といったコスプレでも視聴者を楽しませた。
■「コンフィデンスマンJP」では多彩なコスプレを披露
そんな七変化がよりパワーアップしていたのが、カネの亡者をターゲットにした詐欺師チームの活躍を描いた「コンフィデンスマンJP」シリーズだ。2018年の連続ドラマに加えて3本の映画版まで作られた、長澤にとって最大の代表作と言っても過言ではない。
ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)と共に行動するチームのリーダー的存在である主人公のダー子をケレン味たっぷりに演じている長澤。記念すべきドラマ第1話で見せた肩に桜吹雪の刺青が入った極妻風姿を皮切りに、詐欺師役という役柄上、毎回異なる姿に様変わり。
片言の日本語を話すカーリーヘアのド派手な外国人バイヤーに、ブレザー姿の女子高生、ある時は知的なキャビンアテンダント…と、嬉々とした演技とコスプレで様々な人物に変身。『コンフィデンスマンJP 英雄編』(22)では角刈り姿まで披露するなど、シリーズを通じて抜群のインパクトを放った。
■七変化でミステリアスな女性を演出した『スオミの話をしよう』
なににでもなれるカメレオン女優ぶりを発揮し、コメディで輝きを放ってきた長澤は、最新作の『スオミの話をしよう』でもその実力を遺憾なく発揮している。
著名な詩人、寒川(坂東彌十郎)の妻スオミが突如として失踪する事件が発生。寒川の豪邸を訪れた刑事の草野(西島秀俊)は、自身の元妻でもあるスオミの捜査を正式に開始するべきだと主張するが、寒川は大ごとにしたくないとこれを拒否。
やがて気の短い庭師の魚山(遠藤憲一)、うさんくさいYouTuberの十勝(松坂桃李)、人情派の警官、宇賀神(小林隆)ら元夫たちが屋敷に集結し、捜査そっちのけで誰が一番スオミを愛し、愛されていたのか、議論を重ねていくことに。
スオミへの愛を熱く語り合う男たちだが、彼らの思い出のなかのスオミは見た目も性格もまるで別人。長澤はそれぞれの男から見えていたスオミの人物像を華麗に表現している。ツインテールヘアで奔放な雰囲気を醸しだしたかと思えば、ワンレンボブのおしとやかな女性になったり、さらにはド派手なジャージを身に纏い中国語でまくし立てたりとまさに変幻自在!
サバゲーに興じるミリタリーファッションにタクシー運転手姿、チャイナドレス、三つ編みのセーラー服など、次々と変わるファッションも見事に着こなしてしまうからさすが。スオミとはいったい何者なのか…巧みな演じ分けで物語の謎を深めている。
シリアスな社会派作品にも出演の機会が増え、女優としての幅をグッと広げている長澤まさみ。進化を続ける彼女が得意とするコメディで放つ七色の演技を、本作でも堪能してほしい。
文/サンクレイオ翼
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