映画『アイミタガイ』完成披露試写会が9月30日、イイノホールにて開催され、主演の黒木華、共演の中村蒼、藤間爽子、近藤華、白鳥玉季、草野翔吾監督が登壇した。
【写真を見る】主題歌オファー時の心境を訊かれ「記憶になくて…」と苦笑いの黒木華と、経緯を知ると明かした中村蒼
中條ていの小説「アイミタガイ」を原作に実写映画化した本作では、不慮の事故により親友を失い立ち止まってしまった主人公の梓を軸に物語が展開。梓の恋人をはじめ、梓を巡る人々の想いがつながり、大きな輪になっていく様を描いている。
主人公の梓を黒木が、梓の恋人の澄人を中村が、梓の親友の叶海を藤間が、梓、叶海の中学時代を近藤、白鳥がそれぞれ演じている。『台風家族』(19)で監督を務めた市井昌秀が脚本の骨組みを製作し、2020年に他界した『ツレがうつになりまして。』(11)の佐々部清監督が生前に温めていた企画を、草野監督が受け継ぐ形で完成に至った。
梓については「悩みがすごく多い」と説明した黒木は、すぐそばにいるようなキャラクターで、演じていて気持ちがすごく分かり、人と人とのつながりを感じられる役だったそう。本作ではエンドロールで流れる「夜明けのマイウェイ」の歌唱も担当している黒木。オファー時の心境を尋ねられると「実はあまり覚えてなくて…」と首を傾げたが、すかさず中村が「プロデューサーさんから(歌うことを快諾するように)自然と誘導していたというのは聞いています」とニヤニヤ。「外堀を埋められて…」と照れる黒木は「とてもすてきだったので、歌が得意なのかなと思っていました」との藤間のコメントに「いろいろな機械を使っているの!」と照れ隠しのように返答。レコーディングに立ち会ったという草野監督は「そんなことはない!本当にすてきでした」と笑顔で話し、黒木の歌声に聴き入ってしまったと絶賛していた。
澄人というキャラクターについて中村は「ちょっと抜けていて、タイミングの悪い男。そこだけ聞くと人の神経を逆撫でしそうで、イライラしそうな人と思っちゃうかもしれないけれど、どこか憎めない、愛されるキャラクターです」とニッコリ。続けて「梓にはどうにかして前向きに生きてほしいと思っていて、彼なりに悩んでいます。ユーモアのある人間で、肝心なところでは逞しさも出ている。一人の人間として尊敬できます」と解説していた。
藤間が演じた叶海はカメラマンとして活躍している人物。「何気ない日常を撮っている人。普通の人が通りすぎてしまうような変化に気づき、立ち止まり、そっと手を差し伸べられる人です」と叶海というキャラクターを分析した藤間は、撮影中に彼女の気持ちに少しでも近づけるよう、インスタントカメラで気になるものを撮ってみようと思っていたそう。「撮ってみようかなと意識をするだけで、それまで気づかなかったことに目が行くようになる。ちょっと気に留める、思いやる気持ちがそこにあると、見えないものが見えてくる」とし、寄り添うことの大切さを叶海から学んだと報告していた。
撮影中は草野監督がモニターを見つめ、ニヤニヤ楽しそうにしている姿が印象的だったと、思い出し笑いをする黒木に、草野監督はすばらしいキャストが揃った現場であったことが大きな理由のひとつだとし、「草笛(光子)さんは、脚本の一言一句を大事にしてくださる。日本映画界を垣間見るような身の引き締まる瞬間がありました」と充実感を滲ませる。さらに、草笛、安藤玉恵、黒木の共演シーンでは「レジェンドや大好き、大ファンの3人を目の当たりにして、撮ってる最中に“自分にできるわけない”とビビって逃げ出しそうになった瞬間がありました」と告白。しかし、その場所はとても贅沢な空間だったとし、「かけがえのない時間でした」としみじみ。黒木と梓の祖母役の風吹じゅんの共演シーンもとても思い出に残っているとし、「黒木さんと風吹さん、2人がずっと楽しそうで。そこに中村さんも加わって、あの場所もすごくすてきでした。それが映像に映っていると思います。楽しんでいただければ!」と自身のお気に入りシーンを観客にもおすすめしていた。
中学時代の梓と叶海を演じた近藤と白鳥は、撮影が休みの日も一緒に過ごしていたそう。「2人でお散歩に行ったり、地元の有名なうどんやさんに行ったり。最終日には町中華に行きました。すごく仲良くなった気がします」とニコニコの白鳥。学校のある日に早退して撮影に向かう時の心境など“あるある”話でも盛り上がったと振り返った近藤は「お芝居の悩みもたくさん話しました。普段、そういう話はあまりできないので、すごくいい時間でした」と笑顔を見せていた。
イベントには原作者の中條も登壇。黒木に花束をプレゼントした中條は、登場人物を演じたキャスト全員に感謝の言葉を伝える。さらに「私が描いていない中学時代の梓、叶海にも会えました。草野監督、本当にありがとうございます!」と、映画での新たな出会いにも感謝していた。黒木と藤間も中学時代の梓、叶海の存在が大きかったと力を込め、「(藤間)爽ちゃんとも話していたのですが、2人が演じてくれたから、(大人になった) 梓、叶海がいるんだと思えました。ほんとうにすばらしい女優さんだと思います」と近藤、白鳥の芝居を大絶賛。「ありがとうございます!」と弾ける笑顔を見せた近藤、白鳥に会場から大きな拍手が送られていた。
取材・文/タナカシノブ
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