映画『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(9月20日公開)の完成披露上映会が9月5日、新宿ピカデリーにて開催され、吉沢亮、忍足亜希子、呉美保監督が登壇した。
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作家、エッセイストとして活躍する五十嵐大の自伝的エッセイを原作に、呉監督が映画化。吉沢が主人公を務め、耳のきこえない母ときこえる息子の織り成す物語を繊細なタッチで描く。母親役の忍足をはじめ、父親役の今井彰人など、ろう者の登場人物にはすべてろう者の俳優を起用。脚本は『正欲』(23)の港岳彦が手掛けた。
本作は10月に開催されるロンドン映画祭コンペティション部門、バンクーバー国際映画祭パノラマ部門へ正式出品されることが決定している。「とても光栄なこと」と笑顔の吉沢は「国や文化を問わず、観ていただいた方に伝わる普遍的なテーマだと思いました。これからもっともっと多くの方に広がってくれるとうれしいなと思います」と期待を込めた。
「日本だけでなく海外の方にたくさん観ていただけたことがうれしい」とニッコリの忍足は「コーダの世界と行き来することがあるということ、どう感じてくださるのか。たくさんの方に楽しみながら観ていただきたいと思っています」とコメント。6月に開催された上海国際映画祭では3人でレッドカーペットを歩いたことに触れ、「観客の皆さんと一緒に映画を観ました」と振り返った呉監督は「国を超え、文化を超えて、たくさんの方に通じる物語だと目の当たりにできました」とし、「そこからロンドン、ヨーロッパ、北米、バンクーバーと(映画の)公開を待たずに、こういった朗報をいただけたのはただただうれしいです」と感謝していた。
母親役の忍足について「本当にあたたかい方。忍足さんと今井さんの手話だけは、現場でものすごくすんなり入ってくる。もちろん、僕に分かりやすくやってくださっているのだとは思うけれど、なにを言っているのかが分かるので、本当にあたたかい両親だなと勝手に愛情を感じていました(笑)」とうれしそうに話し、「すごくチャーミングですてきなお母さんだなと思いながら演じさせていただきました」とニコニコ。そんな吉沢のコメントに忍足は優しい笑みを浮かべ、お辞儀をしてお礼を伝えていた。
実生活では娘がいるという忍足は、「息子を持つのはこんなにドキドキ、ワクワクするものなのかと思いました。娘とは違う感じがあり、ちょっと複雑な気持ちでしたが、吉沢さんは本当にすばらしい息子で。手話も少しずつ、自然に覚えて、息子としての手話表現を見てとても感動していました」と優しい眼差しで息子を見つめると、吉沢も自然と笑顔になり、お互いにお辞儀をしながら、感謝を伝え合っていた。
最後の挨拶で呉監督は「どこにでもある親子関係を描いています」と切り出し、「手話に出会って、目と目を合わせてするコミュニケーションについて考えました。私たち聴者のどれだけの人ができているのかを改めて考えさせられる映画になったと思います」とアピール。忍足は「これまでにない映画だと思います。いろいろな家族の形があるし、手話の世界、ろう者の世界、男性の世界、女性の世界。いろいろな世界があって、いろいろな人たちがいることを感じていただいて、皆さんがどんな風に受け止めるのかなというのを楽しみにしています」と反響に期待。
吉沢は「映画を観てどう思うのかは人それぞれあると思います」とし、「僕は、作品に参加して改めて言葉を伝えることの重要性を感じました。ただただ言葉を吐き捨てる瞬間があったり、あえて壁を作って思いを伝える作業をやらない手段をとってしまうこともある。手話と出会って、気持ちは伝えなきゃ伝わらないと感じました」としみじみ。続けて「伝えることって大事だなみたいなことを感じていただけたら幸せだと思います。映画を観て、おもしろいと思ったら、作品の思いを伝えていただいて、一緒に盛り上げてくださったらうれしいです!」と呼びかけ、イベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ
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