意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「救急車逼迫」です。
熱中症急増が要因の一つ。緊急事態か、冷静な判断を。
いま、救急車が逼迫しています。東京消防庁によると、令和5年の救急出場件数は91万8311件ありました。東京消防庁は昨年7月に初めて「救急車ひっ迫アラート」を発出。これは救急車の出場率が90%を超すとSNSやウェブサイトを使い、救急車の適切な利用を呼びかけるというものです。
救急隊の出場件数は、令和3年以降急増しており、令和4年の出場件数は、前年よりも約13万件増加し、翌年はさらに4万6000件増えました。
出場件数が増えている背景には、熱中症患者の急増があります。全国的に異常気象が増え、高齢化も進み、救急車を維持するのが大変になっています。
ただ、救急搬送された80~90万件の人のうち54.2%が医師に「入院の必要はない」と診断されました。冷静に対処すれば、救急車を呼ばなくても済んだケースなんですね。総務省消防庁は、救急車を呼ぶか病院に行くか判断に困ったら、「#7119」の、救急安心センター事業に連絡してほしいと呼びかけています。症状に合わせた処置方法を教えてくれますし、必要な場合には救急車を呼んでくれます。
皆が冷静な対処をできるとは限らないので、ふるいにかけて、救急車を呼んだ後に緊急性がなかったと判断されたら、料金を徴収する仕組みの導入も検討されています。必要なところに必要な医療資源を投入するためにはやむを得ないのではと、僕は思います。
今年も猛暑ですが、今年の7月に熱中症で病院に搬送されたのは全国で4万3195人。統計を取り始めた2008年に次いで2番目に多く、62人が亡くなりました。65歳以上のお年寄りが2万5469人で、発生場所は自宅などの住居が1万7638人と最多でした。熱中症には段階があり、最初は立ちくらみやめまい、足がつるなど。2段階目は嘔吐や倦怠感。さらに進むと倒れ込み意識障害を起こします。初期症状に気づいたらすぐに休んで電解質を補給してください。意識障害が出たり、水を飲めなかったり、涼しい場所に移動しても症状が改善しない場合には救急車を呼びましょう。緊急時の救助隊員は、限られた貴重な医療資源であることを忘れないでください。
ほり・じゅんジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。
※『anan』2024年9月18日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
(by anan編集部)
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