久保建英が「優れた選手」から「最高の選手」になるために必要なこと 長年見てきたマジョルカ番スペイン人記者の見解

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久保建英が「優れた選手」から「最高の選手」になるために必要なこと 長年見てきたマジョルカ番スペイン人記者の見解

9月20日(金) 16:55

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久保建英はラ・リーガ第7節で、日本代表のチームメイトである浅野拓磨が所属する古巣マジョルカとアウェーのソン・モッシュで対戦し、4シーズンぶりとなる日本人対決が実現した(マジョルカが1-0で勝利)。今回はスペインのラジオ局「カデナ・セル」で、長くマジョルカの番記者を務めるアルベルト・エルナンド氏に、同クラブと日本人選手の関係や、久保の成長、浅野の今季のプレーについて言及してもらった。

【マジョルカの日本人選手は浅野拓磨で4人目】 日本人にとって魅力的なカードであるはずのマジョルカ対レアル・ソシエダの一戦は久々の日本人対決となったが、ふたりが出場したのが後半だったため、少し物足りなかったのは事実だろう。

古巣マジョルカと対戦した久保建英photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

古巣マジョルカと対戦した久保建英photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA



ジャゴバ・アラサテ監督に試合前、「違いを生み出せる選手」と警戒された久保は、サイドでの突破力を武器にリードを許していた試合の流れを変えようと奮闘し、浅野はカウンターで相手の不意を突き、ヴェダド・ムリキにいいボールを供給しようとしていたが、どちらのパフォーマンスも控えめだった。

マジョルカは長らくトップリーグにいながら、財政難で衰退した自らを改革し、泥臭くエリートクラブへ復活してきた。この10年間で"ノンプロ"のサッカークラブ(2017-18シーズンはラ・リーガ管轄外の3部に在籍)から、国王杯決勝(2024年)の舞台にまで上り詰めた。

この旅路のなか、大久保嘉人、家長昭博(川崎フロンターレ)、久保建英に次ぐクラブ史上4人目の日本人選手として今夏、浅野拓磨がソン・モッシュ(マジョルカのホームスタジアム)にやって来た。

今季は久しぶりにラ・リーガ1部でプレーする日本人選手が複数になったわけだが、近年、なぜスペインで日本人が減少しているのだろうか。

【優れた日本人選手獲得は容易ではない】 城彰二が2000年に参戦(バジャドリード)したことが、スペインとアジア市場がつながるきっかけとなった。以降、現在までに14人の日本人選手がラ・リーガ1部でプレーしている。言い換えれば20年以上に渡り、1年半ごとに少なくともひとりの日本人選手が欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)のひとつであるラ・リーガのクラブに所属してきたことになる。

現在ラ・リーガでは選手の獲得に際して、各クラブにサラリーキャップが課されるなど、さまざまな条件がつけられている。それに加え、財政面で制限のないアラブ諸国によって新たな競争が生み出されている。

ラ・リーガのスター選手に対する他国のビッグオファーに、スペインのほとんどのクラブは抗うことができず、選手の流出が現実のものとなった。これは少なからずアジアにも影響を与えている。

現在、欧州5大リーグを含むヨーロッパのトップカテゴリーでプレーする日本人選手は100人ほどいる。三笘薫(ブライトン)や鎌田大地(クリスタル・パレス)などはヨーロッパのサッカー界で実績のある選手であり、もちろんほかのリーグでも成功できるだろう。

しかし近年、ラ・リーガの給与水準はプレミアリーグなどに比べて大きく落ち込んでおり、優れた日本人選手を獲得するのは容易ではない。また、このことが大きく影響し、長年にわたってラ・リーガへの関心と質のレベルを引き上げていたクリスティアーノ・ロナウド(アル・ナスル)やリオネル・メッシ(インテル・マイアミ)、ネイマール(アル・ヒラル)、カリム・ベンゼマ(アル・イテハド)などの世界最高峰のスター選手が次々と移籍していった。

スペインを取り巻く環境が厳しい状況にあるなか、マジョルカは久保在籍時の2021年から2025年まで日本企業と契約を結んでいる。株式会社タイカは日本人選手を連れてくる主な原動力となっている。

また、今夏加入した浅野は当初、多くの人々にアジア市場でフォロワーを増やすための単なる新たなマーケティング活動によるものとの見方が強かったが、そのすばらしいパフォーマンスで多くの人々を驚かせている。

【久保建英が真のトッププレーヤーになるためには?】 18歳でレアル・マドリードと契約を結んだ久保のケースは、ほかの日本人と比べるとかなり特殊だ。ラ・リーガにおける新たな発見となって日本でブームを巻き起こし、2021年以降、浅野がやって来るまでラ・リーガ1部で唯一の日本人選手だった。

期限付き移籍で所属したチームでは、2シーズンに渡って所属したマジョルカ時代に最も輝き、通算6得点を記録した(2019-20シーズン:4ゴール、2021-22シーズン:2ゴール)。個人成績は1期目のほうがよかったものの、2部降格を阻止することはできず、2期目のパフォーマンスはチームにとってより実りがあった。

しかし、守備的な仕事を得意とする選手ではなかったため、期限付き移籍先でフィットするのに苦労した。観客からは「守備能力があまりない攻撃をするために呼ばれた少年が、DF陣をサポートするために体力を消耗すべきではない」という指摘もあった。

それは当時、サポーターの間で「久保はもっと守備に尽力すべきか、それとも守備の負担を減らして攻撃に重点を置くべきか」という議論が生まれ、意見が分かれていたからだ。

マジョルカ時代、久保は常に守備のタスクに重圧を感じていた。また、チームが中盤で分断されすぎていたため、光るものがあったにもかかわらず、試合を決めるほどの存在にはなれなかった。

レアル・ソシエダでは、今までにないほどうまく機能しているのは間違いない。イマノル・アグアシル監督指揮下で守備的な仕事から解放され、大きく進化した突破力を生かすプレースタイルを確立した。

マジョルカ時代と比べると、特にプレーの判断力が成熟し、過去最高のパフォーマンスを発揮している(通算17得点/9月17日時点)。欧州カップ戦に毎年参戦しているクラブで、キャリア最高の成績を残している久保のクオリティーは折り紙つきだが、それは以前からずっと備えているものだ。

そんな久保が真のトッププレーヤーとなるためにあと少し欠けているのは、長期に渡って高いレベルを維持することだ。それが「優れた選手」と「最高の選手」の違いである。たとえば、欧州のビッグマッチのような重要な局面での判断力にますます磨きをかけ、主役を演じられれば、今でも十分優れているので、歴史に名を残す選手になれるはずだ。

【浅野拓磨はマジョルカで欠かせない存在に】 日本代表での経験や、ブンデスリーガやセルビアでのプレーで成長した国際的な選手である浅野は、「マジョルカに希望を与え、今のメンバーに変革をもたらせた選手のひとり」である。

浅野はこの夏、騒がれることなくひっそりと、チームに貢献するためにやって来た。彼が主戦場とするウイングは、アラサテ新監督のプレースタイルを最も象徴する重要なポジションだ。ラ・リーガ6試合で早くもその質の高さを見せつけ、存在感を示している。プレシーズンのパルマ市長杯ボローニャ戦で決めた絶妙なコントロールからのファインゴールに、評論家やアナリストたちからため息がこぼれていた。

勇猛果敢なドリブラーで、ボールタッチに非常に優れ、前線でムリキとコンビを組み、早くもアシストを提供する欠かせない存在になろうとしている。

また、浅野について最も重要なのは、その適応力の高さである。レアル・ソシエダ戦後には「このチームはとてもやりやすい」と居心地のよさを語っていた。これは、カリスマ性を発揮する選手なら誰でも歓迎するサポーターを持つマジョルカに、即座にフィットできたことを理解するカギのひとつである。

一方、浅野の欠点は、おそらく持久力にありそうだ。特に試合の後半に入ると体力が底をついてしまう点は彼の限界を示す兆候であり、クリアすべき課題のひとつと言える。

(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)

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