猛暑が去って、キャンプやバーベキューなどアウトドアに最適の季節がやってくる。そんなアウトドア活動をさらに盛り上げてくれると話題のスポーツがモルックだ。発祥の地フィンランドでは、サウナとビールを楽しみながらプレーするというだけあって家族や友達とも気軽に楽しめる一方、企業研修などでも活用されているそう。今回は、国境や世代、性別を超えて誰でも楽しめるモルックの魅力をご紹介しよう。
モルックってどんなスポーツ?
モルックは、フィンランドの伝統的なゲームを元に、1996年に開発された新しいユニバーサルスポーツ。まずはその基本的なルールを説明する。
【道具】
モルック棒
長さ20cmほどの木の棒で、これを投げて競技する
スキットル
モルック棒を投げて倒すピン。全部で12本あり、それぞれに1~12までの数字が書かれている。
【準備】
投げる場所から3~4メートル離れた場所にスキットルを以下のように立てて並べる。
【ルール】
(1)2チーム以上でプレースタート。投げる順番を決め、最初のチームがモルック棒を投げてスキットルを倒す。
(2)倒れたスキットルを、倒れていたその場で立て直す。
(3)次のチームがモルック棒を投げてスキットルを倒す。
こうしてモルック棒を交互に投げ、スキットルを倒して競うというシンプルな競技だが、ただ沢山倒せばいいというわけではない。スキットルには1から12までの数字が書かれていて、1本だけ倒せば書かれている数字が得点になり、2本以上倒したら、倒れた本数が得点となる。最初に50点ぴったりを獲得した方が勝者だ。得点の合計が50点超えてしまうと、25点に戻ってやり直さなければならない。
たとえば、毎回12本のスキットルを倒したとすると、4回で48点。あとは2と書かれたスキットルを1本倒せばいいので、最短で5回で勝ちとなるが、そう簡単にはいかないのがモルックの面白さだと教えてくれたのは、フィンランドのモルックメーカーTACTIC社の、日本で唯一の正規代理店、OHSサプライのナナメキさんだ。
ルールが単純だからこそ戦略が勝敗を分ける
「モルックの魅力のひとつが、戦略性を問われる点です。モルック棒を投げると、当然スキットルは飛び散って転がります。次のチームは飛び散った場所にスキットルを立てたところから始めるので、二度と同じ状況は生まれないんですよ。必ずみんな違うシチュエーションになるので、その都度状況を見て得点方法を考えながら投げなければいけません」(ナナメキさん、以下同)
たとえば、現在の得点が46点だとしたら、4と書かれたスキットルを1本倒せば勝ちとなる。しかし、4のスキットルの手前に他のスキットルがあった場合、確実性を狙ってスキットルを4本倒すという作戦も立てられる。
「ただし、自分の得点ばかり気にしていると相手チームが先に50点を獲得してしまう場合もあるので、常に相手チームの得点も気にしておく必要があります。たとえば、相手があと8点で上がりという状況だったら、相手チームは絶対に8のスキットルを狙ってきますよね。なので自分の番がきたら8のスキットルに思い切り強くモルック棒を当てて遠くに飛ばしたり、8のスキットルにちょっとだけ当てて他のスキットルの後ろ側に隠れるようにしたりして狙いづらくするとか。ルールは単純ですが、そこは技量が問われます」
モルック棒は、下手投げをしなければならないが、持ち方は自由なので、スキットルに対して水平に投げて複数本を狙ってもいし、ピンポイント狙いで縦に投げても構わない。モルックをプレーする人をモルッカーというそうだが、中にはバックスピンをかける強者モルッカーもいるのだとか。
国境も年齢も超えたユニバーサルなスポーツ
モルック親子大会の様子。小さい子どもでも参加できるのも魅力のひとつモルックのもうひとつの魅力は、モルック棒を投げることさえできれば、老若男女誰でもプレーできるという点。小さな子どもから、お年寄り、障がいのある人も一緒に楽しむことができる点から、ユニバーサルスポーツとしても注目されている。
「弊社では年に1~2回、親子大会を開催しています。ルールは親子で1チームとなり、必ず親と子が交互に投げる。そうすると、お子さんの力量を見ながら親がフォローしなければならない場合もありますし、反対にお子さんのほうが上手くて『お父さん何やってるの!』みたいなケースもあります。モルックを通して、屋外で頭と身体を使い、協力しながら、時にはライバルになりながら、ひとつの空間と時間を共有できるというのが魅力ですね」
こうした特性に注目し、OHSサプライには学校の授業や企業研修で使いたいといった問い合わせがあるという。そうしたニーズに応えるため、同社ではモルックの道具のレンタルもしている。東北のある建設会社は、過去に社内で野球やバレーボールなどのレクリエーションを行っていたそうだが、最近は高齢の社員や、女性、外国人技能実習生など、社員が多様化し、ある程度のレベルを求められるスポーツ競技を全員で行うのは難しいという声が上がっていた。そこで、道具をレンタルしてモルック大会を開催したそうだ。
親子大会には多くの家族が訪れる「大会は世代や性別を問わず、みんなで楽しむことができたそうで、いろんな感想をいただきました。中でも印象深かったのは、それまで言葉の壁によって、コミュニケーションがうまくとれていなかった外国人技能実習生の方との距離が一気に縮まったというお話です。優勝したチームのウイニングショットを投げたのが技能実習生の方で、かなり盛り上がったそうです。モルックを介して、新しい会話が生まれ、ひとつの目的に向かって一緒の時間を過ごすことによって絆が深まったと言っていただいたのは嬉しかったですね」
今年の8月、函館で日本初開催のモルックの世界大会が行われた。15の国と地域から約3200人が集まりおおいに盛り上がったそうだ。これからますます競技人口が増えそうなモルックだが、関係者の目標はオリンピック、パラリンピックの正式種目となることだという。今からモルックを始めれば、オリパラの日本代表モルッカーになるのも夢ではないかもしれない。そんな夢のある競技、ぜひ一度お試しあれ。
モルックの大会情報などを知りたい方はこちらから
https://www.molkky-japan.com/
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)写真提供:OHSサプライ
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