羽生結弦が能登半島地震復興支援チャリティー演技会に込めた想い満ちあふれていた力強さ

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羽生結弦が能登半島地震復興支援チャリティー演技会に込めた想い満ちあふれていた力強さ

9月16日(月) 18:35

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9月15日に金沢市のアイスリンクで開催された「能登半島地震復興支援チャリティー演技会~挑戦チャレンジ~」。会場は無観客で、被災地である珠洲市と輪島市、七尾市、志賀町でパブリックビューイングが開催された。また、映像配信サービス「Lemino」を通して有料配信を実施し、その収益は石川県に寄付される。



『春よ、来い』を披露した羽生結弦©Yaguchi Toru

『春よ、来い』を披露した羽生結弦©Yaguchi Toru



「僕自身、現役時代のひとつの大きな目的として、オリンピック2連覇をしたところから被災地への支援や、思いやりみたいなものをスタートにしたいなという気持ちがあって、競技自体を頑張ってきました。



プロに転向してからも、徐々に徐々に被災地やいろいろな災害などに心を馳せることがやっとでき始めています。自分はスケーターであることが一番なので、自分の演技で皆さんに対しての支援であったり、感情に対してのちょっとした助けであったりができないかなと思っています。3.11(東日本大震災)もそうですし、その時々で起こっているいろんな災害に対してもそうですが、今回は特に能登地方の震災に対してのチャリティーということでやらせていただきました」



羽生結弦がこう話した今回の演技会は、輪島高校体育館と中継でつないだ「輪島・和太鼓虎之介」の演奏で始まり、輪島市在住のプロ和太鼓奏者・今井昴氏とコラボレーションした能登高校書道部の制作演技に続き、リンクでスケーターだけの演技が始まった。



無良崇人は「歌詞の中にある『そばにいるよ』『大丈夫だよ』という気持ちを伝える目線を持って滑らせていただきました。日々少しずつでいいので、そういう思いを近くにいる人たちと大事にして進んでいってもらえたらいいなと思っています」と『燦々』を滑る。



鈴木明子は「私自身、選手生活の中で苦しいことも多かったですが、手を差しのべてくれる人たちがたくさんいて支えてもらった。だからこそ、私は受け取ったものをまた誰かに渡したいという気持ちで今日ここに来ました。その力が希望の光となって皆さんに伝わったらいいなと思っています」と、『愛の賛歌』を演じた。



宮原知子は「自分の進む道を見つめて、未来へ向かって光を見つめるというテーマで滑りました。これからもいろんなことがある世界ですが、本当に前を向いてみんなで頑張っていけたらと思っています」と話し、『スターバト・マーテル』を舞った。

そして、羽生結弦は『春よ、来い』を披露。今回、会場は通常のリンクをそのまま使用しており、アイスショー仕様の照明ではなく、練習をしている時と変わらない明るさで開催された。その理由を羽生はこう説明する。



「チャリティーなのでなるべく多くの寄付をしたいということがあって、(会場の設営などに費用をかけず)規模を小さくすることが第一の目標としてありました。制作資金を削減していくにあたって、最終的にリンクも(特別な追加の)照明はなしということになりました」



リンクの普段の照明のままで滑った『春よ、来い』は、計算されたスポットライトがあたるアイスショーとはまた違う印象を与えるものだった。



「どんな時でもやっぱり思いをひたすら込めて滑っていますし、僕らは練習している時はこういう照明なので、そこに対しての気持ちの変化はなかったかもしれないですけど、いつも(アイスショーを)見てくださっている方々には、いつもと違った感覚を感じていただけたら嬉しいです。僕ら自身もチャリティーのための演技ということで、気持ちも全然違いました。プログラムに込める思いたちも、より明確に『能登地方の方々へ』という気持ちで滑りました」と羽生は話す。



4人でのフィナーレは、Mrs. GREEN APPLEの『ケセラセラ』。この曲について、羽生はこう語った。



「僕自身Mrs. GREEN APPLEさんが本当に好きで。この曲自体が持っている、沖縄風になっちゃうかもしれないですけど、『なんくるないさ精神』というか、『どんなことがあっても自分に言い聞かせながら前を向いていくんだ』という気持ちを鈴木明子さんの振り付けで表現したつもりです。ボーカルもそうですし、楽曲のひとつ一つの音をすごく大切にしながら、みんなが希望を胸に滑ったなと感じています」



配信という形式をとった今回の演技会は、石川県以外の他の地域の会場で滑ることも可能だったが、羽生は石川県内での開催にこだわった。 「辛かった方々、今現在辛いと思っている方々、いろんなことで悩んでいる方々の近くで滑りたいと思いました。その地域の力みたいなものや、その現場の空気みたいなものを僕たちは感じながら滑るので、その空気を大切に。そして少しでもこの場所からなんらかの波動として、ちょっとでも空気が動いて地元の皆さんの元に届いてほしいと思いながら滑らせていただきました」



羽生は、6月には能登の被災地を訪れていた。



「ニュース画面や紙面でその現状などを見る機会はありましたけど、実際に生で見た時の『こんなにもこのまま残ってしまっているんだ』という、傷跡の生々しさにはとても衝撃を受けました。何か時が止まっているというか......。地元の方々が『ここでこんなことがあったんだということをいまだに思い返してしまうので、ここに来たくない』と話しているのを聞いて、すごく胸に刺さるものが、痛むものがありました」

そして、その時交流した中学生たちには、こんなことを話したという。



「どんなに辛いことがあっても、いずれ時が来れば何かをしなければいけなくなる。どんなにやりたくなくても、どんなに進めなかったとしても、進まなきゃいけない。そんなことを話しました。震災から半年以上が過ぎて『何ができるか』とか『どんなことが進んでいるのか』など、いろんなことを考えると思いますけど、もうしょうがないって思うしかないところもある。でもその『しょうがない』の中に笑顔とか、その時の一生懸命がいっぱい詰まっていたらいいなって思っています」



羽生が演じた『春よ、来い』には、そんな想いが詰まっていた。繊細な滑りのなかに満ちあふれていた力強さ。そこには、子どもたちに話した「進まなきゃいけない」というメッセージも込められていた。

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