9月11日(水) 17:40
2024年10月18日(金) から10月20日(日) に神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール内特設会場>で上演される、KAAT×山田うん×池上高志『まだここ通ってない』のビジュアルとキャストが発表となった。
長塚圭史が芸術監督を務めるKAAT神奈川芸術劇場では、2024年9月から2025年3月のメインシーズンのタイトルを「某(なにがし)」と題し、多様なプログラムが組まれている。メインシーズンとしては久しぶりのダンス作品として上演される『まだここ通ってない』は、振付家・ダンサーの山田うんと、人工生命研究者の池上高志がコンテンポラリーダンスと先端科学のコラボレーションにより、人間とサイエンスの関係を、またアートとサイエンスの関係を探す取り組みだ。
この作品は、2022年からふたりが続けているプロジェクトの第2弾。池上と、彼が最高科学責任者を務めるオルタナティヴ・マシンによる「原始的なロボットやドローンといった人工生命の群れが、集団としての生命性・生態系を創り出すのではないか」というテーマに、ダンサーの身体が加わることで、人工生命の新たな可能性を探ろうというプロジェクトだ。ダンサーたちと原初的なロボットやドローンの群れとの共生、あるいは身体を持たないAIとの会話などを通して、ラベルを貼られていないむき出しの「生き物」あるいは「ひと」の存在を浮かび上がらせ、シーズンタイトルである「某(なにがし)」を照らすという。
今回のプロジェクトテーマは「記憶」。ふたりは記憶について「わたしたちの記憶は、脳の中だけではなくて、自分の身体に、服や食べ物に、空の色や風の匂いのところに、しまわれている。だから、プルーストの失われた時を求めて、のプルーストは至るところで起こりうる。それは忘れた記憶だけではなくて、まだ行ったことのない場所も気がつかせてくれる。新しい記憶は、記憶によって作られる。それは、AIの時代、大幅に忘れ去られてしまったかもしれない。でも、ダンサーは覚えている。この舞台を通してそのことにもう一度頭を巡らそう」という考えを寄せている。
この取り組みに今回、音楽の高橋悠治が参加。プロジェクトテーマである「記憶」を私たちに伝える一翼を担う。また川合ロン、飯森沙百合、黒田勇、猪俣グレイ玲奈、リエル・フィバックといったダンサーが出演する。
■KAAT神奈川芸術劇場 芸術監督:長塚圭史 コメント
舞踊家と科学者。空間とVR。身体と人工生命。ダンサーとドローン。言葉とコトバ。共生と発見のための未開の道のりに歩み出しますのがこのダンスエクスペリメント。山田うんさんと池上高志さんが、容易には噛み合うことのない激烈な理論を交わし合い、止揚しながら未知へと飛躍します。前人未到のハイパー・エンターテインメントをKAAT神奈川芸術劇場で体感していただきたいと思います。
■構成・演出・振付:山田うん コメント
2022年からスタートした共同クリエイションで「人工知能(AI)」「人工生命(ALife)」と「人間」の世界を作ろうと、トライ&エラー&ディスカッションを重ねてきました。生命とは?感情とは?痛みとは?創作であり研究であり、池上さんとは常にたくさんの問いが生まれます。今回は「記憶」をテーマに高橋悠治さんに参加していただき、人間と機械の生み出す音楽の風景にも挑戦し、衣装はアルゼンチンのデザイナー、マルティン・チュルバさんのお力を得ます。この秋、KAATで次なる一歩として、これまでより先に進んだものをご覧いただけるかと思います。
■構成・演出・コンセプト:池上高志 コメント
2022年から2023年にロボットやAI、VRを使って山田うんさんと創作した作品がとても面白くて、研究で普段やっていることとは違い、人工知能を現実世界に降ろし、もっとAIやロボットの可能性を探究できると感じました。
今回のテーマについてですが、日常生活には常に新しい発見があり、AI、特に巨大な言語モデルのchat GPTやLLaMaを使うことで、一挙に人間の知覚や認識が広がり、同じ風景でも今まで見なかったことが見えてきます。そういうことをテーマに、新しい芸術作品や表現が作れるのではないかという期待をもっています。うんさんの身体表現や身体を使って世界を、動く空間をどう見ていくかということが、言葉だけに頼りがちなAIに欠如している部分を補えると考えられるので、その点に関しても、うんさんとの試みは非常に面白くなるだろうと期待しています。
<公演情報>
KAAT×山田うん×池上高志『まだここ通ってない』
構成・演出・振付:山田うん
構成・演出・コンセプト:池上高志
ダンス:川合ロン、飯森沙百合、黒田勇、猪俣グレイ玲奈、リエル・フィバック
ピアノ:高橋悠治
サウンド、エレクトロニクス:土井樹
VR/ドローン/デバイス設計開発:Alternative Machin
日程:2024年10月18日(金)~10月20(日)
会場:神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール内特設会場>