【写真】木陰で休む緒形拳さん“宗吉”と子供
BS松竹東急(全国無料放送・BS260ch)では、9月30日(月)~10月5日(土)にかけて「闇と光のマエストロ 松本清張特集」と題し、芥川龍之介賞や日本探偵作家クラブ賞(現:日本推理作家協会賞)などの文学賞を受賞した松本清張の映画化作品6タイトルを一挙放送する。本記事では「砂の器 デジタルリマスター版」をはじめとする放送ラインナップを、あらすじや見どころとともに紹介していく。
■桃井かおり演じる強気な容疑者が周囲を翻弄する映画「疑惑」
9月30日(月)夜8時からは、松本自身が脚色した映画「疑惑」(1982年公開)を放送。本作以外にも多くの松本作品を映画化させた野村芳太郎監督による、殺人容疑者の女と彼女を弁護する女弁護士の確執を描いたサスペンス作品だ。
そんな本作は、暴行や傷害、恐喝、詐欺と前科4犯の毒婦・球磨子(桃井かおり)と女弁護士・佐原(岩下志麻)による心理的な駆け引き、せめぎ合い、葛藤が繊細に描かれている。九州で実際に起きた“三億円保険事件”をヒントに、どこまでも強気な容疑者が周囲を振り回していく様子も見逃せない。
また10月1日(火)夜8時からは、松本清張の短編小説『潜在光景』が原作となる映画「影の車」(1970年公開)を放送。旅行代理店勤務のサラリーマン・浜島(加藤剛)は、毎日自宅と会社の往復で、味気ない日々を送っていた。そんなある日、幼馴染の小磯泰子(岩下志麻)に出会い、彼女の自宅を訪問することになる。泰子は6歳の息子・健一(岡本久人)と2人暮らしでつつましい生活を送っていたが、逢瀬を重ねるうちに浜島は泰子を好きになり、浜島は健一を手名付けようとする。しかし、健一はなかなか心を開かない。それどころか、浜島はいつしか健一の眼に怯えるようになり、“健一が自分を殺そうとしている”という突飛な幻想に悩み始める――。
平凡な会社員が、不倫相手の幼い息子に潜む殺意に恐怖を募らせていく本作。道ならぬ愛に堕ちる男女の姿を、ハードなラブシーンも交えてリアルに描いている。
■悪女たちに転落させられる人生を描く「わるいやつら」
10月2日(水)夜8時からは、野村監督が描く長編ピカレスク・サスペンス「わるいやつら」(1980年公開)を放送。総合病院の委員長・戸谷(片岡孝夫)は、病院の赤字を女たちから巻き上げた金で補填していた。そんな戸谷は医者の社会的権威を利用して、犯罪に手を染めていくのだが――。
サスペンスをメインに、大人でエロティックな描写で進行していく本作。誰もが羨むようなプレイボーイの男・戸谷だが、実は物語後半からは悪女たちに惑わされ転落していく人生が描かれる。ちなみに戸谷の周囲を取り巻く女性陣キャストには、実力派女優たちを起用。妻の慶子を神崎愛が、愛人のたつ子を藤真利子が、同じく戸谷の愛人であるチセを梶芽衣子が、そして戸谷が夢中になっている隆子という独身の美人デザイナーを松坂慶子が演じている。
10月3日(木)夜8時からは、ロマンに満ちた作風で松本清張版「伊豆の踊り子」とも呼べるような初期作品を映画化した「天城越え」(1983年公開)を放送。ある事情を抱えた少年(伊藤洋一)が静岡にいる兄を訪ねて、1人天城越えの旅に出た。そこで素足で旅する女性・ハナ(田中裕子)と出会う。しかし旅の道中、ハナが出会った土工が殺され、ハナが容疑者として逮捕されるという事件が起こる。その後ハナは事件について一切口を割らず、証拠不十分で釈放されることになるのだが――。
本作の見どころといえば、NHK連続テレビ小説「おしん」で一躍有名になった田中裕子の美しさだろう。特に彼女の登場シーンは何とも言えない哀愁が漂っており、たびたび見せる優しさも相まって思わず虜になってしまう。そんな田中は、本作で第7回日本アカデミー賞主演女優賞、第7回モントリオール世界映画祭主演女優賞などを受賞している。
■企画から完成まで14年を要した映画「砂の器」
10月4日(金)夜8からは、松本清張を代表する小説を映画化したヒューマン社会派サスペンス巨編「砂の器」(1974年公開)のデジタルリマスター版を放送。迷宮入りかと思われた蒲田操車場殺人事件の捜査を担当する警視庁の今西刑事(丹波哲郎)と西蒲田署の吉村刑事(森田健作)は、“カメダ”という言葉だけを手掛かりに事件を追っていく。そして2人が見たのは、天才音楽家の隠された宿命だった――。
本作では、父と子の逃れられない宿命の絆に加え、栄光の背後に隠された秘密と悲劇、そして逃れられない宿命が描かれる。企画から完成まで苦節14年を要し、“原作超え”とまで言わしめた作品としても知られている。
そして10月5日(土)夜9時からは、松本自身が知り合いの刑事から聞いた事実をもとに書き下ろした短編を、野村監督が映画化した異色のドラマ「鬼畜」(1978年公開)を放送。印刷屋を営む宗吉(緒形拳)は、ある日愛人に生ませた3人の子どもを引き取るハメになる。しかし宗吉の妻であるお梅(岩下志麻)は子どもたちに当たり散らし、地獄の日々が始まるのだった――。
大人のエゴに振り回された“子供たちの世界”と“弱い大人の世界”を対比しながら、“子殺し”という残酷なテーマをリアルに描いた本作。ネット上でも、「観ていてこんなにも怒りがわいた映画はない」「あまりにもショッキングすぎる」などの感想が寄せられている。
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