9月20日(金) 13:40
9月19日(木)、ala Collectionシリーズ第15弾 舞台『いびしない愛』の記者会見が、岐阜・可児市文化創造センターalaにて行われた。
ala Collectionシリーズは、可児市文化創造センターalaが毎年質の高い演劇作品をアーティスト・イン・レジデンスで創作し、可児公演、東京公演、そして全国公演へと作品を発信するプログラム。15回目を数える今回は、第26回劇作家協会新人戯曲賞を受賞した劇作家・竹田モモコによる『いびしない愛』を取り上げる。演出は、これまで劇作家・演出家として数々の名作を生み出し、2022年に令和3年度第72回芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞、さらに令和4年秋の紫綬褒章を受章と、その功績が高く評価されているマキノノゾミが手掛ける。
タイトルにある言葉「いびしない」は、高知県西部の方言(幡多弁)で「汚れた」「散らかっている」という意味。その言葉に象徴されるように、煤で薄汚れた「ふし(節)工場」を舞台に、コロナ禍で工場の経営に行き詰まる次女・喜美子と姉・しおりの姉妹の確執を主軸として、ふぞろいな登場人物らの不格好な生き方を描きながら、人間の可笑しさや愛おしさを伝える物語となっている。
主演を務めるのは南沢奈央。そのほか、東風万智子、佐藤祐基、内藤裕志、長江英和が出演する。
併せて、記者会見の写真と、演出のマキノノゾミ、出演の南沢奈央、東風万智子、佐藤祐基、内藤裕志、長江英和の会見コメントが到着した。
<会見コメント>
■マキノノゾミ
『いびしない愛』の「いびしない」は高知県の土佐清水市の幡多弁で、「残念」という感じの意味だと思ってます。「汚い」「汚れている」「パッとしない」「さえない」といった、あまりいいイメージの言葉ではないんです。
かつお節のふしを作っている「ふし工場」の事務所が舞台になっています。
工場全体が、薄汚れて「いびしない」。僕の中では、「いびしない愛」は、ちょっと残念な感じの愛と思っています。
コロナのちょうど最初の頃、非常事態宣言が出て、オリンピックが中止になって、世の中が完全に止まって、その後、非常事態宣言が解除されて、世の中が少し動き出した頃が、物語の設定となっていて、ふたりの姉妹の葛藤のお話しです。
竹田モモコさんはこの作品で、劇作家協会新人戯曲賞を受賞しました。戯曲としても大変優れています。僕は最終審査員だったので、この作品を読んで、もう本当に笑い転げました。ユーモラスなだけではなく、「人が生きるってどういうことだろう」とか、「もっと楽に生きてもいいんじゃないか」と、観た後に明るい気持ちになれる作品だと思います。可児に滞在してお芝居を作るのは、今回で3回目です。 毎回来るたびに満喫して帰っております。演劇の稽古に集中できる状況は、とてもありがたく、これ以上望めないくらいコンディションの良い環境の中で稽古させていただいています。
■南沢奈央
富田喜美子役を演じます南沢奈央と申します。
私は地方に滞在しながら舞台を制作、そして公演を行うという、こういった形の作品は初めてなので、この土地に来るまでは、正直、馴染めるかなとドキドキしながら来ましたが、今は本当に毎日楽しく過ごさせていただいております。そして大変驚いたのは、可児での、ala Collectionの知名度の高さです。皆さんが演劇自体に興味を持ってくださってることが本当に嬉しく思ってます。街全体で皆さんが応援してくださるんだなっていうのを感じながら、日々稽古を行うことができています。
この作品を観終わった後に、『いびしない愛』というタイトルの意味したものはなんだったんだろうと、それぞれの解釈で 楽しんでいただけたらいいなと思っております。
■東風万智子
富田しおり役の東風万智子です。よろしくお願いいたします。 可児を本当に楽しんでおります。こんなに贅沢な時間を過ごしていいのかっていうぐらい、 自転車でいろんなところに行って、美味しいお野菜に毎日出会い、市民サポーターの皆様もとても美味しいものを教えてくださったりして、 内側から健康になって、元気になっていく感じがしていています。この素敵な作品をじっくり、素敵なキャストの皆さんとスタッフの皆さんと作っている感じです。演劇にこんなに贅沢に向き合える時間っていうのは、本当になかなかないので、すごくありがたく、可児を楽しみながら作っております。
■佐藤祐基
諌山圭吾役の佐藤祐基と申します。僕自身は東京育ちで、方言が何もない人間で、慣れない幡多弁は、出演者の中で断トツ方言の劣等生でございます(笑)。稽古の度に、方言を録音したものを竹田さんにお渡しして、チェックしていただいています。自分の身体の中に幡多弁というものをどんどん入れていかなきゃなと思っています。諌山という役が翻弄される役なので、演出のマキノさんに「バカだね~」と言われていて、これはマキノさんの最大の「誉め言葉」なんですけれども、この「バカだね~」をたくさんお客様に届けられたらと思っています。
■内藤裕志
皆様はじめまして、内藤裕志です。よろしくお願いします。
私は岐阜県出身で、岐阜の言葉は幡多弁と似ていると個人的に思っています。岐阜に帰って来て、岐阜の方言を聞くと本当にほっとします。18歳まで岐阜に暮らしていたので、僕の中にこのDNAがあって、ホッとするんだなと思っています。お芝居の冒頭からバンバン方言が出てくるんですが、皆様もそれをお聞きになるとたぶんホッとすると思います。そのくらい方言には魔力があるなって思ってます。
『いびしない愛』の愛は、姉妹の葛藤を軸に作家の竹田さんは描かれたと思いますが、個人的には、僕の役と長江さんが演じられるヨロさんが劇中では仲が良いという設定ですので、ふたりの関係をどう演じたらお客様に面白く伝わるかな、ホッとされるかな、というのを日々考えながら、お稽古をしています。すごく素晴らしい作品だと自信を持って言えます。よろしくお願いいたします。
■長江英和
ヨロ、吉田喜八郎役の長江英和と申します。よろしくお願いします。僕は愛知県出身です。
岐阜県-愛知県、仲良くやりましょう。(内藤さんと握手)先役の神戸浩さんの後を引き継ぐのが、実は今回2回目でして。見た目とかも違うんですけれども、不思議な巡り合わせかなと思いました。昨日、台本を急遽いただきまして、読ませていただきました。登場人物は私が演じるヨロを含めて、とても残念な感じなんですけれども、とても愛される存在だと思います。神戸さんもとても愛される方なので、僕もこの中に加わって、愛されるようにやっていきたいと思います。どうぞ迎え入れてやってください。よろしくお願いします。
【あらすじ】
舞台は小さなふし工場(通称:なや)「富田商店」の事務所。工場を切り盛りするのは富田家の次女・喜美子。しかし工場の経営は厳しく、加えてコロナ禍によりいよいよ存続が危ぶまれていた。姉のしおりは左腕が不自由だが、快活で目立つ存在。長年そんな姉と比べられてきた喜美子は素直にしおりに助けを求められない。コロナによって止まってしまった世の中、不謹慎かもしれないがホッとした人もいる。喜美子もそんな中のひとりだった。せっかく止まった工場を、しおりはまた動かそうとしている。埋まらない姉妹の溝。そんな折、事務所に忍び込んできた空き巣の男(諫山)と出くわす喜美子。喜美子は諫山に「自分を刺してくれ」と懇願する。期待に応えて生きていくことのめんどくささ。分かり合えない人を側におきながら生きることの息苦しさ。それでもあえぎながら日々を続けることは、愛おしい。「幡多弁」によって描かれる、なやに関わる人々のいびしない愛。
<公演情報>
ala Collectionシリーズ vol.15『いびしない愛』
作:竹田モモコ
演出:マキノノゾミ
【出演】
富田喜美子(次女):南沢奈央
富田しおり(長女):東風万智子
諫山圭吾: 佐藤祐基
坂元昭信:内藤裕志
吉田喜八郎(ヨロ):長江英和
【公演日程・会場】
■岐阜公演
2024年10月9日(水)~10月14日(月・祝)
会場:可児市文化創造センターala 小劇場
■東京公演
2024年10月25日(金)~10月31日(木)
会場:吉祥寺シアター
※新潟、栃木、大阪、香川公演有り
公式ホームページ:
https://kpac.or.jp/collection15/