竹内まりや「ファンのみなさんは、同志のような存在」 デビュー45周年を迎えて思うこと

竹内まりや「ファンのみなさんは、同志のような存在」 デビュー45周年を迎えて思うこと

9月29日(日) 14:00

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23歳で飛び込んだ音楽業界。運命のパートナーと出会い、珠玉のナンバーを生み出し続けたこの45年。輝かしいヒストリーの先に見えるのは、どんな景色?これまでもこれからも私たちを彩ってくれる竹内まりやさんの魅力が詰まった、貴重なメッセージが届きました。
大好きな音楽で、人を幸せにすることができる。音楽を仕事にできた私は、幸運です。

幼い頃に洋楽の魅力に目覚め、高校時代にアメリカに留学、大学で音楽サークルに夢中になり、そこでのバンド活動がきっかけでレコードデビュー。なるほど、10代からミュージシャンを目指していたのか…と思いきや、実はまりやさんは、洋楽雑誌の編集者になりたかったのだとか。

「私が小学生だった頃ですが、星加ルミ子さんという女性編集者が、日本人で初めてビートルズと単独会見し、『ミュージック・ライフ』という雑誌にインタビュー記事を書いたんです。洋楽、特にビートルズが大好きだった私はその記事を見て、“この職業になるしかない!”と思い、そのためにはまず英語をマスターしなければと考えて、高校時代にアメリカに留学しました。大学に入ってからも卒業したら出版社に…と思っていたんですが、留年している上に当時出版社は狭き門でしたから、諦めて。次は旅行会社を目指して、国家資格を取ろう、とまで思ったんです。でも、それもなんか違うかなって。就職、どうしよう…と思い悩んでいる時期に、アマチュアの女の子を集めてレコードを作るという企画に声をかけてもらい、“青春の思い出に”と参加したんです。ギャラまでもらえるというので、いいかなって(笑)」

そのレコードが評判を呼び、本格的にデビューしないかと声をかけられ、“音楽にかけてみよう”と決意。ゆくゆく夫となる山下達郎さんや、大貫妙子さん、加藤和彦さんら豪華作家陣の楽曲でアルバムを制作、歌手活動がスタート。

「でも、蓋を開けたらいわゆる芸能界的な活動が待っていて。音楽作りと芸能活動のギャップが苦しくて、毎日歯磨きをしていると涙が出てくる、そのくらい悩みました。ちょうど達郎と付き合い始めた頃だったので相談したら、自分がやりたいような音楽ができないなら、いったんやめればいいよと言ってくれて。デビューから3年くらいで一度休業し、結婚。そのときにたぶん、本当に自分がやりたい音楽を探すという方向に、舵を切ったんだと思います」

その後、子供を産み、育児に専念した時代も。当時も今も、夕方になったらスーパーに行き、家で食事を作り、一家で夕食を楽しむ。普段の生活は、ごく一般の家庭と変わらない、といいます。

「たまたま家にミュージシャンが2人いるっていうだけ。それ以外は本当に、同年代の女性の生活と変わらないですよ。もう子育ては終わりましたけれど、ママ友として出会った親友たちと1年に数回ランチをしたり、夫がツアーでいないときは一人で映画を観に行ったりして。あと、佳ちゃん(桑田佳祐)と(原)由子ちゃん夫妻に誘ってもらって、ボウリングに行ったりもします(笑)。でも確かに、私の音楽を具現化してくれる山下達郎という人が家にいるおかげで、ごはんを食べながら相談ができたりなど、日々の生活の延長線上に音楽がある、その環境はとてもありがたい。そういう日常を送れてきたからこそ、ここまで音楽を続けてこられたんだと思います」

インターネットの発達もあり、音楽の世界はもはや完全にボーダーレスに。その象徴的な出来事が、2010年頃に起きたシティポップブームであり、海外での「プラスティック・ラヴ」の再評価。それ以来、シティポップブームでまりやさんを知ったZ世代のアーティストからも、「まりやさんの曲をカバーさせてほしい」という連絡がよく来るのだそう。

「この間も声優さんから、ボカロで『元気を出して』を歌いたいとの連絡があり、すごく面白い現象だなって思います。音楽って、歌う人の声色が違うだけでガラッと印象が変わることもあるし、アレンジでまったく別の曲に聞こえることもある。どんな曲になるのか、毎回楽しみです。また、誰かに曲を提供するときは、自分では歌えないようなドラマティックな歌詞を書いたりできるのが、とても楽しい。いずれにしても、いろんな方が私の歌を歌ってくださることは、本当に作家冥利に尽きます。実はいつも、“どんな人に書いたら面白いかな…”ということを考えているので、依頼はいつでもお待ちしています(笑)」

そして音楽を作るもう一つの大きなモチベーションが、待っていてくれるファンの存在。

「45年といっても、活動していなかった時期が何年もありました。それでもアルバムを出すと、聴いて感想のお手紙を下さるファンがいてくださるんです。特に古いファンのみなさんは一緒に年を重ねている感覚があるので、私にとっては同志のような存在。励みであると同時に、待ってくれている存在を信じることが、私にまた新しい曲を書くエネルギーを与えてくれる。私にとってライブとは、そんなファンへの感謝の気持ちを伝える場所なんです。2000年に18年ぶりのライブで日本武道館に立ったときも、“私を見て!”という気持ちは全然なくて、ステージの端から端まで歩きながらみなさんの顔を見て、お辞儀をしながら歌ったのをよく覚えています。デビュー当時から応援してくださっているかもしれない白髪になりつつある男性が、“気分はピーチパイ”って歌っているのを見たときに、こっちも思わず泣けてきてしまって…。来年久しぶりにまた武道館でコンサートをするんですが、また直接みなさんに感謝を伝えられると思うと、今から本当に楽しみです」

『Precious Days』全18曲に加え、配信のみだったプレミアライブなどを収録したライブDVD/Blu‐rayがセットのデラックス盤も。このほか完全生産限定の2枚組アナログ盤、カセットテープの全5形態。10月23日発売。【通常盤(CD)】¥3,410【デラックス盤(CD+DVD/BD)】¥8,800(ワーナーミュージック・ジャパン)

たけうち・まりや1955年生まれ、島根県出身。シンガーソングライター、作詞家、作曲家。’78年にデビュー。1日1回「まりやちゃんおみくじ」も楽しめる45周年記念のサイトもオープン中。

※『anan』2024年10月2日号より。写真・伊藤彰紀(aosora)スタイリスト・斎藤伸子ヘア・松浦美穂(TWIGGY.)メイク・COCO(関川事務所)

(by anan編集部)

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