【写真】ティム・バートン監督の盟友ジョニー・デップ…どんな役もこなす稀代の名優
偉才が集まるハリウッドの中でも、他に類を見ない世界観でヒットメーカーとなったティム・バートン監督が5年ぶりに長編映画に挑む。彼にとって出世作となったホラーコメディー映画「ビートルジュース」(1988年)の36年ぶりの続編「ビートルジュース ビートルジュース」が9月27日(金)に劇場公開される。それを記念し、日本最大級の映画専門チャンネル「ムービープラス」では、監督の才能を堪能できる5作品を特集放送。そこで今回は、多くのファンをとりこにするバートン監督作品の魅力を振り返っていきたい。
■キャリアスタートはディズニースタジオのアニメーター
1958年にアメリカ・カリフォルニア州バーバンクで生まれたティム・バートンは、ウォルト・ディズニーが設立に携わったカリフォルニア芸術大学のキャラクターアニメーション科に進学。そこで製作した作品が注目され、卒業後にウォルト・ディズニー・スタジオの見習いとなった。
6分間の白黒ストップモーションアニメ映画「ヴィンセント」(1982年)で初監督を務めた後、実写短編映画「フランケンウィニー」(1984年)を製作。同作は子ども向けではないというスタジオの判断でお蔵入りになってしまうが、業界内の評判は高く、コメディアンで俳優のポール・ルーベンスが演じる人気キャラクターを主人公にした「ピーウィーの大冒険」(1985年)の監督オファーが舞い込んだ。
ディズニーのスタジオを退職して、初めての長編映画に挑んだバートン監督。見た目は大人だが中身は子どものようで、ナンセンスな笑いを生む特異なキャラクターの主人公ピーウィー・ハーマンが繰り広げるドタバタ劇を、元アニメーターらしく、ストップモーションアニメも取り入れ、本国アメリカでヒットに導く手腕を見せた。
■ダークな世界観とストップモーションなどで作り上げる“バートン風”
そして映画監督として世界に認められ、“バートン風”という作風を知らしめる出世作となったのが「ビートルジュース」だ。マイケル・キートン演じるタイトルロールの“人間怖がらせ屋”ビートルジュースが、幽霊となった若い夫婦に死後の世界から呼び出されて人間界を巻き込んだ騒動に発展していく様子を描く物語。
ブラックユーモアたっぷりのダークな世界、ゴシック風味のある作り込まれた美術、顔を白塗りにして目の周りを黒くしたビートルジュースをはじめとする死者たちの特殊メイク。でもそのダークな不気味さの中に漂うポップさやファンタジーさ。そしてCGではなく物体を少しずつ動かしてコマ撮り撮影していくストップモーションや粘土を用いたクレイメーションによる特殊効果。
独自のイマジネーションにあふれた世界観は、今で言えば“沼る”カルト的人気も呼んだ。バートン監督はそれを30歳の若さで見事に作り上げ、大人も子どもも楽しめる作品としてバートン監督自身初の全米初登場 No.1 を獲得したほか、4 週連続 No.1、11 週連続トップ10入りを果たす大ヒットを記録。興行の成功だけでなく、「第61回アカデミー賞」でメイクアップ賞に輝く評価も得て、名実ともに彼を世に知らしめた作品となった。
■“バートン組”俳優たちと、盟友ジョニー・デップとの出会い
一つずつの作品の成功が数珠つなぎになっていく。「ビートルジュース」の成功は、アクション大作「バットマン」(1989年)へ。ティム・バートン風によりアメコミのヒーローであるバットマンと共に悪役のジョーカーも魅力的なものにし、2作目「バットマン リターンズ」(1992年)も製作された。また、実写だけでなく、ストップモーションアニメ映画もバートン作品に欠かせない。監督を務めてはいないが製作・原案を担当してアイデアを詰め込んだミュージカルアニメーション映画「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993年)に始まり、気弱な若者が死体の花嫁と結婚の誓いを立ててしまうダークかつロマンティックな「ティム・バートンのコープスブライド」(2005年)、そして2012年にはディズニー時代に製作した「フランケンウィニー」のリメイクもされ、バートン監督の地位は確立されていった。
そんなバートン監督の作品では、“バートン組”と言われる俳優たちが世界観を見事に表現。バートン風を体現できる実力、雰囲気を備えている俳優陣との縁をバートン監督は大切にしている。
例えば「ビートルジュース」のマイケル・キートンは、「バットマン」でもタイトルロールを任された。同じく「ビートルジュース」で死者たちが見える人間の少女を演じたウィノナ・ライダーは、監督の代表作の一つである「シザーハンズ」(1990年)でヒロインに。
そして「シザーハンズ」で両手がハサミの人造人間であるタイトルロールに抜てきされたジョニー・デップは、その後、盟友と言われる間柄になり、ミュージカルファンタジー「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)、トニー賞を獲得したミュージカル舞台を原案にしたホラー「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(2007年)、ヴァンパイアに扮(ふん)した「ダーク・シャドウ」(2012年)など、合計8作品でタッグを組んでいる。デップは、バートン監督との出会いで、“イケメン俳優”のイメージから脱しクセのある役もこなせる実力を見せつけたといえるかもしれない。
また、デップに次いでタッグ数が多いのは、「スウィーニー・トッド~」や「ティム・バートンのコープスブライド」の声優など計7作品に出演する、かつて私生活でもパートナーだったヘレナ・ボナム=カーターだ。
新作「ビートルジュース ビートルジュース」では、マイケル・キートンとウィノナ・ライダー、キャサリン・オハラが同じ役で再び顔をそろえるのも楽しみだ。同作は第81回ヴェネチア国際映画祭のオープニング上映を飾ったが、上映に先立って行われた記者会見でバートン監督は、モニカ・ベルッチ、ウィレム・デフォーらに新たなメンバーが参加したことで「さらに自分にとって特別な作品となりました」と語っている。そんな新しさもありつつ、監督にとって5年ぶりの長編映画の本作は、ほぼCGを使わず、監督の原点ともいえる特色と愛が詰まっているという。
最新作を前に、9月23日(月)から27日(金)まで連日夜11時台にムービープラスで放送される「『ビートルジュース ビートルジュース』公開記念!ティム・バートン監督特集」では、記念すべき「ビートルジュース」1作目と、長編デビュー作の「ピーウィーの大冒険」、ジョニー・デップとのタッグ作である「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」「ダーク・シャドウ」、ストップモーションアニメの「ティム・バートンのコープスブライド」の計5作がラインアップ。初期のものから、まさにバートン風を堪能することができる作品がそろっている。
◆文=ザテレビジョンシネマ部
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