筒井康隆の同名小説を、『桐島、部活やめるってよ』(12)、『騙し絵の牙』(21)の監督、吉田大八が映画化した『敵』が、2025年1月17日(金)より全国公開される。このたび、本作が第37回東京国際映画祭コンペティション部門に正式出品されることが決定。あわせて新カットが解禁となった。
【写真を見る】妻の信子と食事を共にしている儀助の姿
本作の主演には、『ザ・中学教師』(92)で初主演を飾り、『ひき逃げファミリー』(92)で第47回毎日映画コンクール男優主演賞、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97)で第21回日本アカデミー賞優秀主演男優賞するなど、1974年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。2013年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12年ぶりの主演映画となる。“理想の上司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授の渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすかが幻想的に登場し、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩らが脇を固める。
小説「虚人たち」で泉鏡花文学賞を受賞、「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞を受賞するなど受賞歴多数、「時をかける少女」等でも知られる原作の筒井。文壇、メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた自身が描く老人文学の決定版である『敵』の映画化にあたり、筒井は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました」と本作が自身の新境地であることを語った。
東京国際映画祭のコンペティション部門では、様々な国や地域、時代などを背景に世界中から集められたオリジナリティーあふれる厳選された15本の作品が「東京グランプリ」や「観客賞」など7つの賞を競う。本年の審査委員長は、『花様年華』(00)やウォン・カーウァイ監督の『2046』(04)などで国際的に知られる香港の俳優、トニー・レオン。近年コンペティション部門に出品された日本映画には、『正欲』(23)や『半世界』(19)など、高い評価を受けた話題作品が集まっている。
今回のコンペティション部門正式出品決定にあたり、吉田監督は「国際映画祭ならではの大スクリーンでお披露目できるとは、主人公も「敵」もまさに本望でしょう。ぜひこの機会に足をお運びください!」と東京国際映画祭での上映に喜びのコメントを寄せた。なお、本映画祭でのワールドプレミア上映も決定している。
今回あわせて解禁されたのは、儀助が行きつけのお店で談笑する姿を捉えた写真や大学の教え子の鷹司靖子や妻、信子(黒沢)との自宅での一幕を捉えた写真。大学教授の仕事もリタイアし、ひとりで暮らす儀助だが、自宅でも外に出かける時でも身なりをきちんと整えているその様子からは、丁寧な暮らしぶりを窺い知ることができる。教え子の鷹司靖子(瀧内)とは自宅の書棚の前での会話を楽しみ、妻の信子とは食事を共にしている夫婦の姿が写しだされている。
はたして“敵”とは一体なんなのか。考察の沼にハマる、人生最大のテーマをどう解き明かすか?ぜひスクリーンで確かめてほしい。
■<コメント>
●吉田大八(監督)
「歴史ある東京国際映画祭のコンペティション部門に選出していただき、大変光栄です。それにつけても『敵』を見つけて戦わずにはいられない人間の業には終わりがありません。映画の主人公も、静かな生活に突然現れた『敵』と対峙せざるを得なくなります。家から世界、さらに遠い次元を経て再び自分へと回帰するそのささやかな戦いを、国際映画祭ならではの大スクリーンでお披露目できるとは、主人公も『敵』もまさに本望でしょう。ぜひこの機会に足をお運びください!」
文/サンクレイオ翼
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