6月下旬に公開されるやSNSなどで口コミが広がり、すでに観客動員数100万人を突破しているアニメーション映画『ルックバック』(公開中)。いまも上映館が増え続けるなど反響が鳴り止まない本作は、9月13日から全国10館のDolby Cinema、ならびに全国26館のDolby Atmos導入劇場でも上映がスタートしている。
【写真を見る】画像で比較!『ルックバック』の繊細な線と音はDolby Cinemaでさらにパワーアップ
鮮明な色彩と幅広いコントラストが特徴のDolby Visionによる映像と、360度が音に包まれた立体音響でこの上ない臨場感を耳から味わえるDolby Atmos、そして映画を観るためだけに考え抜かれたシアターデザインの三者によって、映画への没入感をより一層高めてくれるDolby Cinema。本稿では、『ルックバック』をDolby Cinemaで体感する上での注目ポイントを、劇中の音楽を担当したharuka nakamuraのコメントと共に紹介していきたい。
■漫画への強い想い、足音であらわされる感情の機微…Dolby Cinemaですべて克明に
「チェンソーマン」などで知られる藤本タツキの同名読切漫画を映画化した本作。学年新聞で4コマ漫画を連載している小学生の藤野は、ある日の学年新聞に掲載された不登校の同級生、京本の4コマ漫画を見てその画力の高さに驚愕。それをきっかけに脇目もふらず漫画を描き続ける藤野だったが、縮まらない差に打ちひしがれ、やがて漫画を描くこと自体を諦めてしまう。しかし卒業式の日に京本の家に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで京本と初対面。いつしか2人は一緒に漫画を描くようになるのだが、やがてすべてを打ち砕く事件が起きてしまう。
実写映画ではリアルな色調と高精細の映像によって、まるで目の前に映画の世界が展開しているような臨場感が得られるDolby Visionの映像は、アニメーションでもその持ち味をとことん発揮する。映像の奥行きやディテールがはっきりとわかることで生じる立体感に、直射光から反射光、フレアなどの光の効果までもリアルに表現。明部と暗部のコントラストがしっかり与えられていることで、冒頭の夜の街の俯瞰ショットはもちろん、主人公の藤野が部屋で机に向かっているシーンや教室での孤独感など、漫画にかける想いの強さがより明確に浮き彫りにされていく。
また、通常の上映では聞き逃してしまいそうな些細な音の表現も、Dolby Atmosの立体音響ならば耳のすぐ近くから聞こえてくる。藤野が田んぼに囲まれた道を走る足音、京本の家に初めて上がったシーンでスケッチブックに囲まれた廊下を歩く足音、そして漫画賞の結果を見るために藤野と京本が一緒にコンビニを向かう雪道での足音。登場人物たちの感情の機微をひとつも漏らさずに聞き取ることができ、時折沈黙が落ちる瞬間には劇場全体がまったくの無音に包まれる。Dolby Cinemaならではの鑑賞環境が生みだす至高の体験に、思わず息を呑むことだろう。
■haruka nakamuraの音楽が、主人公2人の感情をより豊かに表現
小さな台詞や音響効果はもちろんのこと、Dolby Atmosの音響環境では劇中を彩る音楽の魅力も一段と際立つ。「スタジオでその音を聴いた時には、まるで聖歌隊のコーラスが天から降ってくるかのような音で感動しました。音楽が生まれ変わったかのような新しい音の体感でした」と振り返るのは、本作の音楽を担当したharuka nakamuraだ。
通常の上映時にも、主人公たちの感情に寄り添った音楽の数々が心に響いたという感想が多々見受けられており、haruka nakamuraはそれについて「感謝の気持ちでいっぱいです」と、自身にとって初めてのアニメーション映画音楽に挑むうえで支えてくれた周囲の人々への感謝を述べる。「映画はたくさんの人が関わって、チームで作られていることを実感しました。そんな全員の努力が結実し、お客様が何度も映画館にリピートしてくれてロングランとなり、こうしてDolby Atmos上映となってくれていることは本当にありがたいです」と喜びをあらわに。
本作の音楽を手掛けるにあたり、haruka nakamuraが大切にしたのは“初期衝動”だという。「初めて原作を読んだ時に、物語から音楽が聴こえてきました。今回劇伴に取り組むにあたり、なるべくその時の頭のなかで聴こえていたメロディを大切にしたいと思ったのです」。そうして映像を観ながら感じるままにピアノを即興で演奏。「主人公たちの感情のように素直に、ストレートに、生まれたままの音を」という言葉通り、なるべくそのファーストテイクを採用するよう心掛けたのだとか。
なかでも、雨のなかを藤野がうれしさのあまり踊りだすシーンで流れる「Rainy Dance」は、haruka nakamura自身のなかでも印象深く、思い入れがあるシーンだという。「原作を読んだ時からとても強く音楽が頭のなかに鳴っていました。その音がそのままレコーディングできた感覚があります」と手応えをのぞかせる。是非とも本編を観る際は、このシーンに注目してほしい。
また、メガホンをとった押山監督からは「音楽で情景や感情を語ってほしい」とリクエストされたことを明かすharuka nakamura。制作過程ではひとつひとつの音楽について押山監督と深く掘り下げながら細部までこだわりを持って作り上げていったようで、原作にリスペクトを捧げながら忠実に映画化することを目指したり、音楽を通して間接的に観客へと届けようとする押山監督の姿勢に共鳴しっぱなしだったことも振り返っている。
そして「監督からのオーダーで興味深かったのは、『藤野の4コマ漫画は小学生が考えたものなので、音楽も学校の音楽室にありそうな楽器だけで作ってみてください』とか、藤野が東京に出てひとりもがいていくシーンは『できるだけ無機質なエレクトロな都会的な音で』など。このシーンは都会の情報量の多さを表現して音数もわざと多く重ねています。Dolby Atmosではより細かな音も聴こえてくると思うので、そのような角度でも音を楽しんでいただく側面もあるのかなと思います」と、音の面での注目ポイントを語った。
視覚的にも聴覚的にも、最高峰の技術によって格段に研ぎ澄まされたDoby Cinemaなら、藤野と京本の感情により接近することができ、作品全体の魅力も一層高められることは間違いないだろう。すでに劇場で本作を観ている人も、新たな発見ができるはずだ。是非ともDolby Cinema、あるいはDolby Atmosの音響で『ルックバック』の世界にどっぷりと没入してほしい!
文/久保田 和馬
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