今年2月に上演され話題を呼んだ6時間に及ぶ大作舞台『インヘリタンス―継承―』で、ベテラン舞台俳優たちを向こうに回し、一人二役を見事に演じこなし鮮烈な印象を残した新原泰佑さん。ヒップホップやジャズダンスなど4歳から習い始めたダンスは多岐にわたり、近年は舞台や映像作品などでも活躍している。
この舞台を通して自分自身を見つめる機会になるかもしれません。
「稽古場で演出家さんや共演者の方々と話し合いながらセッションができるようになった作品でした。そうせざるを得ない状況だったんです。枯渇するまで自分の持っている球を投げていかないといけないというか。でも、それぐらい大変だったぶん、自分の頭や心が養われた気がします。僕はずっとダンスをやってきたんですが、身体表現を特徴的に捉えて絵的にも美しいものにしたい、セリフもその動きに合わせたいという演出家さんの意図にマッチして僕はセリフが言いやすかったですし、毎日稽古が楽しかったです」
新原さんが今取り組んでいるのが、舞台『球体の球体』。昨年度の岸田國士戯曲賞を受賞し、演劇界で注目を集めている池田亮さんが脚本を書き下ろし、演出・美術を手がける。
「稽古の最初にホン読みをさせていただいたんですが、お芝居なのにみんなで普通にしゃべっているような感覚がありました。池田さんが僕たちに当て書きしてくださっていると思うのですが、内容がギュッと詰まっていて体感はあっという間。しかもその後、キャストみんなで池田さんを質問攻めにしちゃったら、すべてにきちんと理由づけて答えてくださったことにも感動しました」
演じるのは現代アーティスト。彼の視点で未来から現在の2024年を振り返る形で物語が展開される。
「僕が演じる本島が中心ではあるけれど、周りが起こす渦に巻き込まれていく感じが面白いです。本島は突飛な作品を作る芸術家ですが、そこには確固とした意志があって、じつは意外と常識人。逆に僕以外のお三方が演じるキャラクターのほうが、個性豊かだと思います。当初は僕も自分の個性を出さないとと思っていろいろ試してはいたんですけれど、今はフラットなキャラクターとして演じたほうがいいのかなと感じるようになっています。お客さんにとって物語の入り口になる役割というか…そうあったほうが見やすい気がしたんです。僕は、もしかしたらこの舞台は、ご覧になった人が作品や役を通してブーメランのように自分自身を見つめる機会になるんじゃないかと思っているんですよね」
『球体の球体』2024年に発表した遺伝と自然淘汰をコンセプトとした作品で注目を浴びた現代アーティストの本島(新原)は、独裁国家の央楼に招待される。その後の彼には思いもよらぬ人生が待ち受けていて…。9月14日(土)~29日(日)三軒茶屋・シアタートラム脚本・演出・美術/池田亮出演/新原泰佑、小栗基裕(s**t kingz)、前原瑞樹、相島一之全席指定8800円梅田芸術劇場 TEL:0570・077・039
にいはら・たいすけ2000年10月7日生まれ、埼玉県出身。近作に舞台『ラビット・ホール』『ロミオとジュリエット』など。4月クールの『25時、赤坂で』でドラマ初主演を果たした。
※『anan』2024年9月4日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・土田寛也ヘア&メイク・国府田 圭インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)
【関連記事】
小関裕太はレジェンドオブハンサム!? 甲斐翔真&兵頭功海と語る、ファン感謝祭秘話
長澤まさみ、野田秀樹舞台は「みんなでその場で作り上げていく感覚が面白いです」
岸井ゆきの、阿部サダヲや皆川猿時は「ドラえもんみたい」 松尾スズキの傑作舞台に挑む