三谷幸喜が脚本と監督を務める最新映画『スオミの話をしよう』の初日舞台挨拶が9月13日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、長澤まさみ、西島秀俊、松坂桃李、瀬戸康史、遠藤憲一、小林隆、坂東彌十郎、戸塚純貴、宮澤エマ、三谷監督が登壇した。
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本作は、『記憶にございません!』(19)以来5年ぶり、映画監督作品としては9作目となる三谷監督の最新作。突然行方をくらませた大富豪の妻、スオミ(長澤)。スオミの失踪を知り、夫が住む豪邸に集結したのは彼女を愛した5人の男たち(西島、松坂、遠藤、小林、彌十郎)。彼らが語るスオミのイメージはそれぞれ見た目も性格も、まったく異なるものだった。一体スオミの正体とは?一つの屋敷を舞台に、三谷監督の真骨頂とも思えるサスペンス・コメディが繰り広げられる。この日より全国372館で公開され、15時までの動員と土日の座席予約数を考慮すると、興行収入30億円を狙える大ヒットスタートを切った。
上映後の会場から大きな拍手を浴びた長澤は「ちょうど昨年のいまごろ撮影をしていましたが、昨年も暑かったなと思い出しました。あっという間に撮影は終わってしまったけれど、本当にいい時間を過ごしたなという思い出に浸っています」としみじみ。多面性を持ったスオミはチャレンジングな役柄でもあるが、「いまできることはやれたのかなと思っていますが、終わった後もスオミはもしかしたらこうだったかもしれない、ああだったかもしれないと、スオミに対してまだまだ可能性を見出せる。すごく楽しい、おもしろい役を演じさせたもらったなと思っています」と充実感をにじませた。三谷監督は「本当にたくさんの引き出しを持っている方。まだあと8つくらいは持っている」と切りだして、長澤も「あはは!」と笑顔。三谷監督は「僕が気づいた引き出しは全部開けました。もうちょっと奥にありそうな気がする。秘密の隠し扉がありそう」と長澤のさらなる新たな一面に期待していた。
三谷監督が「長澤さんは今回の映画でNGを出していない」と明かすひと幕もあった。「NGと言えば、思い出すのは西島さん」と西島は笑い上戸を発動してNGを出したことを暴露すると、思わず苦笑いを見せた西島は「監督の演出の言葉が、本番中も現場にずっと漂っている。それが残っちゃっているんで、おかしくて」と三谷監督による独特の演出が楽しくて仕方なかったとのこと。「その現場の楽しさが作品に残っているんじゃないかと信じて。僕は自分がやっていたことは間違っていないと思います」と続けると、三谷監督が「間違っています」とツッコむなど、丁々発止のやり取りで会場を笑わせていた。
また長澤と遠藤は今回が初共演となったが、ものすごく仲良くなったという。遠藤は「俺は雑談が苦手なんです。しゃべるのが得意ではない。でもまさみちゃんに話しかけたら、『絡みづらい』と言われて。そうやって正直なところがおもしろくて、俺が逆に話しかけやすくなっちゃって。会っている時はずっとまさみちゃんと話していた」と楽しそうに述懐。遠藤から頼まれて、長澤は「憲一」と呼び捨てをするようになったそうで、遠藤は「ありがとうございます。俺から頼みました。芝居では怒鳴られて幸せでした」と目尻を下げた。
長澤は「ちょっと似たところがあって。緊張しいで、自信がないところとか」と遠藤にシンパシーも感じていたといい、「私が一生懸命にお芝居をしている時に、三谷さんからいろいろな注文を聞いていると、濡れた子犬みたいな目で目をうるうるさせて『わかるよ、一緒だよ。まさみちゃんもそうなんだ』ってずっと言ってくるんです」と遠藤の言葉を披露。観客からも笑いが起こるなか、長澤は「わかってくれるというのが安心感になって。遠藤さんとは、とてもいい友情関係を築くことができた」、遠藤も「(長澤が)緊張しいで、人見知りとは全然思えなかった。びっくりした。自分もそういうところがあるので、他人に感じなくなった」と同調していたが、三谷監督は「本当に仲良しで。僕らはみんな10年くらいの知り合いかと思っていた」と証言していた。
5年ぶりの最新作について、三谷監督は「僕は演劇出身の人間なので、演劇のような映画をつくってみたいとずっと思っていた。舞台は1か月くらい稽古をして、1か月くらい本番をやる。本番の終わりぐらいには、俳優さんと役が一体化して、すごい境地まで行くんです。そういうお芝居を映画でも見てみたいと思った。いっぱい稽古をして、みんなで試行錯誤しながら固めていって。そこで生まれるものもきっとあると思う。そんな映画をつくりたいと思って、今回やってみた」と取り組んだ経緯を口にしつつ、「その効果はあったと思う。僕は俳優さんが好きで、俳優さんが輝いている映画が一番だと思っている。長澤さんもそうだし、5人の夫もほかのみんなもそう。本当にステキなお芝居をしていただいた。それが映画として残った。財産だなと思うし、最高傑作になったと思います」と力強くコメント。「オリジナルの映画が力を持つことが、多分日本映画を底上げしていくと思う」と胸の内を語り、会場から拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝
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