第37回東京国際映画祭「黒澤明賞」受賞者に三宅唱とフー・ティエンユーが決定!齊藤工がエシカル・フィルム賞の審査員長に

第37回東京国際映画祭「黒澤明賞」受賞者に三宅唱とフー・ティエンユーが決定

第37回東京国際映画祭「黒澤明賞」受賞者に三宅唱とフー・ティエンユーが決定!齊藤工がエシカル・フィルム賞の審査員長に

9月24日(火) 9:00

10月28日(月)から11月6日(水)に開催される第37回東京国際映画祭において、映画監督の三宅唱とフー・ティエンユーが黒澤明賞を受賞することが決定。またエシカル・フィルム賞の審査委員長を齊藤工が務めることが決まった。
【写真を見る】「黒澤明賞」を受賞したフー・ティエンユー

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東京国際映画祭が黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送りだしていきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、2022年に14年ぶりの復活を遂げた黒澤明賞。昨年2023年はグー・シャオガンとモーリー・スリヤが受賞。今年2024年は山田洋次、奈良橋陽子、川本三郎、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの4名の選考委員による選考の結果、受賞者が三宅とティエンユーに決定した。

三宅は、一橋大学在学中に映画美学校フィクションコース初等科を修了し、卒業後すぐに長編映画を制作開始。2012年には『Playback』がロカルノ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、第27回高崎映画祭で新進監督グランプリを受賞した。2017年に公開した『きみの鳥はうたえる』(第31回東京国際映画祭Japan Now部門出品)が翌年2018年の第92回キネマ旬報ベスト・テンで第3位に選ばれるなど成功をおさめたのち、2022年の『ケイコ 目を澄ませて』(第35回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門出品)は国内で多くの映画賞を受賞した。さらに、今年2024年に公開された『夜明けのすべて』は第74回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に出品された。

選考委員からは、国際的に高い評価を受けた『ケイコ 目を澄ませて』、『夜明けのすべて』において、“人をみる力”、“小さな世界を広げていく力”に大変長けており、人間を見つめる眼差しが、エンディングのありかた、カメラワークの距離の置き方にも表れている。伝統的な技法を取り入れた技術力も高く、これから大変期待をおける監督であると評価され、本年度の受賞が決まった。

ティエンユーは、台北の国立政治大学で日本文学を学び、ニューヨーク大学で修士号を取得。小説家としてキャリアをスタートし、いくつかの権威ある賞を受賞したあと、映画制作へと転向。ウー・ニェンチェンの指導の下、映画の脚本を書き始め、2009年には映画『Somewhere I Have Never Travelled』で長編監督デビュー。2016年の『マイ・エッグ・ボーイ』でも監督を務め、2023年には3作目となる『本日公休』(9月20日公開)を発表。MV監督としても活躍するなど多彩な才能をもつ俊英として知られている。選考委員からは、1980年代の台湾ニューシネマの伝統を現代に引き継ぐ監督であり、『本日公休』は、ホウ・シャオシェン作品の脚本を担当したニェンチェンが制作を担当した作品で、庶民の生活を暖かい目線で描いた手法を高く評価したことにより、本年度の受賞が決まった。

なお、黒澤明賞の授賞式は11月5日(火)に帝国ホテルで開催予定となっている。

エシカル・フィルム賞は、映画を通して環境、貧困、差別といった社会課題への意識や多様性への理解を広げることを目的として、昨年、住友商事の協力によって新設された部門。東京国際映画祭にエントリーされたすべての新作の中から「人や社会、環境を思いやる考え方、行動」という「エシカル」の理念に合致する優れた3作品をノミネートした後、審査委員会で1作品を選出。昨年の受賞作品『20000種のハチ』は、今年1月に『ミツバチと私』という邦題で劇場公開され話題となった。なお本年度のノミネート作品は、9月25日(水)にラインナップ発表記者会見の中で発表される。本年度の審査委員長には、俳優兼映画監督で、撮影現場に託児所を設置するプロジェクトなどエシカルな活動を実践している齊藤の就任が決定。さらに東京国際映画祭の学生応援団から選抜された3名が審査委員を務めることになる。受賞作品の発表、授賞式および審査委員長の齊藤工が登壇するトークセッションが11月5日(火)に開催される予定だ。

また昨年ユース部門で中学生向けに映画制作のワークショップを行っている「TIFF ティーンズ映画教室」の延長線上で開催された映画教育国際シンポジウムが今年も開催されることが決定。今年は「TIFF 映画教育国際シンポジウム2024《世界のこどもたちが映画を待っている》~社会課題と向き合う映画教育~」と題して、パレスチナ、チリ、スペインからゲストを迎え、戦争、貧困、難民などの社会問題を抱えたなかでどのような映画教育が行われいるのか、各国での事例を聞き映画教育の可能性について議論を深める。

話題の新作や日本未公開作が多数上映される第37回東京国際映画祭。会期中に実施されるイベントやシンポジウムにも注目してほしい。

■<コメント>

●三宅唱(黒澤明賞受賞者)

「これまで一緒に仕事をしたすべてのスタッフ、俳優に敬意を表します。誰一人欠けても同じ映画はできませんでした。かつての撮影所の時代と異なり、私たちは撮影毎に非正規雇用の形でその都度集まってーメンバーも多少入れ替わりながらー作っていますが、時間をかけて、少しずつチームとしての映画づくりができているように感じます。この度の受賞は、今後もチームとしての映画づくりをより豊かなものにせよ、ということだと受け止めたいと思います。選考委員の皆様ならびに東京国際映画祭に感謝いたします。ありがとうございます」

●フー・ティエンユー(黒澤明賞受賞者)

「このような栄誉を与えてくださった第37回東京国際映画祭に心より感謝申し上げます。私は、尊敬する黒澤明監督や審査委員の山田洋次監督の作品から、映画には人間の本質を描きだす力があることを学んできました。そして、映画は言葉や時間を超えて、人々に理解や癒しを感じさせることができると信じています。黒澤明賞は私にとってひとつの確証のようなものであり、この名前とともに素晴らしい映画製作の世界に身を置けることは夢のように光栄なことです。東京国際映画祭に心から感謝いたします」

●齊藤工(エシカル・フィルム賞審査委員長)

「ありがとうございます。“エシカル”と言う言葉を調べてみると「法律などの縛りがなくても、みんなが正しい、公平だ、と思っていること」との事でした。そんな現代のエシカルに多少の窮屈さも感じるとともに、映画の歴史を振り返ると、まさにこうやって各時代時代で作品を受け取る人たちが、形の無い映画的倫理観を形成して未来に繋げて来たのも事実だと思います。映画はエンターテインメント。毎年観客として足繁く通っているTIFFに、今回も肩肘張らず、一観客として映画の未来との出逢いを愉しみにしております」

文/スズキヒロシ


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