9月20日(金) 12:00
大人気青春バンドストーリー『ギヴン』。2019年にTVアニメが放送開始され、2020年には『映画 ギヴン』が公開された。アニメ続編となる映画2部作前編『映画 ギヴン 柊mix』が2024年1月に、そして後編『映画 ギヴン 海へ』が9月20日公開となる。
佐藤真冬と上ノ山立夏を中心に紡がれる物語。彼らを取り巻く物語にも注目が集まります。今回は彼らにとって大切な存在である鹿島 柊を演じる今井文也さん、八木玄純を演じる坂 泰斗さんにインタビュー。
前編『柊 mix』では物語の中心となっていた柊と玄純。今回は、真冬と立夏を見守る立場。今井さんと坂さんはどのように今作に取り組まれたのかを訊いた。
――シリーズとしても長年愛されている作品です。収録を終えて、今のお気持ちはいかがでしょうか。
今井文也 ホッとしていますね。普段から作品に挑むまでの準備だったり、演技のプランみたいなものはわりとあるんですけど、特にこの作品って収録現場で自分が想定していなかったテイストのディレクションを多くいただいたりするので、毎回ちょっと胃をキリキリさせながら挑んでいました(笑)。
坂 泰斗 難しい作品ではあるからね。
今井 ね。スタジオがお香のような独特な香りがするんですけど、その香りを嗅ぐたびに「ああ、始まる」と思っていました。
坂 パブロフの犬みたいな(笑)。
今井 そうですそうです。覚えちゃうんですよね。
坂 確かに緊張感はあったかも。
今井
作品に対する緊張感みたいなものがあって、そこは乗り切ったなという感じはあります。
前作の『柊mix』のときもそうでしたけど、舞台挨拶のときとか、みんなで会ったときは、和気あいあいとしていました。「こういう感じだったんだね」とか「終わっちゃうね」みたいな話が多かったりするので、今回も公開までそういう会話が続くんじゃないかなと思ってます。
坂
関わらせていただいた年数で言うと約6年ぐらいなんですけど、僕自身の中では終わった感覚はないんですよね。物語として、演じさせていただいた玄純の視点から考えたら、まだ途中も途中で。ここからも彼の人生は続いていくという視点です。役どころ的に玄純や柊は、真冬たちよりもある意味、早く踏ん切りがついた2人でもあるので、『海へ』ではわりと新たなところに行くという視点で晴れやかな気持ちで挑めました。
今は、終わっちゃったな、という気持ちはあるんですけど、先に進んでいく気持ちの方が強いですね。
――1月に公開になった前編の『映画 ギヴン 柊mix』はおふたりが演じる柊と玄純にスポットが当てられた作品です。反響はいかがでしたか?
坂 玄純に関してはTVアニメの中で話しているシーンって少ないんですよね。
今井 僕らは結構そうですよね。玄純はただでさえ無口なキャラですし。
坂
もちろん、そこでも得られる情報はあるんですけれども、どういう人となりかは原作を読んでいる方以外はみなさん想像していただくしかなかったわけじゃないですか。
僕らもいざ「『柊mix』を録るぞ」となったときに、さらに読み直して、読み直して。この言葉を言うのはどうしてなのかを考えていましたね。
玄純って今まで事前情報が僕らもなかったので、柊に対してどういう思いなのか、ということもあったりして、僕なりに最大限、彼に寄り添える解釈を持って臨んでいました。彼はすごく複雑な感情を持っている人で、言語化をするのがかなり難しいキャラクターなんですけど、映画を見ていただいたみなさんが「腑に落ちた」とおっしゃっているのを拝見したときに、彼の説得力を持たせることができて良かったな、と思いましたね。
今井 玄純の感情の揺れ動きだったりとか、もちろん映画に描かれているのもそうですけど、みなさん読み解きがすごかったんですよね。
坂 そう。ファンの方々が僕らと同じ、もしくはそれ以上に作品を愛してくださっているので、その方々に納得していただけたことは僕としても嬉しいです。
今井 自信にもなりますし。
坂 そうそう。「そうだったんだ」とか「このキャラは確かに」って新しい発見をしていただけるのは役者冥利に尽きるな、と思いましたね。今井さんはどうでした?
今井 大体原作の6巻ぐらいから、ようやく柊と玄純の深掘りが始まるんですよね。そこで気づいたことがたくさんありますよね。
坂 ありますね!
今井 「玄純はそんな感じなんだ!」と思うこともいっぱいあったし、「柊はこんなことを言うんだ」とか。そういうところが当然、お互いにあったと思うんですけど、僕もコメントや反響を読ませていただいたときにみなさんが「柊にぴったりでした」とか「柊のイメージ通りでした」って言っていただけたのを見て、一安心しました。ずっと楽しみにしてくださっている方がたくさんいらっしゃいましたし。
「あくまで普通に生きている状況」がこの作品の色――そんな『柊mix』を経て、今回はどのような演技プランで取り組まれたのでしょう?
坂
この作品全体を通して言えることではあるんですけど、意味のあるセリフに大きく意味を持たせないようにはしています。
アニメーションで我々ができることって声だけなので、声の強弱だったり、含みを持たせたりすることは可能なんです。でもこの作品の色として、それはしていなくて。みんな普通に生活している中で、意味のあるセリフを立たせようとしないじゃないですか。意味合いとしてめちゃめちゃ重要なセリフだけど、そこにどのように重きを持たせるのか、については逐一確認してやらせていただきました。
今井 SEとかBGMとかも入りますしね。
坂 それによって何気なく言っていても、より印象に残ったりもします。音響監督だったり監督たちが全ての音を含めてのプランで考えてくださっているので、確認する中で初めて繋がったりもするんですよね。一緒に作っているな、という感覚はすごく強かったですよね。
今井 台本を読み解いていく中で、彼らのキャラクター性がわかるなとか、こういう意味合いで言っているんだろうな、みたいなところは、やっぱりある程度汲み取って読むところもありました。でも、僕も坂さんと同じく、あまりわかりやすくやりすぎないということには気をつけていました。それこそ今回は一旦の締めくくりとは言っているものの、我々がその締めくくりとしてやる必要は本当に何もないと思うんです。どうしても劇場で顔がアップになったり、何か決めなきゃいけないところも、アニメとしてのキメというよりは、生きている人間として、ということを大事にしていました。だからわりと収録のときはスムーズでしたね。
坂 『柊mix』で我々は一種完成された感じはあるんですよね。
今井
役どころもそうですよね。
今回葛藤するのはどちらかというと真冬たちなので。
坂 揺らぎはなかったかもしれないですね。
「人間って変わるんだな」――改めて、お互いの役の魅力というのはどういったところに感じますか?
坂 僕から見て柊はやっぱり華。彼がいてくれないと玄純は成り立たないと思うんですよね。ある種、空気みたいな……居て当然だけど居てくれないと玄純っていうキャラクターは存在できないというか、だから特別自分のものにしたいというわけではないじゃない?
今井 うんうん。
坂
居て当たり前なんだけど、居てくれないと困るっていうアンバランスな感じ。
ほかの人は、柊のことを華のある明るい、人を惹きつける素敵な人だ、と感じると思うんですけど、玄純が見ているのは多分そこじゃないのでは、というところもありますね。
今井 今回の映画もそうですし、『ギヴン』の原作とか、いろんな情報を経て思うのは、人間って変わるんだな、ということですね。玄純を見ていると特に。今まではブレがないように見えていた玄純の、本当にふとしたところなんですけど、ある箇所で大きな気持ちの動きも感じましたし。あとは当人も気づいているのか分からないですけど、自ら変わろうとしていたりもするのかな、とか。そういうところがすごく生々しいな、と思います。
坂 そうだね。生きている人の感じだよね。
今井 人間、時間が経てば考え方だとかいろいろ変わってくると思うんですけど、そういうところがアニメのキャラクターの枠に収まりきってないような感じがして、人間味があるな、と思いますね。
もし、進む道に迷ったとしたら――作中では恋や進路に悩むキャラクターたちの姿が印象的です。おふたりは進む道を決めるときに、大事にされていることはありますか?
今井 僕はわりとスッと決めますね。
――直感型ですか?
今井
「やりたいんだったら、やるしかないでしょ」みたいな感じです。
ただ、メリット、デメリットがあるんですよね。ひとつのことにハマると、ずっとそればっかりやるので伸びるスピードは速いかなと思います。……なんですけど、それ以外は本当におざなりになっちゃうんですよ(笑)。私生活が全部台無しになっちゃう。全てがダメになった状態でひとつのことだけに集中するので、食事をとれていないときは大変でした。
――だからこそ、つかめるものもあるんでしょうね。
今井 そうですね。一長一短だなと思いつつ。でも、そのぐらいのめり込めるものがあるのはよかったな、とも思います。
坂
僕も基本的に「やりたいこと」と「こうありたいな」っていうものを優先します。
まず自分の中で目標を定めて、そこに至るためのプロセスを考えて、考えが完成したら「よし、やるか」というタイプな気がします。目標はわりとパッとできるんですけど、そこに至るまでを考える時間は長い気がしますね。
――作品を観られる方の中にも、登場人物が何かに迷っている姿に共感する方もいらっしゃると思います。迷っている方におふたりがアドバイスをするとしたら?
今井
「楽しい方を選ぼう!」ですね。
大事だと思いますね。悩んでいるときは、続けていてしんどくない、とか、こっちの道の方が気持ち的に楽だな、というほうを選んでおくといいと思います。僕も最近そういうことがあったんですけど「こっちのほうが楽しいな」というほうを選んだものが、自分なりに納得する形で収まったので。
坂 根本的には同じことなんですけど、僕は少し違う視点で、「自分自身が言い訳できない方を選んだ方がいい」ですね。「こっちを選んだけど、あっちの方が良かったかな?」とならない選択というか。こっちを選んだなら、最終的にちゃんと自分が納得できる方を選んだ方がいいんじゃないかなと。でも、多分結局は今井さんの言っていたところにたどり着くんですよね。
今井 通ずるところはありますね。
坂 だから後悔しない、言い訳をしない方向に選んでいけばいいんじゃないかな、と思います。
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『映画 ギヴン 海へ』9月20日(金)より全国公開
取材・文/ふくだりょうこ撮影/友野雄