10月2日(水) 17:00
今年1月1日に最大震度7の地震に見舞われた、能登半島。追い討ちをかけるような9月の水害に日本中が心を寄せる中、エンターテインメントはどんな力になれるのか。9月30日に東京都目黒区の旧前田家本邸洋館にて開催された、令和6年能登半島地震復興祈念公演能登演劇堂舞台劇 『まつとおね』の制作発表記者会見で、ダブル主演をつとめる吉岡里帆、蓮佛美沙子とスタッフ、七尾市長が思いを語った。
2025年3月に石川県七尾市の能登演劇堂で上演される舞台『まつとおね』は、戦国の世に時代に翻弄されながら友情を育んだ前田利家の妻・まつと、豊臣秀吉の妻・おねの物語だ。
「このプロジェクトがスタートしたのは震災前。戦国時代を生き抜いたふたりの女性の姿を通して平和への思いを訴えたいと企画しましたが、震災、そして9月の水害を経て“どんな時でも生き抜いてほしい”というメッセージをお届けする公演になります。私たちには道路工事も水道工事もできないけれど、“心の復興”のお手伝いができれば」と、七尾市出身のプロデューサー近藤由紀子氏。
前田利家の妻・まつを演じる吉岡里帆は、9月の水害の直前に能登を訪れていたことを明かし「どうしてこんなに大変なことが続いてしまうのだろうと心が痛みました。自分にできることは何だろうと考えたとき、悲しみの縁を一緒に並走することも大事ですが、前を向くためのきっかけを外から持ってくることではないかと。復興ののろしをあげるようなエネルギーを届けるという強い意志で、この公演に携わろうと思っています」と心情を述べた。
豊臣秀吉の妻・おねを演じる蓮佛美沙子も「正直なことを言うと、先日の大雨の被害が大きかった地域の方にとっては、この会見が届くこと自体がお辛いことになるのかもしれないと感じてもいます」と葛藤を口にしながらも、「そんな方々に向けて何ができるかも考えながら、誰のことも置いてきぼりにせず、作品を通して“ひとりじゃない”ことをお伝えできれば」と、言葉を添えた。
脚本家の小松江里子氏も以前手掛けたドラマ『花嫁のれん』(2010)の舞台でもあった七尾への想いは深い。「まだブルーシートを張ったままの家で生活している方もいらっしゃることも知って、心を寄せていただきたいです」と語りつつ、まつとおねがお互いの夫が織田信長の家臣だった頃には長屋の隣同士に住み親しく交流していたことは歴史的文献にも残されていると披露し、「戦国時代と言いますと遥か昔のようですが、世界では今も戦争が起きていて、人の世は変わっていない。激動の時代をふたりがどのように生き、その友情がどう形になったのかを描いてみたいと思いました」と、稽古を前に既にまつとおねのように関係を深めつつある吉岡と蓮佛に期待を寄せた。
今回の作品では、歌舞伎俳優の中村歌昇が演出を手掛ける。「演出に携わるのは初めて。そもそも歌舞伎には演出家がいないので出演者が舞台を創り上げていますから、私の手に負えるのか……。一度はお断りしようかとも思いましたが、せっかくのありがたいお話なので、地元の方々に心が安らぐような作品を一緒に作っていけたら」と抱負を語った。また、この夏に能登に足を運んだという歌昇は能登演劇堂の国内唯一とも言える舞台機構について「舞台後方の扉が開くとその先には一切人工的な建造物がなく奥の山までが見えるんです。3月の公演時期はまだ寒いようですが、演出に取り入れる方向で考えています」とプランの一端を明かした。
「令和6年能登半島地震復興祈念公演」と冠した今回の舞台には、七尾市内の中学生を無料で招待することも決まっているという。茶谷義隆七尾市長は「能登は今、一丸となって復旧・復興に取り組んでいます。今回の公演で全国の方が足を運んで自然が豊かで美味しいものがたくさんある能登の魅力を知っていただくことが、能登の人々に元気や勇気を与えてくれるはず」と締めくくった。
エンターテインメントに携わる人々だからできる応援があり、エンターテインメントに触れることで私たちにもできる応援がある。2025年3月は能登演劇堂舞台劇『まつとおね』に足を運び、平和への思いや生き抜くことの大切さを考えてみたい。
取材・文:清水井朋子
<公演情報>
令和6年能登半島地震復興祈念公演七尾市主催 能登演劇堂舞台劇
『まつとおね』
出演:まつ吉岡里帆 / おね蓮佛美沙子
ナレーション:加藤登紀子
原作・脚本:小松江里子
演出:中村歌昇
音楽:大島ミチル
企画・プロデューサー:近藤由紀子
2025年3月5日(水)~3月23日(日)
会場:能登演劇堂(石川県七尾市)
プロモーションドキュメンタリ―映像ショートVer.
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公式サイト:
https://engekido.com/まつとおね/