4年間で約42万円の学費値上げを発表した東京大学。「コスパ的に目指す価値はあるのか」現役東大生の見解は

4年間で約42万円の学費値上げを発表した東京大学。「コスパ的に目指す価値はあるのか」現役東大生の見解は

10月6日(日) 15:53

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2024年9月10日、東京大学が学費値上げを正式に発表しました。従来は53万5800円でしたが、来年度入学者から64万2960円となります。4年間合計で42万8640円の値上げとなります。

では、この値上げは人々の足を東京大学から遠ざける要因になるでしょうか?私はそうは考えません。国内でも最高峰の研究が行える大学であり、卒業生の進路も輝かしいものばかりだからです。

学費値上げした東京大学。進学にかかるコストは回収できるか

労働政策研究・研修機構による『ユースフル労働統計2022』によれば、男性の生涯年収平均は中学卒で1億9千万円、高校卒で2億1千万円、高専・短大卒で2億1千万円、大学・大学院卒で2億6千万円。また、女性は中卒で1億5千万円、高校卒で1億5千万円、高専・短大卒で1億7千万円、大学・大学院卒で2億1千万円とされます。

一方で、東京大学卒業者の平均生涯年収は、コンサルティング会社AFGの推計によれば、4億6126万円。2億円以上の差があります。

私は全国の高校生に進路講演を行っていますが、学生や親御さんから「私学は無理」「実家から通える大学じゃないと厳しい」と言われることがあります。確かに様々な事情があるでしょう。

ですが、金銭的事情に絞れば、「進学にかかる諸経費」と「生涯賃金の上昇幅」を比べて、前者が後者を上回らなければ成り立ちません。進学に1,000万かかっても、生涯年収が1,000万円以上アップするならば、「多少無理しても進学すべき」と結論付けられます。

東京大学の場合ならば、明らかに進学コストに対して、未来で回収できるコストのほうが大きい。今回は、日経転職版2023の「東京大学卒業者の世代別平均年収」から、東大卒の生涯年収を推計し、東大進学にかかるコストが回収できるかを考えます。

東大進学者の平均年収は1134.3万円

日経転職版による各大学卒業者の平均年収では、東京大学卒業者の平均年収は1134.3万円。この数字は、いうまでもなく非常に高いもの。国税庁による「令和四年分民間給与実態統計調査」では、同年の日本人の平均給与は458万円でした。

これは男女の給与を平均したもので、男性の平均年収は563万円、女性の平均年収は314万円と出ています。また、中央値に関して言えば、「民間給与実態統計調査」および「賃金構造基本統計調査」より、男女混合だと360万~380万程度、男性だけなら400万程度、女性だけならば320万~330万円程度と推計できます。

では、東大卒業者は、いったい何歳頃から年収1,000万円を突破するのでしょうか。先述した日経転職版によれば、各世代平均給与は20代653万、30代972万、40代1168万、50代1450万でした。

実のところ、このデータは私の肌感覚にかなり沿うものです。たとえば、東大生に人気のコンサル業界大手のBIG4各社(デロイトトーマツ・PwC・EY・KPMG)は、どこも初年度から500万~600万円程度の年俸を支払うそうです。

また、三大商社として名高い三菱商事は、20代後半から平均年収900万~と、1,000万超えも夢ではない。

すなわち、東大生にとって、年収1,000万円は特段難しいレベルではない。 仮に上述の表のとおりに各年代を過ごした場合、推計生涯年収は4億490万円。これに60代の収入が乗るので、AFGの推計もあながち嘘ではなさそうです。

繰り返すようですが、この数字は一般的な大卒労働者の平均を2倍近く上回ります。一般大卒男性の場合、生涯年収が2億6000万円程度と推察されるため、東大に合格するだけで、潜在的には2億円を稼いだといえなくもありません。

では、東大に通うためのコストはどれほどでしょうか。今回は、もっとも厳しいであろう 「上京して都内に一人暮らし、学費自弁」 のパターンから、総コストを算出します。

“最低限の生活費”はいくらか

東京都内に安く下宿する場合、入寮が現実的です。東京大学には、「三鷹国際学生宿舎」という公式の寮があります(通称三鷹寮)。寮費が非常に安いことが特徴で、2024年10月現在のデータでは月額8850円。

ただし、「住むバイト」とも揶揄されるほどに劣悪かつ過酷な環境であることも確かで、三鷹寮に入寮したほとんどの学生は、3年進学時までにここを抜け出します。

退寮後の住居は様々な選択肢がありますが、別の寮だとおおよそ5万~8万程度が相場のようです。もちろん一般のアパートなどに住む選択肢もありますが、家具家電を揃える手間が考えられるため、ここでは、駒場滞在の2年は三鷹寮に、後期課程は月額7万円の寮に滞在すると仮定します。

三鷹寮では食事が出ません。後期寮でも同様と考えると、月に食費が3万円程度かかります。通信費は月額1万円、交通費が年間で5万円と仮定します。すると、最終的な生活コストは、4年間で257万2400円。もちろん、生活上の知恵などで多少切り詰めることは可能。

学部時代にかかるコストは合計で540万円

来年度より東京大学の学費は64万2960円に値上げされます。4年間で257万1840円。さらに入学金で28万2000円かかります。学費免除制度の使用も考えられますが、出身世帯の年収が十分低いことと、申請者が十分優秀な学力を有していることが条件となります。

ただし初年度については「東大入試合格をもって十分に優秀な学力をもつ」と判断されるため、年収条件さえクリアできればほぼ通ります。

あとは、教科書代やパソコン代など諸経費が掛かります。教科書はメルカリなどで古い版をそろえてもよいのですが、たまに「安物買いの銭失い」になる可能性が。

パソコンについては、生協推奨品だと、たかだかWordやPowerPointをいじる程度の学部1年生、2年生にとってはオーバースペックもいいところ。何も知らずに生協でパソコンを買わされた身としては、これの購入は全くお勧めできません。

同じスペックなら、せいぜい7万円か8万円出せば買えますから、おとなしく専門店の店員と相談して選んでもらうべきでしょう。教科書代は年間で5万円、パソコン代は4年間使えるものを8万で購入すると仮定します。すると備品代合計で28万円。

さて、これである程度上京一人暮らしに必要な費用が出そろいました。 合計すると、542万4240円。 確かに大金ですが、東大進学者の輝かしい年収経歴を見る限りでは、十分に回収可能な範囲ではないでしょうか。

奨学金を利用してでも東大にはいくべき

この金額をゼロから用意する場合、奨学金の利用があげられます。例えばJASSOが主催する奨学金であれば、給付型、無金利、低金利などから組み合わせて給付を受けることが可能です。

毎月7万5000円ずつ貸与を受ければ、合計で360万円。残りの180万円は、月割りにすれば約4万円。バイトでもカバー可能でしょう。もちろん奨学金額を増やせば、さらに負担を減らすことができます。仮に100万借金が増えても、生涯年収は2億円増えるわけですから、まったくもって問題ないのではないでしょうか。

学費が10万値上がろうと、依然として東京大学に行くべきです。今回は金銭的なメリットのみに争点を絞りましたが、これ以外の点でも素晴らしい点が数多く存在する大学です。実際に、筆者は東京大学に進学してよかったと思う点ばかりしかありません。

人一人の人生を大きく変える可能性がある進学先です。多少無理をしてでも目指すべき。自分のみならず、家族や自分より後の世代のことを思うのであれば、努力はきっと誰かのためになります。「学生の本分は勉強」ですが、勉強で一旗揚げてみるのも面白いかもしれませんよ。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

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