また起きてしまった米兵による交通人身事故。「被害者死亡」でも身柄拘束ナシの理由とは?

事故を起こしてた海軍兵が所属する米海軍横須賀基地

また起きてしまった米兵による交通人身事故。「被害者死亡」でも身柄拘束ナシの理由とは?

10月6日(日) 12:00

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事故を起こしてた海軍兵が所属する米海軍横須賀基地

事故を起こしてた海軍兵が所属する米海軍横須賀基地

在日米軍による事件・事故が続発するなか、またもや痛ましい悲劇が発生した。

事故は米海軍が西太平洋からインド洋までを担当海域とする「第7艦隊」の司令部を置く、「横須賀基地」のお膝元である神奈川県横須賀市で起きた。

「事故があったのは、9月19日夜。横須賀市の国道16号の交差点で横須賀基地に所属する20代の海軍兵が運転する"Yナンバー車(在日米軍基地に所属する米国人が車両登録した自動車)"とバイクが衝突したのです。交差点で直進していたバイクと右折しようとする海軍兵の車がぶつかった、いわゆる右直事故。この事故でバイクに乗っていた22歳のアルバイトの男性が死亡しています」(地元紙社会部記者)

米軍関係者の名義で登録されてある車両であることを示すYナンバー

米軍関係者の名義で登録されてある車両であることを示すYナンバー

複数のメディアが報じたところによると、現場は横須賀基地から南東に約200メートルの五差路で、乗用車側の右折が禁止されていたとされる。

つまり、米兵側が交通ルールを守らなかったことによって起きた悲劇である可能性が高く、地元の神奈川県警も「過失運転致死の疑いを視野に捜査している」(前出記者)という。

それにも関わらず、現場に県警の捜査員が駆けつけた時には、先に現地に到着していた横須賀基地の憲兵隊とともに基地内へ帰っていたというのだ。

■警察への通報も拘束もナシ 通常、交通事故を起こした際にはすみやかに警察に通報し、現場で警察の到着を待つことが求められている。さらに「過失運転致死罪の適用が疑われる事案であれば、運転者が逮捕されて身柄を拘束されることもあり得る」(捜査関係者)はずであるが‥‥。前出の地元紙記者が説明する。

「在日米軍の取り扱いを定めた『日米地位協定』で認められているからです。協定では、公務中に米兵がおかした犯罪については米側が第一次裁判権を有しており、日本の法廷で刑事裁判にかけることは原則できません。また、公務外であっても、身柄が日本側に引き渡されるのは、日本の警察が現行犯逮捕した時に限る。

殺人や現刑法での不同意性交罪に当たる強姦などの凶悪事件に限って、日本側が米側に起訴前の身柄引き渡しを求めることはできますが、実際に行われたケースは少ない。だから、沖縄や山口、神奈川など米軍基地を抱える各県の警察では、事件が起きた時にMPより早く現場に駆けつけ米兵の被疑者の身柄を取る必要が生じてくるのです。いわば早い者勝ちですね」(前出記者)

米軍基地のフェンスに掲出されている警告。日米地位協定では米兵の公務中の事故については日本政府が補償するよう定められている

米軍基地のフェンスに掲出されている警告。日米地位協定では米兵の公務中の事故については日本政府が補償するよう定められている

しかも、こうした日米地位協定の適用範囲は米兵にとどまらず、「米軍人や軍属、その家族」にも及ぶ。事件・事故に絡む在日米軍に与えられた「特権」ともいえる処遇だが、特別扱いはまだある。

「米兵ら在日米軍関係者が日本の警察に逮捕された時には、弁護士以外に『法務官』と呼ばれる米軍の法務担当者がサポートに付く。法務官は、事件の公判でも法廷での立ち会いが認められており、在日米軍関係者には全般的に手厚いサポート体制が組まれていると言っていいでしょう」(前出記者)

こうした事例に限らず、かねてからその不平等な内容が問題視され、改定の是非が議論になってきた日米地位協定だが、9人が次期首相の座を争った自民党総裁選では主要な争点にはならなかった。

■進まぬ条約見直し議論

ただ、くだんの事故が起きる直前の17日に沖縄で行われた地方演説会では、石破茂候補が「台湾有事は日本有事。日米地位協定の改定には着手すべき。基地は共同管理にする」と踏み込んだだけで他のどの候補も本質的な議論は避けた。

地元出身の小泉進次郎候補でさえも、「私は、神奈川県の横須賀市という、米海軍の大きな基地がある街で育ちました。基地という存在を逆手にとって、地元住民の生活を向上させたい。その思いはまったく同じです」と述べるにとどまった。

昨年12月には、静岡県富士宮市内で2名の死者を出す交通事故を起こし、過失運転致傷罪で禁錮3年の刑が確定して服役中だった米海軍横須賀基地所属の海軍大尉が、刑期の半分の時点で米国に移送され、翌1月に釈放されている。司法の独立や法の下の平等を歪める突然の不可解な"恩赦"に、日本国民からも怒りの声も上がった。

ただ、「もの言わぬ」対米外交が続く限り、在日米軍関係者との事故に巻き込まれて理不尽な思いをする国民はあとを経たないだろう。

文/安藤海南男写真/米海軍公式サイト、安藤海南男、photo-ac.com

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